ローディーの資質②
夜中の11時今から準備すれば、朝には出れる。
俺は雄太に説得され、なくなく準備を始めていた。
どうやら、東京で行われるフェスでの人材不足らしい。要はスタッフだ。
雄太に話が回ってくるなんて、恐らくボスかタカヒロさんの仕業だろう。
こんな時にというか、やっとバンドが一から心機一転、動き出したというのに。
ふとスマホに目をやると雄太からメッセージアプリでバンドメンバー全員に連絡が届いているのがわかった。
『ちひろくん1週間出張します。しばらくバンド練習は、できません。また何かあったら連絡します。』
報・連・相は、大事だからなぁ。
そんなことを思いながら、準備を続けていた。
─────ピロン
しばらくしてメッセージアプリの着信音が鳴った。
また、何かあったのかとスマホを見てみると
『あーしも行く』
そう書かれていた。
いや、役にたたないだろ。
そう思い笑ってしまっていた。
まぁさすがに雄太が止めるだろと俺は布団に入った。
────ピロリピロリピロピロピロリ
スマホの目覚ましで目を覚ました。
朝7時、俺は顔を洗って早々に家を出た。
さすがに着替えとギターは、いつもの倍ぐらい重い気がする。
1週間も、家を開けるのは久々だ。
だけどギターを触らないわけにはいかない。
そんなことをしてしまったら、もうギターを引かない人生に変わってしまうかもしれないから。
そんなことは、ないのかもしれないが。
駅のホームは、平日だから会社員が多い。
ギターをもっている俺は、どう思われているのだろう。
社会不適合社か、はたまたプロのミュージシャンか、どっちもそれはそれで悪くない。
俺は、電車に乗って空港へと向かっていた。
「いた!サウロ!サウロ!スマホ見ろし!」
聞きなれた声だった。
混んでいる電車の中、立っている俺の目の前には、お下げ髪のメガネをかけた女の子が立っていた。
「お前…姫か?」
その子は、コクンと頷いた。
「お…おぅ。おはよう」
「おはよ」
いつもと全然違う感じだった。
服は、大きめのパーカーにチェックのボトムそしてラバーソール。
パンク感は、残っているがいつもより抑えめだった。
「なんか、いつもと違うな」
「は?キショ!何それ」
今日も姫は、姫だった。
俺は、気になっていた。
何故姫がここにいるのか。ということもあるが、もし一緒に行くというのなら、何故手ぶらなのかということが。
「おい、姫一緒来るのか?」
「昨日連絡したろ!」
「さすがに、冗談かと…」
「雄太には、止められけど無理矢理来てやった!へへへ」
ニッコリと姫は、笑顔になった。
「聞いてるか?これは、俺が頼まれた仕事だから金が出る。だがお前は頼まれていないから金はでない」
「なんだよ!その言い方!お前が寂しいんじゃないかと思って来てやったのに!」
バシバシと、姫は俺の胸に拳を当ててきていた。
「金なんていらないよ。人生経験ってやつだ!ホテルも自分でとったし暇な時に外で会おう!」
そう言い、姫は子供みたいに嬉しそうにしていた。
「じゃなんで手ぶらなんだよ!」
「あっちで買えばいいじゃん!」
「は?お前いつも金ないって言ってるじゃねぇか!」
「そ、そ…それは…」
姫が、またモゴモゴと何かを言っていた。
「よし!時間は、たっぷりあるから聞いてやろう」
話を聞くと、どうやら姫は、お金は毎月父さんから貰っているらしかった。
旅行に友達と行くから、なんて言ったらたくさん渡されたみたいで、ちなみにホテルも予約してもらったようだった。
「恥ずかしいやつだな!」
「ぐぬぬぬ…」
俺の目の前で、また拳を俺の胸をバシバシと殴ってきていた。
空港に着くと、姫がまた、あたふたしていた。
「姫、どうした?」
「どーしよ。あーしパスポート持ってない!」
俺は無の境地にきたのだろうか、というほどに何を言っているんだと思った。
「いらねーよ!バカ!」
「はっ!いらないのか…バカ?お前!バカって言ったか!?え!?バカ!?」
後ろから着いてくる怒る姫は無視して、俺は飛行機に乗った。




