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便利屋③

 



 ランドセルを背負い早足で部屋を出る。そのまま階段を駆け下り、玄関の上がり框で1度腰を下ろし靴を履く。履き終えて扉に手を掛けながら振り返り、後ろにいる人に向かって言う。

「母さん!行ってきま──す!」

「ええ、行ってらっしゃい」

 するとその人はいつも俺に優しい笑顔を向けながら手を振って送り出してくれた。俺はそんな母さんが好きだった。


 急いでいつもの通学路を走っていく。

 いくつかの曲がり角を曲がるとコンクリートばかりだった目の前が急に開けて大きな桜の大木が現れる。

 自分はその木に速度を落とすことなく近づいていく。すると木の影に目立つ赤い服を着て黒いランドセルを背負った友達を見つける。

 心做しか速度が速まる。

「わあ!!」

「うわぁ!!!」

 そのままその友達に覆い被さると友達は予想もしていないことに体のバランスを崩して倒れ込んだ。もちろん自分も友達を下敷きに倒れ込んだ。

 倒れ込んでそのまま目を開ける。友達は少し痛そうに目を瞑り顔を顰めていた。

「・・・・・・く、くく、あはははははははは!」

 自分は少し申し訳ないと思ったが、驚いた姿が面白くて笑い出してしまった。

「!、おい!何笑ってんだよ!!」

「はははは、は、ひぃー、ふふふ、」

「笑うなって!!!どけよ!」

「ごめんって、でも、あんな驚くと思わなくて、つい」

 体を退けながら軽く言う。

 友達も体を起こす。そしてこちらに向き直り睨みつけ腕を大きく広げたと思ったら髪をぐしゃぐしゃにしてきた。

「お前、俺より遅く来たくせに生意気なんだよ!!!この天パ野郎!」

「おい!やめろよ!!それに天パって言うな!」

「へっ、これで御相子だろ!」

 そう言うと友達は直ぐに髪から手を離し、代わりに腕を肩に回しながら言った。

「わかってるよ、」

「そういえばよ、今日テストらしいぞ」

「知ってるよ、そんなこと」

「そりゃそうか、お前いつも点数高いもんな」

「こんなの簡単に取れるだろ」

「まぁ今回は俺も頑張るぜ。今回のテストで低い点取ったら母ちゃんにゲーム没収されちまうんだ。ついでに真白!お前にも負けるつもりないぜ!」

「自分も高い点取ると母さんが褒めてくれるんだ。ついでに、今回も負けない」

 こいつは良い奴だった。

 このしょうもないやり取りが楽しかったし気持ちよかった。



 中学に上がるとその友達とも疎遠になった。学校は一緒だったがクラスが離れたのだ。入学したての頃は一緒に帰ったりしていたが俺もあいつもクラスや部活の奴といる時間が長くなっていった。お互いなんとなく離れていったが鉢合わせした時は意味もなく気まずかった。

 ただ、俺にとって多分、あいつほど仲良くなれた友達はいなかったと思う。

 俺は中学でサッカー部に入った。なんとなくだったが小学校の頃、休みにサッカーをやる時楽しい思い出があったからかだったかもしれない。その時出来た部活の仲間と遊んだりするのは楽しかった。


 中学2年の秋、父さんが帰りが遅くなっていった。元々、昔から母さんと父さんは喧嘩をしていることがあった。最初は0時少し回るぐらいだったと思う。最近では帰るのが3時とかの日も多い。

 もちろん母さんは父さんに何度もそのことを問い詰めた。

 よく夜になると「お願い!もう少し早く帰ってきて!」「どうしてもっと早く帰ってこられないの?」と言う母さんの声がリビングから聞こえてくるようになった。

 俺はその声が聞こえてくる間、胸が騒ぐのに耐えかねて自分の部屋で耳にイヤホンをさし大きな音で音楽を流しながら蹲るようにして布団に潜った。

 朝になると父さんはもう仕事に行ったのかいなくて母さんはいつものように変わらず俺に笑いかけた。その時の自分はその事にいつも安堵していた。

 だがそうしている間にも父さんの帰りは遅くなっていった。そして母さんの声は聞こえなくなっていった。俺はこのままじゃいけないと思い夜、玄関の前で父さんを待った。

 自分にとって父さんは恐い存在だった。いつも俺を見る目がどこか不快に、屈辱的に歪んでいる気がしたから。小学低学年の頃は仲が良かったと思う。でも、いつからか話すのが怖くなっていた。

 3時くらいだろうか。父さんが帰ってきた。酔っ払っていた。俺は座っていた体を起こし、父さんと向き合った。父さんは俺を見るとやはり顔を歪ませた。

「っ。少し、話したい事があるんだけど」

「・・・・・・・・俺には無い」

 父さんはそのまま俺の横を通り過ぎようとした。

「っ!待ってよ!」

 俺は咄嗟に父さんの腕を掴んだ。

「・・・・離せ」

「母さんを、母さんのことをもう少し見てあげてよ!お願いします!」

 俺は父さんの腕を掴む手を少し強く握りながら言った。

「・・・誰のせいだと思ってるんだよ!!!」

「!っ」

 俺の手から腕を引っ張り出し、父さんはそのまま俺の胸ぐらを掴んで怒鳴った。

「あいつも、俺もあの時からこうなることなんて決まってまんだよ!!!!お前の顔なんて一生見たくもない!!!」

 父さんはそのまま俺を突き飛ばし、その場からいなくなった。

 俺は突き飛ばされて倒れた後、その場から30分程動けなくなってしまっていた。


 その次の日から父さんは帰ってこなくなった。


読んでくださりありがとうございます!

いや、久しぶりです!毎回投稿すりまでの期間が伸びてますね!!

(この感じだと良くて1週間投稿になりそうだな〜)

いや、頑張るのでまた次も見に来てみてください!

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