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ヲタッキーズ191 SATOから来た女 後編

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第191話「SATOから来た女 後編」さて、前回ダーティバムと共に秋葉原の地下に消えたテロリスト達を追うヲタッキーズ。


捜査線上に非正規傭兵部隊が浮上、国を憂う者の悲しい素顔が浮き彫りになる中、人類の神化にあらがう、靖国の英霊ゾンビの影が浮上して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 終わりの始まり


「トレーラーに核兵器はありませんでした。そうです!トレーラーは空だったンです。今、対放射能チームが調べています!」


南太平洋条約機構(SATO)のヒツギ司令代理がスマホで報告中だ。その直ぐ横をドローンが何機も飛び交う。


「ROG!また連絡します…3ブロック圏内を徹底的に調べて。あと、マスコミを追い払って。パニックになっては困るわ」


指示を受けた万世橋(アキバポリス)の警官隊が一斉に散る。


「爆発物処理班です。チームが周辺を調べましたが、核爆弾はありません。放射線も検知出来ない。どこか遠くまで移動させたのでは?」

「ソンなコトはナイわ。移動させる理由がナイ」

「ワナだった。全て私達がトラックを追うように仕向けられてる。その隙にジマルは別の作戦を実行してルンだわ」


唇を噛むヒツギ。


「また振り出しね」

「ジマルを探しましょう。先ずジマルの引っ越し会社の従業員に聞いてみましょう」

「そうね。きっと誰かが何かを知ってる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕とムーンライトセレナーダーが閉じ込められた冷凍コンテナ。ジマルの遺体にビニール袋を被せる。


「今頃ヒツギは死んだ人間を追ってる」

「ですね。早く脱出してヒツギに知らせないと」

「さもないと、犯人が来るぞ」


小首を傾げるムーンライトセレナーダー。


「どうしてですか?」

「ジマルの遺体を取りに来るのさ。遺体を冷凍して保存してるのは、何かに使うためだ。例えば、あのバンにジマルの遺体を入れて、爆発させれば…」

「現場にジマルのDNAが飛び散り、ジマルがテロリストだと思われる?」


いつもミユリさんは僕の妄想に付き合ってくれる。


「そうさ。そして、その間にモノホンのテロリストは罪を免れる」

「でも、わからないのは、なぜそんなコトをスルのかです。何が狙いなの?」

「ソレが…ココにいたんじゃ見つからない」


スマホは圏外だ。


「何もない。温度調節機は多分外だろう。この中は何度ぐらいかな?」

「この感じだと完全に氷点下ですね」

「あと何時間、僕達は耐えられるかな?」


いきなりドアに体当たりするムーンライトセレナーダー。鋼鉄のドアはビクともしない。


「おいおいおい。サイキック抑制蒸気だ。超能力(パワー)は使えない」

「また2人で姿を消すと悪い"ウワサ"が立ちそう。ソレに、何とかして脱出しないと凍え死んでしまいます」

「別の出口を探そう…ナイな。よしっ」


全力でドアに体当たりスル僕達。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「え。スピア、帰って来たのか?メイド長もヲタッキーズも、みんな出払ってるぜ」

「実は、追い返された。スピリチュアルな保養所では、スピリチュアルじゃなくちゃダメなんだって。ストレスを持ち込まむなと言われたw」

「もともとミユリさんと行くハズだったンだろ?」


スピアが振り向くと、出っ放しのスクリーン。


「ミユリ姉様は?映画鑑賞?」

「わからない。ただプロジェクターがつけっ放しになってた。テリィたんも行方不明。どーせ女だ」

「出掛ける時は、必ず誰かに伝言を残すのに」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び冷凍コンテナ。散々ドアにぶつかり汗をかく2人。フト気づくと指先に霜が降りているw


「マズいわ」

「うん実にマズいな」

「テリィ様、下がって。ドアから離れてください」


止める間もアラバこそ音波銃を撃つ!あちこちに乱反射した殺人音波で僕達はトンでもナイ目にw


「ちょっち!自殺しようとしてる?」

「すみません。でも、他に何か案が?」

「音波弾カートリッジは、後で必ず必要になる。取っておこうょ」


ムーンライトセレナーダーの冷たい肩を抱く。


「take it easy。ムーンライトセレナーダー」

「何か希望を持てる妄想をお願いします」

「うーん何も思いつかない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部は今宵も眠らない。


「エアリ、やっぱり変だわ。どうも腑に落ちない」

「どーしたの?マリレ」

「ジマルの引っ越し会社の従業員は、確かに全員が中東系だけど、ほとんどが秋葉原で生まれたヲタクなの…交通違反ならしてるけど、ほとんど前科もない」


ケラケラ笑うエアリ。


「だから、選ばれたのょ。やっぱりテロリスト部隊ナンだわ」

「あーあ今宵のエアリ、ヒツギみたい」

「テリィたんの言う通り、何か別のストーリーが隠れてるのカモね」


エアリのスマホが鳴る。


「あら、スピア。どーしたの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部にヒツギとラギィが戻る。


「ヲタッキーズ、どう?進展は?」

「何もナイわ。ジマルの従業員達は、全員何も知らないと言っている。人種による差別で訴えるとか言われちゃったわ」

「でしょうね」


頭を抱えるヒツギ。


「大丈夫か?」

「ダーティバムは、秋葉原に恐怖を植え付けるための爆弾。核爆弾とは違う。先ず爆弾が爆発する。ソレによって大量の死者が出る。でも、ソレだけでは終わらズ、放射性物質が拡散スル。ダーティバムが怖いのは、周辺環境への影響ょ。ソレらの地域は、爆発では被害がナイように見えるけど、ガン患者が次第に増える。赤ん坊も、子供も、大人も。大勢が駆け込むから、病院はあっという間に人で溢れ返って機能しなくなる。再び爆弾を落とされたようなパニックに陥るのょ」

