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目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり?)恩返し  作者: ざっきー
第三章 雨降って、地固まる?

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49. 事件のその後と、〇〇〇さん襲来!?


 スコット伯爵家の第三夫人と四男がトーアル村の乗っ取りを企んだ事件は、センセーショナルな話題として国中に広がった。

 村からの要望でルビーの誘拐については伏せられているため、瓦版には夫人と四男のこれまでの行いだけが奇行として面白おかしく書き立てられ、飛ぶように売れている。

 犯人引き渡し時にモホー(に扮していた和樹)も誘拐については触れておらず、この件を知る者は国の上層部のみに限られ、今後も一切表沙汰になることはない。

 第一騎士団団長へわざわざ『今回の件について、遺憾の意を表しておる』とモホーが伝えたことで、これ以上彼の怒りを買ってはならないと、国王を始めとした首脳陣はピリピリと神経を尖らせている。

 彼らへどんな処罰が下されるのか、庶民だけでなく貴族たちも今後の行方に注目をしていた。



 ◇◇◇



 ある領地にいる一人の男が、自室で数枚の瓦版を興味深く読んでいる。

 すべてを読み終えると、男はにこりと微笑んだ。


「この、千載一遇の好機を逃すわけにはいきません。私も、さっそく行動を起こさなければ……」


 机から紙とペンを取り出すと、書簡を何通も(したた)めはじめた。


「村の中にさえ入ってしまえば、こちらのものです……フフフ」


 思わず笑みがこぼれたが、男はすぐに顔を引き締める。

 誰にも気付かれぬよう、注意深くひそやかに、しかし、速やかに事を行わなければならない。

 逸る気持ちを抑え、男は熱心にペンを走らせるのだった。



 ◆◆◆



 ルビーの誘拐・村の乗っ取り事件から半月後、国から犯人たちの処分が発表された。

 ドレファスさんによると、貴族が関与した事件でこれほど早く決定が下されることは過去になく、異例なのだとか。

 「よほど、モホー殿の逆鱗に触れることが恐ろしかったのでしょうね……」と微笑むドレファスさんから、俺はついと目を逸らす。

 ルビーまで「モホーさんは、お強いから……ね、カズキ?」と意地悪を言ってくるけど、()()()脅していないぞ!


⦅第一騎士団団長への『遺憾の意を表しておると伝えてくれ』が、儂には脅し文句に聞こえたがのう……⦆


 あれは、こんなことになって非常に残念だよと伝えたかっただけで、他意はない!

 向こうの世界で昔見たテレビのニュースで、官房長官が会見で『遺憾の意を表する』と言っていて、俺もカッコ良くこの言葉が使いたかっただけなの!!

 だって、賢そうに見えるだろう?


⦅・・・・・⦆


 あれ? マホーが無言になったぞ……

 まあ、いいか。

 それで、今回の処分内容だけど、まず主犯の母親とアーチーは鉱山への強制労働送りとなった。

 王命に逆らったのだから、死罪も有り得たとドレファスさんは言う。

 国民の中でも、「罪が軽すぎる!」と言う者もいれば「重すぎるのではないか?」との意見もあるらしい。

 俺は……よくわからないというのが本音だな。

 ただ、被害者感情が反映されるべきだと個人的には思っているから、ルビーやゴウドさんが「死罪にならなくて、良かった」と言っている以上、妥当なところなのだろう。

 俺としては、アーチーが二度とルビーたちの目の前に現れなければそれでいい。


 そして、実行犯の冒険者たちは、冒険者登録を剥奪の上、王都内で長期の労働奉仕活動が科せられた。

 こう聞くと罰が軽そうに感じるが、ジェイコブさん曰く「体感的には、国外追放処分より重いだろう」とのこと。

 AランクやBランクだった彼らが冒険者として二度と活動ができなくなるのは、生活の糧を奪われたも同然。

 別の道を探すのは、かなり大変だぞ…と、ジェイコブさんはしみじみと語る。

 

