俺達のチューニング 4
───ガラガラガラ
俺達は、店のドアを開いた。
「おい!その子未成年じゃねぇだろうな!」
大将は、慌てた様子でこちらを見て言った。
「ちげぇーよ。デブ!」
俺は、言葉を失った。
この大将は、こう見えて俺のお世話になっている人だ。
俺が、この辺りで名前が広がったのは、この人のおかげでもある。
「すみません。大将。こいつ、うちの新しいメンバーで、糸ノ瀬っていいます。」
俺達に向かってくる大将に苦笑いしながら俺は言った。
「おぅ、そうか。口の聞き方がなってねぇやつだな!」
大将は、年齢40歳で、いわゆる昔の考えを持った人だ。
接してみるといい人だが、これも姫には、いい成長になるだろう。
俺と雄太は、大将を落ち着かせ姫を黙らせて座敷へと向かった。
「サウロ!お前この間の会計も払えよ。」
そう言って大将は、キッチンへと戻っていった。
座敷には、俺、姫、テーブルを挟んで雄太で座った。
「チッ。」
「姫!お前、舌打ちの癖直せよ!」
「あんなに、怒る人なんだねぇ。」
雄太は、メニューを見ながらそう言って笑っていた。
こいつは、やっぱり肝がすわっているのかもしれない。
「サウロ今日おごりね、あーし、ビール。」
姫は、イライラしているのかった苛立った口調で俺に言った。
俺は、それを無視して、また適当に注文をして俺達は乾杯した。
「ところでさ、ちひろくんに話しがあるんだけど。」
「おぉ。なんだ?」
「俺やっぱり、マネージャーしたいんだよね。君達を応援したいんだ!」
俺は、ビールを置いて雄太を見た。
「でも…なぁ。」
「なんでそんなに、嫌がるの?」
「昔任せた奴がいたんだけどな、飛んだんだよ。ライヴ前日に。」
「俺は、そんなことしねぇよ!」
そう言って雄太は立ち上がり、頭を下げた。
「おいおい、頭を下げることかよ。」
「俺は、それくらい君と君達と音楽に関わってみたいんだ!」
「…やらせてやれよ。」
姫が口を開き神妙な面持ちで俺を真っ直ぐな目で見てきた。
「お前が言うな。」
俺はチョップを入れてやった。
「イタィよぉ。」
「わかったよ。でも、中途半端なことは、するなよ。無理そうなことがあったらすぐ言え。」
確信は、なかったが雄太ならできるんじゃないかと俺はそう思っていたんだ。
「ありがとう。」
そうして、雄太が新たなメンバーへと加わったのだった。
「ところで、マネージャーってなにするの?」
俺は、苦笑いするしかなかった。
「とりあえずは、スケジュール管理とグッズの企画作成をやってもらう。
あと…まずは、人間関係の構築だな。」
「タカさん!ちょっといいですか?」
俺は、そう言って大将を呼んだ。
タカさんは、キッチンからゆっくりと、こちらへと向かってきた。
「隠してるわけじゃなかったんだが、大将…というかタカさんは、この辺のライヴ会場で企画や主催をやっているんだ。」
ようするに、イベント主催者みたいなものだ。
「おぅどうした、サウロぉ。今休憩中だぞ。客いねぇからって。」
咥えタバコでタカさんは、座敷に上がり、雄太の隣へと座った。
「紹介したい奴がいまして。」
「おぅ女じゃねぇだろうなぁ。」
「その隣の奴、秋山雄太って言います。スターブルーのマネージャーやってもらうおうと思います。」
「おぉ。こないだの殴り合いしてた兄ちゃんか。そりゃあいいな!何かあったらサウロも殴ってやれるしな。ガハハハ八。」
そう言ってテーブルをバン!バン!と叩いていた。
「そんなことより、サウロ…その嬢ちゃん本気でバンドに入れたのか?」
タカさんは、表情が変わり姫のことを睨みつけた。
「は、はい。」
そんなことより…と言われたことに驚きつつ、心配な姫を見てみると顔はこわばり、愛想笑いが、もう誰かに顔を引っ張られているようにピクピクと動いていることが確認できた。
えらいぞ姫、我慢してるんだな。
俺は、心の中でそう思い、そして俺は、細心の注意を払い言葉を選んだ。
「姫は、こう見えてギターのスキルは、プロ並みで…」
「姫!?どっかの王女様ってか?ガハハハハ!!」
タカさんは、さっきより大きくテーブルをバン!バン!と叩いて笑っていた。
しまっ…た。
すると姫は、おもむろに立ち上がり壁に立て掛けていたギターをケースから取りだし言った。
「見とけよ!デブ!」
そう言ってアドリブでギターを弾き出した。
腹が立っているのだろう。
もうリフからめちゃくちゃだ。
姫にしては、頑張った方だよ。
俺は、姫に止めるように言おうとすると、タカさんが、手を広げ俺を静止させた。
真剣に姫のギターを見るタカさんは、どこか、うれしそうだった。
「やるじゃねぇか!そこまで、イラついてんのにギターな引けるとわな。ガハハハハ。」
そう言ってタカさんは、立ち上がり姫の頭を撫でた。
「触ってんじゃねぇよ。デブ!」
「ガハハハハ、サウロ!こいつは、逸材かもしれねぇぞ。」
タカさんは、試していたのかもしれない。
タカさんには、なにか考えていたのだろう。
千思万考、古い人間の考え方なんて俺には、わからないけれど。
「しかし、基礎がなってねぇな!クリック練習しとけよ!」
そう言ってタカさんは、キッチンへ帰って言った。
「そういえば、前にもそんなこと言われたな。誰だっけ…。」
姫は、真っ赤になった顔で、ギターをケースに直しながら、そんなことを言っていた。
プルルルル
姫のスマホが鳴った。
「あ、あーしだ。もしもし?うん…うん…わかった。」
姫は、誰かとの電話を終わらせ、ギターを担いだ。
「あーし、帰る。」
「おい!今日は、見張るんじゃなかったのか?」
俺は、笑いながらそう言うと、姫は、靴を履きながら振り返った。
「蓮弥に呼ばれたから。」
俺と雄太は、顔を見合せた。
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