「ヒツギ司令代理。ダーティバムは見つからなくても、犯人達の狙いは絞れるカモ」


ラギィの助言に顔を上げるヒツギ。


「人を集めて。今から48時間以内に行われる、人が集まりそうなイベントのリストを用意して。人が集まるなら何でも良いわ」

「待って、ラギィ。ソンなイベントなんか、秋葉原には山ほどアル。もっと絞り込めナイ?」

「国や政府関連のイベントだけで良い。スタジアムや国連機関が何をやってるか調べるわ。この時期を狙う何か理由があるカモしれない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラギィ。ちょっと良い?」


エアリが話に割り込み、ラギィを会議室に誘う。


「どうしたの?何?」

「スピリチュアル合宿から戻ったスピアから、テリィたんと連絡が取れないと言ってます」

「だ・か・ら?」


早くも目が三角のラギィ。意に返さないエアリ。


「ホラ。テリィたんは捜査を外されて、御帰宅してるハズでしょ?ナゼいないのかしら?」

「私に聞かないで」

「…ミユリ姉様も同じくいないの。2人は、もしかすると何か危険に巻き込まれているのカモ…」


ラギィの怒り爆発w


「あのね。今、私達はテロの捜査中なの。数千という人の命がかかってるの!」

「でもね…」

「そんな中、連絡がとれないだけで、2人の捜索をしろと言うの?神田リバー沿いのラブホにスーパーヒロインのコスプレのママ、シケ込んでイチャイチャしてるだけカモしれないわ。あぁ考えただけで腹が立つ!」


ナイス妄想。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕達は、冷凍コンテナの中で肩を寄せ合っている。


「テリィ様…大丈夫ですか?」

「大丈夫。ココにいるょ」

「感覚がナイのです」


必死に抱きしめる。


「スーパーヒロインに覚醒したから、だから、音波銃に撃たれて死ぬんだと思ってた。まさか、凍死だなんて」

「おい。未だ死んでないぞ」

「コレがテリィ様のSF小説なら、結末を好きに変えられるのに」


何故だかワカラナイけど涙が出て来る。


「ゴメンな、こんな男で…僕のせいで、ミユリさんをこんな目に。勝手に捜査をしなければ」

「テリィ様。もう良いの。ダーティバムはあった。テリィ様が正しかったわ。ただ、来るのが遅過ぎただけ。ありがとう。私を推してくれて」


腕の中で僕を見上げるムーンライトセレナーダー。手を伸ばし、僕の凍った唇を指でなぞる。


「覚醒したスーパーヒロインは、ミュータント。嫁にはなれても、リアル妻やリアル母にはなれないの…」

「おい!ミユリさん、しっかりしろ!眠るな!起きてくれ、寝ちゃダメだ」

「聞いて。私はテリィ様のコトを…」


彼女の手がダラリと落ち、僕達は眠りに落ちる。


第2章 この国、いつか目を醒ますと


僕達が眠りに落ちて、全てが凍りついた冷凍コンテナ。白い蒸気が漂う中、ドアを激しく叩く音。マスターキー(M870ショットガン)の銃声。僕は、白く凍った眉毛を開ける…


光の巨人が2体、コンテナに入って来る。頭にカチューシャ?使徒襲来?…ガバッと起き上がる僕!


「動かないで!」

「ミユリ?ミユリさんは?」

「落ち着いて。もう大丈夫だから」


救急車の中だ。屈強な救急隊員に抑えられる。


「…ムーンライトセレナーダーは何処にいる?」

「無事です。御一緒のメイドさんのコトなら」

「とは言え、2人とも間一髪だった」


余り聞きたくない声だ。元カノの今カレw


「ジョシ?」

「君は低体温症の症状が出てる。しばらくダルいと思うが、暖かくして水分を摂れば問題は無い」

KL(クアラルンプール)じゃなかったのか?」


僕の意識が戻ったのを見て顔を向ける元カノの…略


「あぁ行かなかったさ。正解だろ?いいか、痛むぞ」


僕の腕から点滴をはがす。痛いw


「起き上がってみるか。ゆっくりな」

「僕は、気を失ってたのか?」

「3時間位な」


そんなに?!


