俺達のチューニング 1
あれから俺達は、喫煙所を離れスタジオ近くのカフェでコーヒーを飲んでいた。
「蓮弥も今から来るって。」
姫は、スマホでポチポチと連絡をとっていた。
「おぅ。そうか。」
二階建てのそのカフェは、オシャレなガラス張りの窓で、外がよく見える。
初めて来たが、コーヒーはそこそこだな。
「これから、どうするかな。」
情けない。新人にこんな相談するなんて。
「ドラム探すの?」
「あぁそうだな。」
今から、来週のライブに間に合わせるには、あと3日で探して曲を渡して覚えて貰って、来週は、全て練習に回す…ぐらいしないと無理か…。
「今回のライブは、諦め…」
そこまで言うと俺は、姫に口を塞がれた。
「言うな!なんとかなる!」
なんの根拠もなく言うなよ。
なんて思ったが、不思議と元気を貰えた気がした。
「そうだな。俺達は、まだ何もしてない。」
──カランコロン
店のドアが開く音がして、蓮弥が入ってきた。
「ちっす。遅れてすみません。」
蓮弥は、ベースを担いできていた。
「お前…。」
「一応持ってきました。近藤さんも持ってきてるじゃないっすか。」
そう言って蓮弥は、姫の隣に座った。
「あーし、持ってきてない。」
姫は、そう言うと口を膨らませ、怒ったように腕を組んだ。
「練習…するか?姫は、俺のギター使えばいい。」
一度頭をリセットしたい。
そういう時は、練習に限る。
「サウロは、どうするの?」
「ドラムでも、久々にやってみるかぁ。」
「あーしがやろっか?ドラム。」
俺と蓮弥の時が一瞬止まった。
「姫ちゃん、ドラムもできんの?」
そう蓮弥が口を開くと、姫は、親指を立ててこう言った。
「よゆー。ちな、ベースもできるぞぃ。」
俺達は、カフェを後にしスタジオへと向かった。
さすがに空いてないかと思ったが、運良く1時間だけ空いていた部屋をとって中へと入った。
「あ、エフェクター持って来るの忘れたわ。」
「いいでしょ。今日はもう。」
「姫は、何の曲が叩けるんだ?」
姫は、スタジオで借りたスティックと、もともと置いてあったボロボロのスネアに不満げだったが、ストレッチを初めていた。
「んー。そろそろ始める?こーいうのは、どうかな?」
姫は、ドラムセットのイスに座り叩き始めた。
ドラムから始まるその曲は、
邦楽 ダスト ボックス
トライ マイ ラック
俺と蓮弥は、すぐに曲に入り顔を見合わせ笑ってしまった。
鳥肌が立って、楽しくってギターをかき鳴らす。
この曲は、ドラムラインが激しくて素人じゃ絶対叩けない。
今も現役で活躍するハードコアバンドだ。
爽快感溢れる曲が多く。
俺も好きなバンドの一つだ。
あー。やっぱり音楽はいい。
姫はやっぱり安定してなくて、ドラムが先走っている。
リムショットもできてねぇじゃねぇか。
足もたまに、遅れている。
シンバルを叩く音も弱いな。
だが上手い。天才かよ。
それに合わせる俺と蓮弥、音楽が楽しいことを再確認できる。
一人じゃ薄い音が三人だと、音楽になる感覚。
人間だって同じかもな。
一人じゃ何もできないけれど。
誰かがいるから強くなれる。
そんな俺に二人は、ついて来ようとしている。
曲が終わった。
「お前ら。ありがとうな。」
俺は、心のそこからその言葉がでてきた。




