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便利屋②

 


 俺は今店の近くのコンビニにいた。

 これから俺は仕事で子供の傍から離れる。部屋に戻るのも夜になってからだ。

 子供は俺がいない間目を覚ますだろう。その時何か食べられるものを買って置いておこう思ったからだ。

 流石に夜まで病気の子供に何も与えないのは気が引ける。

 朝は俺が作ったが今は作りたい気分でもなかった。

(スポーツドリンク、握り飯・・・・3つあればいいか、それとプリンでも買っていくか)

 そのままカゴに入れ、レジに持っていく。

「袋にお入れしましか?」

「はい」

「カードはお持ちですか?」

「いえ」

「ありがとうございました──!」

 店を出る。

 まだ朝を過ぎたばかりだというのに日は暑く照りつけている。

「・・・・・・・・・暑い」

 昨日も暑かったが今日は更に暑くなるという。

(・・・・・・・・・あの子供に会ったのは昼過ぎだったか)

 なんとなく思ったことだが考えると同時に憂鬱になってくる。

「・・・・・はぁ、なんで俺なんだよ」

 項垂れて一人歩きながら言う。

(そもそも、なんで俺なんだ?おかしいだろ。どう考えても・・・。)

 俺はこの組織では下っ端だ。

 それも他の組織から売られて雇われているような奴だ。

 もちろん山下が今までしてきたように、俺には組織の事についてもそうだが、ほとんど情報を与えられて来なかった。

 仕事に関してもやれと言われたことをただやっているだけだ。

 俺がしている仕事はただ店に来る奴の依頼を確認して、検討するからまた来てくれ、と帰られて、その依頼内容を組織に送り、依頼の承諾を伝えて金を受け取っているだけだ。

 金についても組織に間接的に渡すだけで直接関わる訳でも無い。

 俺を管理している山下には脅しのように、店には監視カメラがいくつか設置されていることを前に言われている。

 つまり俺が変な行動を取れば自分の身がどうなるかわからないということだ。

 他の奴らはわからないが特に山下は基本的に人を信用する性格ではないはずだ。いや、はずではない。そうだ。

 あの、顔は笑っているのに薄気味悪い目も、いつも人と一定の距離をとっている身のこなしもそうだ。

 あいつは言わなかったが店だけではなく俺の部屋にもいくつか監視カメラのようなものがあった。

 まあ確かに、監視カメラがあるからと言って逃げられない訳では無い、だが逃げ切れるかと言えば逃げきれないだろう。

 山下には笑いながら逃げたら殺すと言われてもいる。

 それと同時に俺より前にこの仕事をさせられていた男で逃げ出した奴もいると言っていた。逃げ出して、依頼で殺される予定だった奴に情報を売って助かろうとしたらしいが山下達が捕まえる前に殺されていたらしい。

 確かに、自分はお前を殺す組織の雇われだ、と言う奴の言葉など信用出来るわけが無い。信用したとしてもその男を守ってやる奴はいないだろう。

 山下は『その後警備が厳しくなっていて依頼が手こずりましたが、そんなことしないでくださいよ?』なんて言っていたが。

 まあつまり、山下を含めた組織の奴は俺を都合のいいように使いたいだけなのだろう。

 そんな俺なんかにあんな子供を預ける?

(俺が見るより他の奴が見る方が余程安心できるだろう。何がしたいんだ?まさか俺の事を信頼しているなんて言わないだろうな?いや、山下が嘘でもそんなことを言う姿なんて想像すらできない)

 そんなことを考えている間に俺は店の前まで戻ってきていた。

(考えても埒が明かない。袋だけ置いてさっさと店に行こう。・・・・・いや、その前に喉が渇いたから水を飲みたい)

 階段を上り短い通路を進んむ。部屋の前まで着き俺はドアを開ける。

 ソファの方を見れば子供が体を起こしていた。

 予想をしていなかった。

 時間もあまり経っていないし起きているわけないと思っていた。

(・・・・落ち着け。何も考えるな・・・・・・・・・・)

 子供がこちらを見ているがわかる。

 俺は何も無かったかのように部屋の中に入った。

 そのまま子供の居るテーブルの所まで行き体を軽く屈めてさっきコンビニで買ったものを机に置いていく。

 その間も子供が俺を見ているのだろう視線を感じた。

 ただ。

 怖い。

 その感情がどうしても溢れてくる。

(・・・・・・・・・・・大丈夫だ、何も無い。何も考えてない)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 静寂が流れる。

 離れたい、逃げたいという感情が大きくなっていく。

 並び終える。

(・・・・・早く、早くしないと!)

 俺は体を起こし、元来た方向へ体を向けようとした。

 だが、。

「・・・・・おにいちゃんっ」

 身体がただ一瞬固まった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、()()()()()のに、めいわ、くかけ───」

 バンッッ

 俺は、俺が気づいた時には子供の両耳を俺の手で押さえつけていた。

「読むな!!俺の心を勝手に読むなっ!!!!!!!」

 俺は立ち上がり、そのまま子供に当てていた手を引きポケットに入れて部屋を逃げるように出て行った。






 バタンッ

「クソッ!!!!」

(何やってんだよ!!!クソッ!!!しっかりしろ!!!!!)

 店に入ると先程の緊張が緩まった。

 その代わりに、怒りと悔しさが溢れてくる。

 俺は足をタイルに激しく叩きつけ地団駄を踏んだ。



 結局俺はその日部屋に戻ることは出来なかった。




読んでくださりありがとうございます!

いやーほんとに久しぶりですね!!

今日投稿出来て良かったです。

次は早めに投稿します。

また面白かったら次も読んでみてください!!!

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