「ダーティバムは?」

「テリィたん、おはよ。廃工場の中にはなかった。ソレより何ょ!姉様のコト、抱きしめちゃって」

「…ココが良くわかったな、エアリ」


横からマリレも顔を出す。


「スピアょ。ミユリ姉様(とテリィたんw)がいない!って大騒ぎだったンだから」

「おいおい。スピアは、ミユリさんの代打で"寂寥のヲアシス"じゃなかったのか?」

「帰って来た。どーせ、またテリィたんが命令に逆らって、姉様をそそのかして馬鹿してルンじゃナイかと思ったワケ」


どーゆーワケだw


「2人がシケ込みそーな神田リバー沿いのラブホを片っ端から探したら、タマタマ冷凍コンテナの中から灯りが漏れてた」

「そっか…しかし、そんなに僕達の行動はわかりやすいのかな」

「ってか、私達が鋭いのょ」


ハイタッチするエアリとマリレ。赤い警告灯を回転させているパトカーの向こうに…ミユリさんだ。


毛布にくるまったママゆっくりと微笑む。


「ラギィの今カレ、少しは使えるな」

「テリィ様。ヒツギ司令代理が話がアルそうです」

「少しは信頼されたかな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


されてないw


「廃工場から残留放射線と爆薬が検出された。ダーティバムは確かにココにあったハズょ。あ、テリィたん。意識戻った?」

「ヒツギ司令代理!万世橋警察(ウチ)のチームが周辺の監視カメラを調べるわ。聞き込みも」

「そうして」


聞き込みに入るラギィに微笑みかけたが完全無視w


「無理もないわ。テリィたん達は、いつもこんなに

反抗的なの?」

「まさか。アキバを救う時だけさ」

「今度は、犯人も捕まえてょ。で、なぜココがわかったの?」


ラギィが何で怒ってるのか不明だが、南秋葉原条約機構(SATO)のヒツギ司令代理とはスムーズに会話再開だ。


「アミルが盗聴して監視していたのは、タクシーを貸し出してた運転手仲間のケビン・マッキだった。GPSでマッキのタクシーのルートを調べたら、マッキは、放射性物質のあった貸倉庫にも、アミルが殺される前に立ち寄ってた」

「え。マッキが?」

「アミルはマッキを追い、逆に殺されたのです」


ミユリさんが合いの手を入れる。夫唱婦随←


「犯人に仕立てるつもりだったアミルを殺してしまい、今度はジマルを犯人に仕立て上げようとして、バンに冷凍死体を保存してた」

「一味の顔は見えた?」

「無茶逝うな。サイレンサー付きの短機関銃で掃射されてたンだぞ?」


ミユリさんがフォロー。夫唱婦随←


「ダーティバムが白いバンに積まれているのは確認しました」

「秋葉原で白いバンなんてゴマンと走ってるわ」

「カウンターが見えた。爆発は今日の16時だ」


溜め息をつくヒツギ司令代理。


「あと10時間もナイわ。特別区(アキバD.A.)の中にあるのなら、検問は無駄ね」

「マッキは、恐ろしいコトを企んでいます。ジマルに疑いの目が向くよう、全て彼が仕組んでる。ジマルはハメられただけです」

「ROG!」


スマホを切りながら話に割り込むエアリ。


「タクシー会社から。マッキは無断欠勤をしてて、連絡がつかないそうょ」

「奴の住所は?」

「神田山本町のアパート」


命令は簡明だ。


「潰して来て」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"秋葉原マンハッタン"が朝焼けに染まる中、御屋敷(メイドバー)に御帰宅スル僕とミユリさん。仮眠中のスピア。


「ミユリ姉様!大丈夫だった?テリィたんも」

「声をかける順番が逆ナンだけど、とりあえず、毛布を貸して」

「モチロン、貸すわ。大変だったわね!」

「ありがと、スピア」


あれ?毛布はミユリさんだけ?


「テリィたん。死にそうな顔をしてるわ」

「低温物理学は信じない方が良いな」

「伝言がナイからヘンだと思ってた。例のタクシー運転手と何か関係があるの?」


スピアは鋭い。


「聞いてくれ。スピアに頼みがある。質問は、受け付けない。今週末、名古屋の大須に逝くンだ」

「一体どういうコト?」

「何も聞くな。質問は受け付けない…あ、待て?誰に電話スル気だ?」


秒でスマホを抜くスピアを止める。


「(シン彼の)アシリに電話スルわ」

「誰にも逝っちゃダメだ。アシリは、親しい人に話すだろう。そして、彼等も大切な人達に話す…パニックになれば、犯人を捕まえるコトが何倍も難しくなる」

「でも!やっと出来たシン彼ょ。ソンなの不公平」


心を鬼にスル。


「公平さは関係ナイ。逝ってくれ。早く」

「…ミユリ姉様も残るの?ズルいわ。不公平」

「だから、公平さは…」


突然、スピアは大声で泣き出す。息を飲む僕。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「カフェインが必要ナンじゃないか?あとカップ1杯分の温かさも」

「…テリィたん。さっきはごめんなさい。でも、2人が悪いのょ。ミユリ姉様と抱き合って白雪姫ゴッコなんかしてるから。アレを見て、私は…」←

「今回みたいなコトが、ヒツギにとっては、日常茶飯事ナンだろうな。スピアに危ない事態だと察してアキバを去るように逝った。シン彼に伝えたがったがヤメさせた。もう胸が張り裂けそうだょ。でも、ヒツギは、いつもこんなコトばかりしてルンだ。地獄だろーな」


ブラインド越しに、iPadに向かうヒツギを見る。


6.8(秋葉原無差別殺人)以降同じようなコトが世界のアチコチで何度もあったハズ。公にされていないだけで…あ、失礼。はい、ラギィ。エアリ、何?」


現場のエアリからだ。


「マッキの住所には4年前から別の家族が住んでた」

「誰なの?」

「近所の人に聞いたトコロ、マッキの家族が住んでいたのは10年以上も前のコトらしいわ」


そして、重要情報が舞い込む。


「で、近所の人の話だと、マッキ家には自衛隊に行った息子がいた。息子の名は…ケビン・マッキ」


第3章 非正規部隊"ヲカメ6.5"


