ローディーの資質①
俺は姫と駅で電車を待っていた。
「はぁ…疲れたな」
つい言葉がでた。ただの一人言。
でも、濃い1日だった。
新しいメンバーで、ライヴハウスでライヴができて、ただ楽しかった。
俺は、自販機で買った水のペットボトルで喉を潤した。
お酒のせいか、まだ、身体が暑い。
冷めたい風が服の隙間から入って心地いい。
周りは、ダウンジャケットを着ているってのに俺は、脱いでいた。
今日のライヴ後のことだ。
みんな舞台から降りて、姫が一人で楽屋のイスに座っていた。
天井を見て笑っていた。
なんて表現したらいいんだろう。
ただ昔を思いだしたんだ。
俺も初めてのライヴは、緊張と不安と楽しみで手が震えるぐらいだった。
終わったあとは、その全てを出しきった感覚だった。
あの感覚をすさまじいものがある。
忘れてはならないこと。
今の姫がうらやましいと思っていた。
「なぁ、サウロ。ライヴっていいな。またしよう」
俺を見て姫は、そう言った。
「あたりまえだろ。なんためのバンドだよ」
「そんなの…私のためか?」
「んなわけないだろ!?」
「ですよねー」
俺達は、駅のベンチに座った。
「姫、寒くないか?寒かったら俺のジャケット着ろよ」
「はぁ!?キショ!何それ」
「ハハハハ。冗談だよ」
「あんたなー」
────ドン
姫は、慣れた様に俺の肩にパンチを繰り出してきた。
「はいー暴力!暴力反対!」
「あんた、酔ってるでしょ!もぅー」
姫は、呆れた様に笑っていた。
──ポツ─ポツ─ポツポツ
静かに雨が降ってきた。
身体が少し冷えてきて、身体に雨がうっすらと手にあたる頃、俺は立ち上がった。
「風引くぞ。屋根のある方行くぞ!」
俺がそう言うと姫は、また空を見ていた。
「嫌!まだそんなに降ってないじゃん!もう少しここにいたい!」
俺は、ベンチにまた腰かけた。
「まぁそういう時もあるか。ところでなんで雨が好きなんだ?前も聞いたことあるけど、本当のところ教えろよ」
「んー。私って前世カエルだったんじゃないかって思うんだよね」
「え?」
「カエルってさ、寂しがり屋だと思うんだよね」
「お…おう」
「まぁ聞いてよ。感情なんてないのかもしれないよ?でも、鳴くじゃんカエルって。雨の日は、いつもよりいっぱい鳴くんだよ?」
「へー」
「でね、僕はここにいるんだよー。みんなで歌っている。そんな感じがするんだー」
そんなこと、思ってもみなかった。
生き物が鳴くっていうのは、コミュニケーションっていうのは聞いたことがある。
人でいう言葉だ。
しかし、〝歌は言葉でできている〟。
考えてみれば、生き物はみんな〝歌っている〟なんて表現してもいいのかもな。
「やるじゃねぇか、お前歌詞でも考えて見ろよ」
俺は、自然と姫の頭を撫でていた。
すぐ電車が来て1駅だけ俺達は、一緒の時間を過ごしたが、姫は何故かずっとうつむいたままだった。
怒ったのかな?なんて思ったが、電車を降りる時、普通に
「んじゃまた」
なんて言っていたし俺の思い過ごしかもしれない。
俺は、自分駅で降りて家路についた。
さぁ寝るかと風呂に入って寝る準備をした時だった。
────プルルルル
スマホが鳴った。
「おぅ?どうした?雄太」
「ごめん、ちひろくん」
「ん?」
「明日から東京行ってくれない?」
俺は、声を出すことができなかった。




