俺達のチューニング 2
1時間が過ぎ、スタジオからでて俺達は、屋上の喫煙所へと向かった。
屋上に散らかっているイスを灰皿の前へと、蓮弥が集めて腰かけると、タバコに火をつけた。
「で、これからどうするんすか?」
蓮弥からそう、切り出した。
俺と姫は、用意してくれたイスに座り、タバコに火を着けた。
「あーしがするぅ?」
姫は、可愛こぶり、腹が立ついい方だった。
「いや、さすがにそれは、ないでしょ。」
「そうだな。」
「また、ドラム募集の貼り紙でもして…。」
「そんな時間ないでしょうが。」
全員が、お互いを見て一度タバコを大きく吸った。
「…しょうがないから、俺の知り合いにあたってみますわ。」
険しい表情で何か考えがあるようなそんな素振りの蓮弥だった。
「俺も、知り合いあたってみるわ。」
「あーしは、知り合いなんていないし頼んだ。」
俺達は、タバコを吸い終わると3日後、金曜にまた集まる約束をして、別々に家へと帰っていった。
俺は、その夜知り合いのバンドマン数人にスマホで連絡を入れて、ドラムのサポートができる人がいないか聞いて回った。
連絡が回るのにも時間がかかる。
まぁこれぐらいしかできることは、ないだろうと、その日は寝ることにした。
そして、次の、その次の日も誰からも連絡は、来なかった。
マジかよ。
俺、実は信用ないのか?
そう思い俺は、朝、練習の準備を初めていた。
サウロさんなんて呼ばれて、この辺のバンドマンで知らない奴はいない?
誰が言ったんだよそんなこと。
いや、俺は、そう思っていたし、それなりに地盤を作ってきたつもりだった。
はー。俺は、恥ずかしい野郎だ本当に。
ギターを担ぎエフェクターケースを持って駅へと向かった。
プルルルルル
スマホが鳴り画面を見ると蓮弥だった。
「おつかれ。どうした?」
「なんとか、間に合いました!ドラム!今日連れて行きます!」
「おぉ!そうか!よくやった!」
「ギリギリでしたー!んじゃまた後で。」
「おぅ!さんきゅーな!」
そう言って俺は、電話を切った。
とりあえずは、一安心か。
駅のホームを通り俺は、安堵して電車に乗った。
「おっすー。ちひろくーん。」
雄太がいつものテンションで近付いてきた。
「おぅ。そういえばお前もこの路線だったな。」
雄太は、空いていた俺の横の席に座った。
「今からバンド練習でしょ?俺も今日は行くよ。姫に聞いたから。」
「おぅ。仕事は?」
「今日は、休みだよ。」
「ほーん。そうか。」
「あのさ、前に言った話し覚えてる?マネージャーの話し。」
そう言って雄太は、俺の方を向き真剣な面持ちでこう言った。
「俺に本気でやらせてくれないかな?」
「え?ほんとに大丈夫か?」
「俺仕事辞めるし。」
「マジかよ。」
「もともと、合わなくてさ。」
そう言って、雄太は、窓の外を眺めていた。
「わかった。だが、もう一回考えてくれないか?俺達は、遊びでバンドをしてるわけじゃないんだ。お前とも、それなりに友人としてやって行きたいと思っている。中途半端な関係になりたくないんだ。」
俺は真剣にそう言うと、雄太は、わかったと小さな声で頷いた。
そこからは、お互い言葉を交わさず。
電車の音がやけに大きく感じた。
駅に着くと、ギターを担いだ姫が待っていた。
「うぃーすー。つか、なんでサウロいんの?」
「いや俺もこの路線だし、電車でたまたま会ったんだよ。」
「へー。行くぞ。ゆうたぁ。」
姫は、そう言い、俺を無視してスタスタと歩き始めた。
「ごめん。先行くね。」
そう言って雄太も先に行ってしまった。
俺も同じ場所に行くんだが…。
時間的に急ぐまでもないが、今日は新しいドラムが来る。
早く行くにことに、こしたことはない。
俺は、二人後ろ姿を見ながら向かった。
20メートルぐらい先を二人は、歩いていた。
雄太がしゃべって、姫がツッコミをいれているのが、遠くからでもわかる。
幼馴染みで男女の関係でもないと言う、目の前の二人。
俺は、それに疑問を感じていた。
俺に、女友達がいないから、なんていうこともあるだろうが。
男女の友情なんてものが、存在する。
その現実が目の前にあって。
俺は、そんなことを経験したことがなかったからか。
なぜか俺は、モヤモヤした感情になっていた。
エレベーターを上がりスタジオに着くと、受付前に、蓮弥と男が立っていた。
「ちっす、近藤さん。こいつです。新しいドラム。」
蓮弥は、もう新メンバーと決まったように、紹介してくれた。
「こんにちは、僕、瑠璃 蒼馬っていいます。22歳。ドラム歴は、5年です。」
茶髪で身長も小さめな、その男は古着を着ていて見た目だけでは、とてもドラムをしている様には見えなかった。
「サポート…じゃなくてか?」
「絶対大丈夫です。入れましょう近藤さん。」
蓮弥は、キラキラした目で俺見てきた。
珍しいな、こいつがこんなに俺に自信ありで物を言うなんて。
とりあえずとスタジオの中に入ると、蓮弥と蒼馬はスタジオの中で準備万端だった。
「あれ?姫と雄太来てなかったか?」
「あー、一回、屋上行ったみたいっすよ。」
まぁ、そのうち来るか。
俺は、とりあえずドラムの力量を見ることにした。
「じゃぁ、なんの曲するか…。」
「いや、いいっす。聞いててください。適当にジャムセッションやります。いくぞ!蒼馬!」
「うん!」
カッカッカッカッ
スティックカウントからそのインストは始まった。
ベースとドラムの入りは完璧だった。
二人はお互いを意識し、目でコミュニケーションをとっている。
ベースとドラムのリズムが合わさり俺の身体に響いてくる。
8ビートが16ビートになる時だった。
ドラムの低音が、2つに増えて、フィルインのアクセントがより際立つ。
ツインペダルかよっ。
俺は、目を右手が塞ぎ笑ってしまった。
上手い…というか、二人の息が合っている。
というか合いすぎている。
ほんとに、こいつら会ったばかりか?
そんな疑問がよぎるぐらいだった。
俺は、瑠璃 蒼馬をバンドメンバーに入れたいとそう思った。
曲が終わった。
「上手いな。とりあえず上にいる二人にも紹介するか。」
俺は、笑顔でそう言った。
───ガチャコッ
スタジオの扉が開くと、そこには険しい顔の、姫がいた。
「て…てめぇ。」
「おう!姫、こいつをメンバーに入れようと…。」
そこまで言うと俺は、姫の拳で地面へと叩きつけられていた。