「ケビン・マッキ。空挺のエリートだ。パープルハートを2度もらってる。その後"ヲカメ6.5"で海外での秘密任務に6回派遣」

「6.5?オメガ7?」

「いや"ヲカメ6.5"だ。多重債務に陥った空挺を集め、国益を追求スル不正規部隊。消耗が激しく、常に兵士不足が深刻」


首を振る。


「なぜ"ヲカメ"のヒーローがテロに走るんだ?」

「言い出したのはテリィたんょ」

「で、ヒーローの住所は?」


答えは泣ける。


「靖国神社。モノホンのケビン・マッキは数年前、スロビキン・ライン前面の戦闘で負傷し、ソレが原因でキーウの病院で死んでいる」

「別人がなりすましてるのね」

「その正体は、半島のスパイかもしれない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「顔認証にかけて」


ホワイトボードの前でヒツギ司令代理は、マッキの写真をはがし、ヲタッキーズに渡す。


「インターポールのデータベースも調べて」

「犯人のスマホをゴミ捨て場で拾ったけど、指紋は出なかった。マッキの写真は秋葉原全域に配り終えた」

「犯人が運転してたタクシーから指紋を採取スル。でも、運転手が何人もいるし、選別には時間がかかるわ」


イライラ叫ぶヒツギ。


「ねぇみんな。ソンな時間は無いの」

「犯人は、なぜマッキになりすましたのかな?」

「テリィたんはSF作家でしょ?ちゃんと妄想して。死んだ人間になりすまして罪を犯す宇宙人ナンて、いくらでもいるでしょ?」


無茶を逝うなw


「確かにSFではよくアル手だ…違うょ!だが、どうして、犯人はマッキを選んだのかってコトさ」

「確かにソレがワカラナイわ」

「好都合だから…じゃない?」


ヒツギが面白いコトを逝い出す。


「え。どうして好都合なんだ?アミルへの口座の入金は半島の銀行からで、マッキも…確か"ユギヲ2.5"の時に北の"西海衛星発射場"でICBMを爆破したのは"ヲカメ6.5"だったょな?マッキも作戦に参加した可能性がアル」

「つまり、2人は"半島"で繋がってる?」

「半島の"北"とね」


ヒツギと妄想の波長がシンクロ。彼女は鋭い。


「ワカラナイけど…例えば、犯人はランダムに死人を選んだのではなく、マッキになりすます必要があったってコトはナイかな」

市ヶ谷(防衛省)に連絡。マッキを調べて」

「マッキの家族は今、何処に?」


エアリが答える。


「両親は亡くなってるけど、シングルマザーの姉が妻恋坂のタワマンに住んでる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


妻恋坂の中古タワマン47F。


「散らかっててゴメンナサイ。離婚した直後なモンで、片付ける気力がなくて…貴女は部屋で遊んでなさい」


幼い娘を追い払うシングルマザー。


「で、どうしたの?またロクデナシの元夫が逮捕されたとか?」

「弟さんのコトで話があるんです」

「あ、知ってるわ」


ラギィに示された画像を見てソファに座り込む姉。


「彼はラドフ・ヘイズ。弟と同じ部隊で戦友だった」

「彼は今、弟さんになりすまし、何事かを企んで秋葉原の地下に潜りました。どうしてだかわかりますか?」

「さぁ…」


遠い目をスル姉。絶対に何か知っているw


「ラドフ・ヘイズとは親しかったの?」

「…いいえ。ただ、弟からの手紙には、彼のコトがよく描いてあった。そして、弟が死んだ時には、私と一緒にいてくれた」

「彼が秋葉原に対して敵意を抱くようなコトは?」


つい聞いてしまう僕。ラギィに睨まれる。


「なぜ、そんなコトを聞くの?」

「彼が一般人(パンピー)の過激派とヲタク殲滅の陰謀を企ててる可能性がアル」

「ウソょ!」


突然、大声で叫ぶコリン・マッキ。


「ごめんなさい…弟が死んだ夜、ラドフと1回寝たわ。その時、彼は怒ってた。みんながスッカリ戦争のコトを忘れてしまったから。兵士の扱いについても怒ってた。政治家は自分達を旧紙幣のように使っては捨てると言ってたわ。戦争に勝つコトより、自分の点数稼ぎにしか興味がナイ。だから、この国には警鐘が必要だって。ハマショーの歌より上手くやると言っていた。いつかは、この国、目を覚ますと」

「彼が何処にいるかワカル?」

「ワカラナイ。でも、電話番号なら知ってるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ラドフはGPSを切ってますが、追跡可能です!」