 そういえば、この人もケガでSランク冒険者を辞めたんだったな。

 彼は博学だったから、医師や学校の先生として故郷で第二の人生を歩むことができたけど、戦うことしか能がない者には無理だろう。

 元冒険者の腕を買われて護衛に雇ってくれるところがあればいいけど、これだけ大々的に報じられたら採用されるのはかなり難しいだろうなと思う。

 噂では、やつらは他の冒険者に対し威張り散らしていたらしく、その仕返しを受けるのは確実っぽい。

 そして、労働奉仕の仕事が王都内の清掃やゴミの処分など、囚人服を着た他の軽犯罪者と同じ作業ということで、言うなれば、これは『見せしめのための処罰』なのだとか。


 冒険者たちへの罰が、庶民に対しての見せしめ。

 では、貴族に対してはというと……


「スコット伯爵家が、子爵への降格ですか」


「はい。貴族にとって、これほど屈辱的なことはありません。まあ、家が取り潰されるよりはマシですが」


 スコット伯爵は今回の責を取り、蟄居(ちっきょ)引退。

 家督は嫡男が継ぎ、スコット子爵家として出直すとのこと。

 今回の件は、第三夫人と四男の暴走で他の家族は一切関知していなかったことが証明されている。

 完全にとばっちりを食った形で、気の毒だとは思うが。


「それでですね、冒険者パーティー『漆黒の夜』から子供たち数名とともに移住希望の届け出がありまして、全員を受け入れようと思っております」


 うん?

 さっきの流れから、急に話が飛んだような……と思ったら、ちゃんと繋がりがあった。

 俺は知らなかったが、ルカさんたちはスコット領内にある同じ孤児院出身なんだとか。

 その孤児院が、今回の一件のあおりを受けてスコット家からの補助金が減額されることが決まる。

 ただでさえ少ない予算の中でやり繰りしていたのに、これはもう存亡の機。

 そこで、これまで食料の差し入れなどで孤児院を支援していたルカさんたちは、決断する。

 乳幼児などを除く子供たちを引き取り、トーアル村へ一緒に移住しようと。

 子供の数が減れば、孤児院はこれまで通りなんとか運営はしていけるとのこと。


「村には空き家がたくさんあるから、住む場所は問題ないわ。あとは、どんな仕事を提供するか……ね」


 ドレファスさんの話を、ルビーが続ける。

 でも、仕事ってどういうこと?


「彼らから、要望があったの。できれば、仕事を斡旋してもらえると有り難いと」


 ルカさんたちには冒険者稼業があるが、子供たちにも自活を促していきたいとのこと。

 村に移住してくる子供たちは、下は五歳から上は十三歳までの計七名。

 単純作業でもいいから、金を稼ぐ術を徐々に身につけさせたいのだとか。

 たしかに、養われるだけでなく、自分たちで汗水流して働いて得たお金は大切に使うだろうし、余裕ができれば、ソウルたちのように楽しみもできるよね。


「それで、カズキが準備を進めてくれている『イケス(生け簀)』はどうかと思って」


「あそこを管理してもらうのは、いいかも。その為にも、早くアレを駆除しなきゃなんだけど……」


 なかなか計画は進まないのは、池に困った生物が生息しているからなんだよな。



 ◇◇◇



 王都から戻ったあと、村で魚の養殖をする計画を推し進めるべく俺は近場の池へ向かった――――村人たちから聞いた、事前情報を確認するために。


「これか。結構いるな……」


 村で魚が食べられない理由は、池の中に『吸血虫』が生息しているからだった。

 体長五センチほどの細長いぬめりのある体は、向こうの世界でいうところの『(ヒル)』みたいで、それが大量に発生している光景は見ていて非常に気持ちが悪い。


⦅この世界で『吸血虫』といえば、これじゃ⦆


 なるほど。

 トーアル村で最初に保護されたときに、俺が吸血虫を殺ったと聞いてルビーが怪訝な顔をしていた理由がわかった。

 こんなのを、素手で成敗したと思われたんだな。


「しかし、こいつらをどうやって退治すればいいんだ?」


 やつらは、水際か水中にいるから火魔法は使えない。

 『水』や『土』は効果なし。

 水際にいるやつを数匹氷魔法で凍らせてみたけど、う~ん時間がかかる。

 それでも、時間を作っては地道に氷魔法で駆除していたが、まったく終わりが見えないまま現在に至っているのだ。



 ◇◇◇



 俺は、今日も一人で池にいる。

 アンディとトーラは仕事オバーケが絶好調で、今日も俺が職場(洞窟)まで壺とリュックで送ってきた。

 毎日が充実しているみたいで、アンディもトーラもとても楽しそう。

 悲しいかな、暇なのは俺だけなんだよね……。

 

『センタク』と同じで、『オバーケ』の収益の一部も俺が貰っているんだけど、こっちは完全にアンディとトーラの給料だよな。

 最近は清掃の仕事も落ち着いているから、不労所得のほうが多いという現状だ。

 一人と一匹に負けないように、俺もしっかり仕事をしなければ。

 というわけで、今日もせっせと吸血虫退治に勤しんでいた。


⦅人が、こちらに近づいておるのう。この気配は……⦆


 えっ、まさか……

 森から姿を現したのは、旅装したあの人だった。





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