Do something you like as much as you want.
午後14時、ステージの幕があがった。
といってもこの場合ライブハウスは幕が開く、のほうがいいのかもしれない。
左右の幕が開いていく。
6組中最初の2組は、高校生バンドだった。
はっきり言って高校生で、このライブハウスを見つけだしたのは、すごいと思う。
もしかしたら、交遊関係の猛者がいるのかもしれない。
大抵、出演バンドはオーナーのボスが演奏を聞いて出演できるレベルか決めている。
その辺は、ライブハウスによる所があるかもしれないが、演奏もままならないバンドが集まっても、お金はとれない。
ライブハウスも一つのお店。
経営戦略によって人の出入りで人気になるのだ。
そこで、利益が決まってくる。
今のところ出演者を除くと、観客は、10人程度だろうか。
ここから、少しは増えてくれればいいのだが。
2組目のバンドが終わったところで、バンドメンバーの姿が観客側にないことに気づいた。
ちょうど、1時間後出番となる。
俺は、控え室に戻ることにした。
戻る途中に、バーカウンターで今だに寝ている雄太がいた。
あいつは、あとでお説教だな。
控え室に戻ると、姫と蒼馬が、テーブルでお菓子を広げて食べていた。
クッキー、チョコ、ケーキ、甘いものだらけだった。
緊張には、甘いものがいいなんてことは聞いたことがある。
リラックス効果があるのだとか。
しかし、飲んでいるものがダメだった。
姫がコーヒーのブラックを飲んでいる。
「おい!姫!お前は、これでも飲んどけ!」
俺は、買ってきておいたハーブティーを姫に渡した。
「えーなんで!?」
姫は、悲しそうな顔で俺を見つめている。
人がカフェインを摂取すると、覚醒する。
なんて言うが、それは緊張と同じ意味をさす。
つまり、緊張しやすくなってしまう。
いつもなら、キレてしまう姫も、今日はおとなしい。
どこか情緒が不安定になっているのかもしれなかった。
いつもキレてしまう情緒もまた、おかしな話しだが。
俺は、甘いものの食べ過ぎにも二人に警告しつつ、ギターを触ってウォーミングアップすることにした。
スポーツみたい、なんて言われたことはないが、ならしておくと身体に楽器が一体化していく様な感覚がある。
そこまでいくと音が違ってくる。
お疲れ様でーす。
ライブが終わった人や、観客側でライブを見ていた出演者が行き来する楽屋で、ギターに俺は、集中する。
そういえば、蓮弥と姫は受付ちゃんとやれただろうか。
まぁ、蓮弥は大丈夫だろうが、姫のあの様子だとガチガチだったんじゃなかろうか。
蒼馬も、姫のことを気にしてお菓子を買ってきてくれたのかもしれない。
カタカタと蒼馬のスティック音が楽屋に響きだした。
ふと、楽屋を見渡すと、蓮弥もベース、姫もギターを鳴らしていた。
「次のブルースターの方々お願いしまーす」
さぁ時間だ。
俺達は、ステージに上がった。
仄暗いスポットライトが当たらない準備時間。
俺達は、音の支度を始める。
エアコンがキツくてすぐに喉が乾く。
ペットボトルの水は、必須だ。
毎回ステージに立つたび思うことは、同じな気がする。
何人ぐらい聞いてくれるだろうか。
どれくらい俺の音楽を届けられるだろう。
響いてくれるだろうか。
表現できるのだろうか。
声に出せているだろうか。
少しでも長くこの場所に立っていたいと、そう願いながら、俺は歌い始める。
歓声と照明が徐々に大きくなっていくこの場所で。
ギターを鳴らして歌っていると見えるものがある。
観客と乱反射した光がキラキラとステージの埃を写し出す。
後ろのほうで、曲を聞いている人やスマホを見てる人。
前のほうで、俺達を応援して一緒に盛り上がってくれる人達。
俺達の曲を歌ってくれる人や、しっかりと目を見て聞いてくれている人。
様々な人達が、俺達の声を歌を曲を聞いてなにか感情を感じてくれている。
楽しいだろうか、面白いだろうか、ましてや、何かを想い出して、悲しい、怒りなんていうのもあるのかもしれない。
ただそれが嬉しくて、俺は、問いかける。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
───────today──────
It's never too late to start something
By the time I learned about it, I was an adult.
where do you want to go?
Is it necessary to get lost?
So start now
Let's go see it
A view you've never felt before
Let's go see it
Did you repeat it many times?
Let's go see it
You should be able to do it now.
On today's day
Have you changed anything since the day you |decided to change?
Have you forgotten that view?
It won't start even if I wait
It's starting to move!
Let's go see it
A view you've never felt before
Let's go see it
Did you repeat it many times?
Let's go see it
You should be able to do it now.
On today's day
right now
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
4曲目が終わった。
次がブルースターでの最後の曲。
俺は一度深呼吸して、呼吸をただす。
ギターから始まるその曲の音を待った。
歓声の拍手から、静まりかえる舞台。
姫を見ると、目を瞑っていた。
額からは汗が流れて、姫の呼吸がマイクからスピーカーに渡って聞こえてくる。
「忘れたー」
瞼を開けて姫はあどけない笑顔で、そう言った。
観客が笑った。
あまりの、意外な言葉だったんだろう。
俺達も、その笑顔と観客につられて笑ってしまった。
こんな終わり方もありだろう。
いや、始まりだな。
思い出したかの様に
姫がギターを鳴らしだす。
ギターソロから始まり出すこの曲は、佐山が最後に作った曲だったかな。
────青星────
観客が湧いて、後ろでスマホを見ていた人達も俺達に見始めていた。