「居場所は突き止めて」

「三角測量で可能です。奴には気づかれない」


マリレがメタル製のアタッシュケースに組み込んだ追跡装置でラドフを追う。


「この国の兵士が犯人か…彼にも一理アルな。第2.5次朝鮮動乱だと騒いでたのに、今じゃニュースにもならない。テロリストを庇う気はないが、気持ちはわかる」

「アミルは、罪を着せるにはピッタリだったのね。核兵器開発の経験がアリ、テロリストの温床である北の出身。異次元だけど」

「そして、半島からアミルの口座に入金させ、コネクションを装った。連中の思う壺だわ」


僕の妄想を検証するヲタッキーズ。


「人々は、また北がテロ攻撃を始めたと思い、国民は再び復讐に萌える…あと4時間もナイわ」

「ダーティバムのコトを話せば、秋葉原は大パニックになる」

「今は、犯人を止めるコトが優先ね。そのコトだけを考えょ?」


ヒツギが飛び込んで来る。


「ラドフを見つけたわ。行こう!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバーをまたぐ和泉橋の北詰。昭和通りの喧騒を横目にマッキが歩いていると、目の前に車が止まり警官が降り立ち、空からはメイドが降ってくるw


「ラドフ・ヘイズ!」


クルリと向きを変え走り出すマッキ…いやラドフ。素早く振り向き走り出す。ヒツギを音波銃を抜く。


「逃がさない!手を挙げて」


正面に拳銃を抜いたラギィ。両手を上げるラドフ。


「ひざまずけ!早く!」

「大人しくしろ!ダーティバムは何処?」

「何処だ?早く言え!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室…をマジックミラー越しに見る隣室。


「最低のクズね。この国を守ると誓ったくせに」

「愛国者のつもりナンでしょ?」

市ヶ谷(防衛省)に連絡して奴の"ヲカメ6.5"時代の戦友を探して。何か事件に関わってるかもしれない」


うなずき走り去るヲタッキーズ。


「行くわょラギィ警部」

「了解」

「どんな手を使っても絶対に白状させる!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室。


「貴方は、怒ってる。その怒りは理解出来る。でも、貴方のやり方は完全に間違ってる」

「貴方は兵士でしょ?秋葉原のヲタク達は、貴方の敵じゃないの」

「何のコトやら、さっぱりワカラナイな」


うそぶくラドフ。


「貴方が新東京ハイツのトランクハウスと廃工場にいたコトはわかってる」

「だから、どーした?」

「現場のトランクハウスで放射線が検出されたわ。貴方がダーティバムを作ってたからょ。とぼけてもダメ。私達には通用しない」


マジックミラー越しに頭を抱える僕。


「時間の無駄だ」


「コイツは"ヲカメ"で訓練されてる。敵に捕まっても有益な情報を吐かない訓練を積んでるプロだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「自分のコトを意義ある行為をしているヒーローだと思ってるでしょ?言っておくけど、秋葉原のヲタク達は貴方のコトをヒーローだとは、思ってナイ。思ってナイどころか、貴方の名前は、史上2番目の無差別殺人犯として秋葉原の歴史に刻まれる。ソレが貴方の望み?」

「…仮に、あくまでも仮の話だが、何かが爆発しても俺は疑われないだろう。誰が考えたって、コレはテロだ。だから、国はテロリストを探し始める。誰も愛国者なんて探しはしない」

「貴方が愛国者?貴方みたいな人間は、愛国者ではナイわ。裏切り者ょ」


逆手に取るラギィ。


「この国は、裏切り者など求めていない。求めてるのはテロリストだ。いずれ見つかる。その後で俺がどうなると思う?俺の名は、事件ファイルの奥に埋もれるだけ。一生怪しまれるコトもナイ。そもそも自分の国の兵士が犯人だナンて都合が悪過ぎる。だから、メイドさん達も諦めて現実(リアル)を受け入れるコトだ」


ラドフの言葉に微笑むヒツギ…次の瞬間、机を押してイスごとマッキを後ろに倒し、マウントをとる!


「冗談のつもり?お遊びじゃナイの。ダーティバムは何処?」


拳銃を抜く。イスに縛られ動けないラドフの額に、ピタリと銃口を推し当てる。


「もう1度だけ聞くわ。爆弾は何処?」

「銃を下ろして!ヒツギ、銃を下ろしなさい!」

「覚悟は良い?」


激鉄を起こすヒツギ。同時に、拳銃を抜いて、ヒツギに向けるラギィ。


「ヒツギ、銃を置いて!」

「コイツが話したら下ろすわ。早く言え!」

「国の為なら死ねる…お前はどうだ?」


静かに目を瞑るラドフ・ヘイズ。


ヒツギは、拳銃をホルスターに収める。


第4章 6.8を忘れるな


捜査本部のギャレー。ラギィがパーコレーターのコーヒーをカップに注ぐ。後ろから声をかける。


「俺がやるよ」

「ありがとう」

「スゴい取り調べだったね」


ソコへヒツギが入った来て、一気に気まずい雰囲気になる。お互いに目を合わせない。


「吐かないとわかってた。何日かあるならまだしも3時間しかない。最初から無理だと思ってた。でも、チャンスがあったから、私は賭けに出た」

「権利の侵害があったわ」

「微妙ね。そうは考えない弁護士もいる。そもそも、奴に危険はなかった。私の銃は弾丸を抜いてあったから。殺しはしないわ」


平然としているヒツギ。いきり立つラギィ。


「あのね。私の銃には弾丸が装填されてた」

「貴女は、どうせ撃たないとわかってた」

「あら。次はわからないわ」


ラギィの剣幕に溜め息をつくヒツギ。


「警部。私のコトを嫌ってるのね。当然よ。貴方もね、テリィたん。だけど、私はヲタクに好かれるコトよりもクライシスを防ぐコトを優先スル。あと数時間で大規模なテロが起きると言うのに、捜査は振り出しに戻った。みんな、力を貸して」

