表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/64

私のあーしぺーしょん②

私には、4人の家族がいた。

パパ、ママ、妹、そして私。


パパとママは、私が物心つく頃にはもう仲が悪かった。

そんな普通は、あたりまえだった。

妹とは、少し年齢が離れていたのもあって、しゃべらなかった。

というか、何を喋っていいか分からなかった。



パパは、車関係の自営業をしていて、あまり稼ぎがなかったらしい。

そんなパパにママは、嫌気が差していたのだとか。


ある日、親同士がどっちについていく?

そんな話しを私にしてきた。


知らない。

そう言って私は、避けていた。

その時の私は、考えることを放棄していたんだと思う。


昔、パパはよく家にいた。

パパの話しはいつも面白くって、ベランダでタバコを吸いながら、私に好きなバンドのことをよく喋ってくれていた。


私は、タバコの臭いが嫌いでいつも鼻をつまんでいたっけ。

それでも、パパの話しが聞きたくていつも一緒にいた。


暑い夏の日だった。

「将来は、バンドマンかな」

たいした会話じゃなかったと思う。

〝あの時〟のその声、その口調、その風景、なぜか今でも思い出せる。

私は、楽器なんてできもしなかったのに。


ママは、私が病気がちになった時、いつも看病してくれていた。

辛そうなのに、私にはそんな顔を見せずに私達を養ってくれていた。

こんなママに、いつか慣れたらなって思っていた。


高校一年生の夏の日、ママが黙って家から出ていった。

私と、妹を残して。


パパは、顔をくしゃくしゃにして、

「パパ頑張るから」

私と妹にそう言った。

私は、この人は何を言っているだろう。

とそう思った。自分が巻いた種なのに。


その時の私は、パパとはずいぶん喋っていなかったから、ママが黙って出ていったことで、不安が募っていった。

それからだと思う、誰に対しても不信感を(いだ)くようになったのは。


友達も多くなかった私は、次第に学校にも行かなくなっていっていた。


学校へ行かなくなって数ヵ月した時だった。

パパがギターを私に渡してきた。

もともと持っていたらしい、そのギターは、使用感があって、汚いなっていうのが印象だった。

それでも、パパの影響でバンドばかり聴いていた私は、暇だったので覚えてみることにしたんだ。

最初のFコードは、聞いていたより難しくって

しばらくわギターは、置物になっていたけど。



そんな時期、隣に秋山 雄太が引っ越してきた。

その人は、私の二つ先輩で、受験時期だっていうのに彼は、学校に行っている素振りはなかった。


たまに、すれ違う程度だったけどエレベーターで話しかけられたのがキッカケだった。

「君、高校行ってないの?」


その時はチャラチャラしてるのが気にくわなくて無視した。


あとからパパに、お隣さんも父子家庭で父さんの仕事を手伝っている青年がいる。というのを、無視する私に話してくれて、少し興味が湧いたんだと思う。


たまに、外を散歩したりする時に顔を合わしたりして、話しをする様になった。

どうやら、近くに働いている工場があるらしい。


私達が、付き合うのにそんなに時間はかからなかった。

雄太からだったと思う。

その時は私も好きだな、なんて思ってしまっていた。


思春期っていうものは、そういうものなのかもしれないけれど、目の前のことが全てで、見えているものが本物だった。


私達は、いろんなことを話した。

雄太は、料理が好きで、サッカーが好きで、いろいろな好きなことがあった。

私が音楽を好きなことも、すごく興味をもって接してくれていた。

ただ仕事は、好きじゃなかったらしいけど。


お互いのことを話しながら、将来のことを話した。

雄太は、確か…

「いつか、誰かの助けになる仕事をしたい」

と、そう言っていた。


ほしいCDがあって真冬なのに寒い中、歩いて隣町のCDショップまで一緒に行ったりもしたな。


話すことが楽しくて、でも今思えば〝それ〟は、雄太じゃないと、ダメだったのかな、とも思う。


彼氏ができたのを知ってか知らずか、パパが人気のバンドのチケットを私に2枚くれた。


そのバンドは、昔からよく知っていたバンドで、久々に日本に来日して、次はもうないかもしれないと言われるぐらいのバンドだった。


私は、雄太とバンドを見に行けることが楽しみだった。


その週末、私たちは人混みの中ライブ会場へ向かった。


私は、その時に初めてママとパパじゃない人と手を繋いだ。

転ばない様に。迷わない様に。ただそれだけ。


会場は、広くで1万人は、入るんじゃないかというホール。

2階はガラガラだったけど、1階はほぼ埋まっていた。


雄太は、バンドには興味なさそうだったけど、初めてのことで、楽しそうだったからよかったな。


冷たい手を息で暖めていたら、どんどん会場が人の熱気で温度が上がっていく。


そこで、音楽が鳴り響いた。


耳から伝わって、脳に響くその音は、

私そのものを否定して、肯定して、頑張れって言ってくれているみたいだった。

私は、嬉しかったんだ。


そう聴こえないんだとしても、聴こえてしまう私がいた。

意味が違っても、内容が違ったとしても、そんなアーチスチックでもない私が、改めて感じてしまったんだ。

それを大切にしたい自分がいた。


音楽が好きだな。


私は、ライブ帰りに別れを切り出された。

あの時雄太が何を感じて、何を思ってしまったのか、わからないけれど、今ではありがとうって言いたい。


たくさん泣いたけどね。


雄太はチャラい感じだったし、私には、合わなかったのかなって。


私達は、お互いの感情を埋める役割をしていただけなんだと思った。

たった一週間の話だけど、今でもいい思い出。


私は、また学校に行き始めた。

そこから雄太とは疎遠になっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