愛情のジャムセッション②
バンドの名前は、ノスタルジア。
ギターボーカルの凛さん、ギターの正志さん、ドラムの蒼馬さんの高校一年生のビジュアル系の、その時はまだコピーバンドグループだった。
俺は、待ち合わせ場所の喫茶店へ来ていた。
「あのさ、貼り紙ちゃんと見た?俺達が募集しているのってベースなんだけど…」
ギターボーカルの凛さんだけがそこには、来ていた。
彼は、化粧をしていて整った顔立ちをしていた。
〝凛〟の言葉が似合うような、そんな人だった。
その彼の仕草一つ一つ、声が、目が、俺の脳を刺激してきた。
「俺…ベースします!」
このバンドで、俺は人生で変えがたい何かを手に入れるんだ!そう思ったんだ。
なんて違うな、一目惚れだったんだ。
「ベースもできるの?」
「はい。できます!!」
「へーすげぇじゃん。」
凛さんは、くしゃっと笑って褒めてくれた。
俺は、その時に凛さんに気持ちを持っていかれてしまったんだと思う。
それから、俺は、ノスタルジアのメンバーとして活動し始めた。
親父に買ってもらったギターを売って俺はベースに変えた。
ドラゴンフライのフライングV。
昔好きなベーシストが使っていた形だ。
結局お金は、たりなくてバイトもして親父のローンで買ったんだが…。
こんなことで、ベースに楽器を変えたのか。
なんて周りは言ったし、親父の怒りは限界点を超えていた様だったが、なんだかんだみんな優しかった。
今考えたら楽器が変わるってそんなもんだけど。
はっきり言ってノスタルジアのメンバーは、みんな下手だったし、俺がベースを一から練習して上手くなる頃には、ようやくみんなが、ライブに出れるくらいになっていた。
その時には、もう俺は中学を卒業して、ノスタルジアのメンバーと同じ高校に入学していたんだ。
高校に入ってからは凛さんに、いろいろなことを教えてもらった。
音楽や服、化粧の仕方まで、俺と凛さんは、自然といつも一緒にいた。
ライブハウスのブッキング方法を誰も知らなくて、俺と凛さんで、怖がりながらもライブハウスに聞きに行ったのは、今でもいい思い出だ。
ライブハウスで月1の出演をこなしていた、高校1年の冬、ライブ後の12月24日だった。
「なぁ蓮弥、今日は二人で打ち上げしないか?」
「どうしたんすか?凛さん?全然いいですけど。」
今日は、一年で特別な日だ。
俺は満更でもなかったが、凛さんもきっと、俺と同じ気持ちだったんじゃないかって思う。
俺達は、ほかの二人に適当に理由をつけて、二人だけで凛さんの家で打ち上げをすることにした。
凛さんの実家は、最近引っ越したらしく、新築の二階建てで、部屋に入るとバンドのポスターや、ギター、ベッドが置いてあって綺麗な部屋だった。
「今日のライブは、よかったな。どんどんみんな上手くなってきてる。」
凛さんは、テーブルにお菓子やコーラを用意して、もてなそうとしてくれていた。
「はい!まだまだこれからですけど、頑張りましょう。」
俺と凛さんは、今後のバンド活動や将来について語り合った。
「なぁ、蓮弥。」
夜も、もう遅く終電で帰ろうかな、そう思う時間帯だった。
「どうしたんですか?凛さん。」
「ちょっとこっちに座ってくれ。」
そう言って凛さんは、ベッドに座ってポンポンと隣に座る様に俺を促した。
俺は、笑いながらも息を飲み、隣へと座った。
「どうしたんすか?凛さん。」
「なぁ、もうそろそろいいだろ?」
凛さんは、そう言って真剣な眼差しで顔を近づけてきた。
俺は、吸い込まれる様だった。
彼の唇が迫ってきて…俺は凛さんに身体を預けた。
なんとなくわかっていた。
今までわからないフリをしていた。
その時に、ようやく俺は、しっかりと自分自信を認識できたんだと思う。