「…わかりました」

「ROG」


ギャレーを出て逝く黒いメイド服のヒツギ。


「…どうやったら、あんなに感じが悪くなれるの?生まれつき?」

「違うみたい」

「え?」


エアリが片手にパーコレーター、片手にカップを持って、コーヒーを注ぎながら話しに割り込む。


「ヒツギを知ってるSATOメンバーに聞いてみた。ヒツギは、自分のTO(トップヲタク)を2008年の無差別殺人事件(6.8)で亡くしてる。あの日、彼女のTO(トップヲタク)は"運命の交差点"で刺され、ヒツギの腕の中で死んだ」

「…ヒツギは正しいカモ。ラドフを吐かせるしか方法は無い」

「いや。他にもアルと思うな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。焦燥感が募る。


「ヒツギ司令代理、ターゲットエリアを12か所まで絞り込みました!」

「12もアルの?とりあえず、NEST(核緊急支援隊)を分散配置して」

「ヒツギ!アミルとジマルの仲間は、全員当たったのか?」


ドヤドヤと割り込む僕。目をむくヒツギ。


「何の仲間?みんな無関係よ」

「ラドフは、テロリストはいずれ見つかると話してた。でも、もうアミルもジマルも死んでる」

「…そっか。犯人は、罪を着せる、他の誰かを見つけたのね? ソレは、アミルとジマルの関係者に違いないわ。全員の居場所を調べて!1度調べた人間も再捜査よ。アミルの妻のナジハにも協力を仰ぎましょう。ラギィ警部、貴女はナジハに信頼されてる。至急、彼女にコンタクトして」


うーん周波数がシンクロだ。ヒツギは鋭い。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィ運転の覆面パトカー(FPC)でナジハの中古タワマンに乗り付ける。


「ラギィ。あの黒いセダン」

南秋葉原条約機構(SATO)がナジハにつけた監視だわ」

「あ!」


車内の監視役は、額を1発で撃ち抜かれてる。渦巻く弾痕は音波銃で撃たれた痕だ。


「ヒツギの部下でスーパーヒロインのライラだ」

「犯人に先を越された?」

「ナジハが危ない!」


アパートに飛び込む僕達。


「ナジハ!何処にいるの?」


答えはない。テーブルに置き手紙を見つける。


「ラギィ、コレ!」

「"スーパーヒロインに死を。人類からミュータントを排除せよ"…最悪。何コレ?」

「人類至上主義のテロリストに誘拐されたように見せかけ、彼女を利用してアキバにダーティバムを爆発させるつもりだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋アキバポリスの捜査本部。


「近所の人は、ナジハが拉致されるトコロを誰も見てない。交通監視カメラはどう?」

「あと2時間じゃ、全部はとても調べられないわ…ヒツギは?」

「アキバ特別区(D.A.)の大統領府に、万一のために核緊急体制をリクエストしてる」


スマホしながらヒツギがまくしたてる。


「完全な放射線防護の装備でスタンバイをお願いします。大統領の緊急脱出プロトコルを発動してください…了解」

「ヒツギ、ナジハのスマホはアパートにあった。車もね。未だ秋葉原にいるハズょ」

「聞いて。発見があったわ」


エアリが割り込む。


「"ヲカメ6.5"を中心に、ラドフの傭兵仲間を探してみた。ほとんどが世界各地でビジネス中だったけど、2人見つからない。エルマ・バウアとジャク・コクラのメイド傭兵が、先週から姿を消してる」

「 2人は何者なの?」

「バウアは早撃ちガンマン…パースン?。コクラは爆発物処理の専門家」


ヒツギが飛びつく。


「その2人を調べ上げて。ヒップの穴まで調べ上げて!通話履歴、経済状況なんでもょ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


俄然活気づく本部に背を向けミユリさんにスマホ。


「テリィ様、どうしました?」

「いくら調べても多分何も出て来ない。連中は、タダの極右テロリストとは違う。経験を積んだ憂国の傭兵だ。ヒツギの手も読まれてる」

「後は運ですか。運が良ければ、どこかで誰かが何かを見つけるカモしれませんね。でも…テリィ様には別のお考えがアルのでしょ?」


僕は黒ジャケのポケットからネームカードを出す。


「また病気が出た。ホントに"喜び組"がお好きナンですね?お供いたします、推し変されると困るので」

「絶対?ソレなら、変身した方が良いと思うょ。夏だからメイド服もセパレートタイプだ!」

「バカ」


最後に周波数がピッタリ合うのは、ミユリさんさ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


廃倉庫に赤ん坊の鳴き声が響く。


「簡単なコト。従えば全員が無事。従わなければ、全員が死ぬ。OK?」


髪を下ろし、泣き顔になると意外にセクシーなナジハ。怪しい中華なアクセントのメイド姉妹が迫る。


「夫を殺したメイドに力を貸す気はナイわ」

「YA。でも、お前に選択肢はナイ」

「バンを指示した場所に駐車し、その場を離れる。それだけ。すると、赤ん坊は返すし、お前も家に帰れる」

「でも、忘れるな。車内には監視カメラ。妙な真似をすれば、直ちに赤ん坊は死ぬ。OK?」


うなずくナジハ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻の"潜り酒場(スピークイージー)"。御帰宅スル白昼夢をメイド長と2人で出迎える。静かに握手を交わす。


