私のあーしぺーしょん③
高校2年の春、私は、かけていた眼鏡と、おさげ髪をやめて、コンタクトとツインテールにした。
昔から好きじゃなかった名前も、姫って呼んでもらう様に私は頼んだ。
恥ずかしかったけど、まだマシかなって思って。
なんで?って聞かれたら、変わりたかったから。
可愛くなりたかったし、カッコよくなりたかった。あの曲みたいに。
クラス替えもあって、新しい友達もできていった。
そこで、流行りを教えてもらった。
最初は口調とかファッションの今風とかは、わからなかったし、覚えていけるか心配だった。
ギターをまた練習しているのは、秘密にしていた。
文化祭の時だった。
一つ上の先輩に恋をした。
彼の名前は湊川 靖弘。
体育館の舞台でバンド演奏していた彼のギターは、とても繊細でカッコよくて彼のことが好きになった。
外見は、あまりカッコいいとは言えなかったけれど、トキメクってこういうことなのかなって感じた。
友達からの後押しもあって、告白するとすぐに私と彼は付き合うことになった。
というのも、ボーカルの先輩が人気で、近づきたかった友達は、私を利用していたんだと思う。別にいいけど。
私は、ヤスくんと呼んでいた。
付き合うと優しかったヤスくんは、だんだんと本性を表していった。
少しずつとオラオラしてきて、命令口調、暴力さえしなかったけれど、私の言葉づかいが荒れてきたのは、そこからだと思う。
でも彼は、ギターを教えてくれる時だけは、いつも笑顔だった。
なんだかんだ私は、この彼と付き合っていた8ヶ月だけは、青春していたんだなぁと感じる。
ヤスくんのおかげで、Fコードを乗りきることができたと思っているし、いろんなライヴに行ったり、練習スタジオにも連れて行ってくれた。
ヤスくんが卒業する前だった、彼の浮気が見つかった。というのも、就職が決まっていたのにも関わらず急によそよそしくなってバレバレだっつの。
私は、学校の屋上で彼を問いただし、スマホを取り上げ、連絡内容を見た。
私ではない、誰かとイチャイチャしている文章にプツンと何かが切れる音がした。
さすがに抵抗してこなかった。
サンドバック状態だった。
私は、彼をボッコボコにしてやった。
スッキリなんてしなかった。
悲しみと、怒りと人生が終わってしまうかの様な感覚だった。
そんなことは、ないのに。
それでも今は彼には感謝している。
それから私は、音楽に熱中した。
ギターだけじゃなくて、ベースやドラム、ピアノだって練習した。独学だったけど。
一人で練習スタジオに、行くのは当たり前になっていて、高校3年生の時は、ずっと音楽のことしか考えていなかったと思う。
卒業後は、私は近くの美容院に就職した。
本当は音楽やりたかったけどパパに言われてなくなく就職した。
3日で辞めたけど。
そこからしばらくは、ニート生活が始まった。
徐々に誰とも会わなくなって行ってギターしか引いてなかった。
私は、億劫になっていっていたんだと思う。
誰かと会うのが面倒で、声を発するのが辛いと思う様になっていたんだ。
たまには、外に出ようと日差しを浴びると死んでしまうんじゃないかと思うぐらい、身体から悲鳴を感じてしまっていた。
「よぉ姫じゃん」
そんな時また、出会ってしまった。
マンションの廊下、私は振り返った。
その時に私は雄太に言ったんだ。
「ねぇ、あーしのマネージャーになってよ」
噛んじゃって、あーしなんて言ってしまったけど、雄太は笑って、なんだよそのしゃべり方なんて言われたっけ。
引っ込みつかなくて今でもこの一人称にしている。
なんであんなことを言ったんだろう。
私が発した言葉なんだ。
そんなのは、決まっている。
私は、あの時から、この舞台に立っていたのかもしれない。
なんてね。




