そして…春
固く固く閉じた蕾
新たな春に何想う
暖かい風が吹いた
桜が咲く
花びらが恥ずかしそうに花弁をピンクに染めた
春は出会いと別れの季節
ピカピカのランドセルを背負った小学生
真新しい制服に身を包み
緊張した面持ちで電車を待つ中高生
新品のスーツにネクタイ、腕時計
これから始まる新生活に胸躍らせている新社会人
みんなが待っていた春は
緊張と不安、ワクワク感
それら全てを風に乗せて
桜の花びらと一緒に舞い上がった
そして僕も
緊張しながら電車を待つ
君が去って4度目の春
秋雨が降るあの日
伝えられずにいた想いは
長い長い冬を経て
言葉という形で花開く
受け取る君はどう思う?
突然不安に襲われる
怒った顔
泣いた顔
笑った顔
色んな表情が思い浮かぶ
いっそ胸に仕舞った方が良いだろうか
不安で押し潰されそうになる
音を立てて入ってくる電車
乗り込む人
降りる人
様々な人が入り乱れる
必死に探す君の姿
なのにそれは見付けられず
音を立てて再び動き出した電車
僕の待ち人は来ないまま
1人取り残された駅のホーム
君が去ったあの日のように…
「ただいま!!」
隣から声がする
ハッとしてそちらを見る
桜のように満開の笑顔
不安が嘘のように消えていく
駆け寄って抱き締めた
壊れないように優しく
離れないようにしっかりと
「おかえり」
腕の中でクスクス笑う君
「そんなに寂しかったんだ?」
なんて茶化しながら
そっと後ろに回った手
長い冬を超えた心の蕾が今
ゆっくりと花開いていく
「伝えたい事がある」
「君の事がずっとずっと…」
真剣な表情の後
弾けるように笑った君
目端にうっすらと光る涙
二人だけの駅のホーム
春の風が柔らかく僕らを包んだ
「新しい春が来たよ」
そう優しく告げるように
開かれなかった蕾
それがゆっくり開く時
長く厳しい冬が終わりを告げる
一応これで完結となります。
読んでくださった皆様、評価、いいねを押してくださった方々、ありがとうございました!!
また次回の作品で…♪