「ムーンライトセレナーダー。貴女のお噂は半島でも伺っています。テリィたん。また会えたわね」

「ソユン。半島には黙って来たのか?」

「テリィたん。ラギィ警部に私の音波銃を取り上げられてね。実は、少し困ってるの。何とかならないかしら」


僕がうなずくと、ミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーが準備してた音波銃を渡す。


「ソンユ。この前、話した時に言ってたね。情報収集が仕事だって」

「周りで何が起きているか、目を光らせるようにはしてるけど」

「その中には同胞にかけられた誤解を解くコトも含まれるかな?例えば、アミルや妻のナジハが、どーゆーワケか、テロ行為に関わっている、って誤解されてるみたいナンだけど」


素早く音波銃を点検するソンユ。


「あら。ソレはSATOにとっても重要な仕事のハズだけど?」

「おいおい。君の輝ける半島の明けの明星様は、アミルのコトをとっても気にかけてルンだろ?」

「まぁ秋葉原での新しい生活を気に入ってるかどうかを心配はしてたわ。だから私、時々様子を伺っていたの」


お互いに腹の探り合いだ。


「ナジハのコトも気にかけてた?」

「そりゃ御主人が亡くなったのょ?お悔やみには伺わなきゃ」

「彼女を監視していたのね。で、彼女は今、何処にいるかしら」


ソンユは、やっと口を開いたムーンライトセレナーダーの方を向く。ゆっくりと微笑む。


「ムーンライトセレナーダー。領事館の任務は外交活動なの。だから、領事館はヲタクをスパイするような真似はしない」


立ち去るフリ。振り返ってシレッと大事な情報。


「東秋葉原の158丁目と古いポンプ場の角に赤いレンガ造りの建物がアルわ。時間の無駄にはならないハズ…さて、失礼スルわ。コレから、ちょっと秋葉原を離れた方が良さそうだから」


微笑みを残してお出掛けスル。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"東秋葉原158丁目とポンプ場の角にある赤いレンガ造りの建物"のドアを蹴破りヲタッキーズ突入!


メイド vs メイドだw


中華なメイド姉妹は音波銃に手を伸ばすが、胸に赤いレーザーポイントを受けて次々と撃ち倒される。


「動くな!クリア!」

「赤ん坊を保護。無事だわ。おーよしよし…」

「ナジハは?」


後から続くヒツギとラギィが壁掛けTVを指差す。何とナジハが緊迫した表情で車を運転しているw


リアル画像?


「外の景色が見えない。何処を走ってるのかもワカラナイ。彼女に連絡する手段もナイわ」

「中華メイドの急所は外してくれたわね?未だ口が聞けるなら、私が爆弾の起爆場所(ポイント・ゼロ)を吐かせるわ」

「時間がナイ。急いで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ポイント・ゼロは"秋葉原タイムズスクエア"!ナジハが運転、黒いバン。10分前に出た!」

「ヒツギが聞き出したのですか?」

「ラドフが先に吐いた、司法取引でお前達を売ったとウソをついたらしい…コレで未だ爆発前にナジハに追いつくチャンスが出来た。ヒツギもラギィも中央通りで網を張ってる!」


ソンユが去った御屋敷(メイドバー)で、僕はミユリさんと考えをめぐらす…隙もなく空中へ飛び出すw

ムーンライトセレナーダーは自ら生み出す高電圧によるイオンクラフト効果で空を飛ぶ…


コードネーム"ロケットパンツ"を装着してるw


「電気街口に出るのに、なぜ中央通りなのかな?」

「ソレは"秋葉原マンハッタン"から直接逝けるからでしょ?」

「でも、1番早く逝けるのは…」


空を飛びながらスーパーヒロインに怒られるw


「テリィ様。横から口出ししないで」

「口出しじゃなくて」

「してるじゃないの!」


珍しく声を荒げるミユリさん…いや、ムーンライトセレナーダーか。思えば初めての空中痴話喧嘩だw


「仮にもタクシードライバーの妻だぜ」

「だから?」

「蔵前橋通りを左折すれば、中央通りがインバウンドで渋滞スルのは知ってるハズだ。彼女なら昭和通りを南下するょ。首都高上野線の高架下に進路をとれ!」


その時、交通監視ヘリからの無線が入る。


「交通監視ヘリ"バードアイ23"から全ユニット!蔵前橋通りを西へ走行中の黒いバンを発見。中央通りを左折スル模様!」

「テリィ様。やっぱり中央通りだって。引き返しますけど。良いですね?」

「ダメダメダメ絶対にダメ!ソレは警察お得意の幼稚な先入観に縛られたミスリードだ。僕達の探してるバンとは違う(多分だょ自信はナイw)」


その時!目の前に真っ赤なバンが飛び出す!運転席には必死の形相のナジハ。髪下ろしセクシーverだw


「ホラいたいたいた!ナジハが運転してる!急降下だ、ムーンライトセレナーダー!」

「ROG!テリィ様、つかまって!ナジハ、止まって!お願い!」

「え。ムーンライトセレナーダー?モノホン?」


急ブレーキ!鼻先で止まる"真っ赤な"バン。


「ムーンライトセレナーダー、お願いょ!赤ん坊の命がかかってるの!」

「落ち着いて、ナジハ。赤ん坊はヲタッキーズが保護した。貴女は逃げて。今すぐ。ココから少しでも遠くへ!」

「ああっ神田明神も照覧あれ!」


バックドアを開けた僕の目に飛び込んで来たのはダーティバム。真ん中に放射性物質マークのタンク!


タイマーは1分50秒前。カウントダウン進行中w


「こちらムーンライトセレナーダー。55丁目11番街でダーティバムを発見」

「了解。あと3分で爆発物処理班が到着スル」

「ヒツギ?ダメょ。全然間に合わない」


タイマーは残り1分36秒だ。


「戦闘工兵を待てない。爆発を止めるわ。どーしたら良いの?」

「いや、現場を見ないと指示出来ない。写真を撮って送って」

「ROG…今、送ったわ。あと45秒ナンだけど。どうかしら?見れた?」


何と沈黙だ。苦しげな、喘ぐような声。


「待って」

「ヒツギ!あと30秒…」

「ダメだわ。誰か画像ファイルの開き方を教えて」


何だょソレ?


「ファイルを開けナイ。申し訳ナイ…ホントにごめんなさい」

「あと16秒だ…ミユリさん」

「テリィ様」


見つめ合う。変身を解く。穏やかな顔で微笑むミユリさん。僕は、申し訳ナイ気持ちで胸が一杯だ。


「あと3秒」


唇を噛む。ミユリさんは…なぜか幸せそうだw


「カシコミカシコミ申す!」


そう叫び放射性物質マークのついた容器周りのコードを手当たり次第、掴んでは投げ千切っては投げ…


何も起こらないw


シメタ!何かが上手く逝ってるのか?ソレとも既にココが天国なのか?笑いがこみ上げる。愉快だ。


カウンターは0.00。でも、爆発はナイ。


「あぁ!あぁ、テリィ様!」


ミユリさんを力いっぱい抱き締める。


「やった!やったょミユリさん!」


あぁミユリさんって、ホントにツルペタだな←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


解散が決まり、後片付けが決まった捜査本部。僕達はギャレーで瓶ビールをラッパ飲みしている。


「…その時、テリィ様はスゴい顔で私のコトをじっと見て、いきなりコードを全部引っこ抜いたのょ!」


珍しくドヤ顔でしゃべるミユリさん。


「え。全部?」

「だって、結局その中のどれか1本だったワケょ」

「秋葉原特別区(D.A.)のヒカリ大統領が2人を表彰したいって。でも、真相は報告出来ないわ。少なくとも小職からは話せません」


ラギィも大笑いしている。エアリが話を次ぐ。


「2人とも危なかったのょ。ホントに生きているのが奇跡だわ。さすがは"魔術師テリィ(テリィ・ザ・ミラクル)"ね」

「…そうカモな。確かに危なかった」

「テリィたん。ちょっと話せる?」


ヒツギが顔をのぞかせる。ミユリさんと外へ出る。


「テロを計画した複数の容疑で、犯人達は起訴されるわ。ソレを話したかっただけ。2人のおかげで、多くのヲタクが死なズに済んだ。人類の進化は止まらないわ」

「進化は神化か…いつかヲタクは"神"になるのかな。でも、僕達"よどんだ性"が"覚醒"するコトはナイ。男は"神化"の阻害要因だ。今日だって、僕は勘が働いただけさ」

「テリィ様は、ソレで十分なのです」


会話を聞いていたヒツギがつぶやく。


「わかって欲しい。普段の私は、こんな冷たい人間じゃナイ。でも、SATOの任務中は、こうならざるを得ないの」

「とにかく、2度とこんなコトが起きないように祈るだけょ」

「そうね。adiós」


立ち去るヒツギの背中に声をかける。


「またアキバで何かが起きそうだったら、メールしてくれょ。あ、暗号を決めよう。"神化hallelujah"とかさ」


片手を挙げ、振り向きもせず、去るヒツギ。


「トンだ1日だったね、ミユリさん」

「全くです」

「ねぇ。考えてたんだ。もし良かったら…」


瞬間、期待を膨らませるミユリさん。でも、静かに首を横に振って、穏やかに目を伏せる。つぶやく。


「今宵は、あったかいお風呂に入って、休むコトにしましょう。もうクタクタです」

「ミユリさん…」

「リアルは、いつもヲタクの本質に相反します。スーパーヒロインは、推しや嫁にはなれても、リアル妻やリアル母にはなれないわ。なぜなら、私達は単なるミュータントだから」


やれやれ。ソレ、もう今宵はヤメようょ。


「あのさ。推しもリアルも関係ナイ。今の僕にとっちゃ、ミユリさんが全てさ」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"孤高の指揮官"をテーマに、前編に引き続き、孤独なSATOの司令代理、半島の領事館員、非正規部隊の戦友達、その姉、傭兵メイド姉妹、テロリストを追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。


さらに、ヒロインと人類神化の行方などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、カタコトの日本語や英語が公用語となりつつある秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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[気になる点] ジャンルがホラーでなく、夏のホラー2024のテーマ「うわさ」の要素を取り入れているようにもお見受けしない感じなのですが、キーワードに「夏のホラー2024」が設定されているのが気になりま…
2024/07/07 12:50 退会済み
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