便利屋
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「せんせー!この子が✕✕ちゃん泣かせたー!!」
(また!?この前も保護者の方からクレームきたのに・・)
「・・・どうして泣かせ─」
「わたし、わるくないもん!ほんとのことゆっただけだよ!!✕✕ちゃんにきづいてなかったからおかあさんが泣き叫んでるの嫌だし面倒っていってたっておしえてあげただけだよ!」
(この子、なんてことを言うの!?)
「何を言ってるの!!謝りなさい!!!」
「いや!!わたしはわるくないもん!せんせーだって泣かれるのは嫌だって言ってたじゃん!」
「!、言ってません!!」
「なんでうそつくの?ほんとうは子供なんて嫌いっていってたじゃん!!」
(なんで?!そんなこと言ったことないのに、。・・・・・・気味が悪い)
「・・・・・きみがわるい?」
「!」
「すみません!!もうこんなこと言わせないようにします!!!」
「本当に、母子家庭だからってこれは流石に教育できてないんじゃない?もしかして、わざと言わせたのかしら?」
「いえ!!そんなことは─」
「もういいわ。もう私の子に話しかけ、いえもう近づかないで。いい?」
「はい。今回は本当にすみませんでした!」
「・・・・おかあさん、わたし本当にわるくないの」
「・・あなたは何がしたいの?」
「え?、」
「お母さんに迷惑かけて楽しい?!ねえ?!!!また変なこと言ったら許さないわよ!!!!」
なんで?わからない。どうして怒ってるの?わからない。わからない。ごめんなさい、許して、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい──。
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山下、キツネ野郎は俺にこの子供を面倒させるためにここへ来たようだった。
(今日はよく喋ると思ったら、くそっ!!いつもは説明なんてろくにしないくせに、。それに、なんで俺なんだよ、)
俺はあいつには逆らえない。
だから俺はこれからこの子供の面倒を見ていかないといけないのだ。
(いつまでだ?いつまで面倒を見ればいい?)
俺はソファに座りながら膝に肘をつき、手で顔を覆いながら考えた。
養子に取る。それは自分の名前を養父として貸すだけかもしれない。少しの間ここで面倒を見てその後はこの子供は誰かに引き取られる可能性もある。
それでも──。
1週間、半年、1年、それ以上。
(無理だ。俺はもう誰とも深く関わりたくない。それに、)
指の隙間から眠ったままの子供を見る。
(この子供は普通の子供じゃない。《精神感応》。心を読むなんて能力者、近くに置きたくなんかない)
怖い。
自分の頭にただ漠然とその感情が存在しているのを感じる。
だが、この現状が自分にとってどうしようもないことだとも理解していた。この場から逃げることも、なかったことにすることももう出来ない。
「ふぅ───」
俺は目を閉じ、小さくため息をつく。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
そして目を開き、また子供を見る。
(・・・・・・・・俺は、この子供に愛情なんて向けられる自信が無い。もうとっくの前からそんな感情わからなくなってる。それに向けたいとも思わない。この子供がここにいても幸せになることは出来ない。俺がこの子供に向けるのはきっと、理不尽な感情だ)
この子供が小さく怯えていた姿が脳裏に浮かぶ。
(そもそもどうやって接する?)
この子供が心を読むなら
俺が外面を優しく繕っても、知られていいことも知られたくないことも全て内面を聞かれているということだ。嘘も何もかもこの子供には通用しない。
そんな子供にどう接すればいいと言うのか。
「ん゛ぁ゛ー、」
子供が突然小さくだが押し潰したような呻き声をあげた。
もちろん考え込んでいた俺はビクッと体を跳ねさせた。
子供はまだ寝ているようだ。
(なんだよくそっ。熱に浮かされてるだけかよ、)
少し緊張が抜けた。
そのまま子供の顔を見ているとある言葉が思い出された。
「『ごめんなさい』ねぇ・・・・」
(・・・でもそうだよな。この子供は元々孤児か親に売られて研究所に入ったんだもんな。あんな能力も持っていて今まで良い思い出なんてあるのだろうか)
立ち上がり子供の寝ているソファに近づく。
灰色がかった髪は痛んで所々絡まっている。
小さい体は少し痩けていて、服は古くは無いがかなり傷ついている。
顔も痩けていて熱があるからだろう赤い。
さっきも浮かされていたが近くで見れば口を小さく動かしながら何かを言っているようだった。
(・・・・・・この子供はこれから幸せになれるのだろうか)
ここは裏の世界だ。
この子供がここから出ることはきっと出来ない。
そんな場所でこれからの人生、笑っていけるのだろうか。これから、この子供にどんなことが起こるかはわからない。だが今と同じかそれ以上に苛酷なものになる。
いや、きっと笑うことは出来なくてもこの環境には時期になれていくのだろう。
面倒を見るのもきっと少しの間だ。俺もその間だけ我慢すればいい。
(・・・・・でも、もし、この子供を今ここで俺が殺せば俺もこの子供も楽になれるかもな)
冗談交じりに俺は子供の首に片手を当てる。
子供の首は熱を持っていて暖かかった。
俺は手を当てたまま子供の顔を再び見た。
子供は、光の入らない目から涙を流しながら俺を見つめていた。
「おがぁさん、ごめ、なさい。わ、たしもうわるいこと、しないから、だから、ころさないで、」
(っ!起きて!!!)
俺は手を首から退けた。
「ごめんなさい、へんなこと、いって。めいわくかけて、ごめんなさい。あやまらせて、ごめんなさい、」
子供はそのまま目を閉じてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
(・・・・・・今のもただ浮かされていただけだったのか?)
それがわかると同時に俺は安堵した。
読んでくださりありがとうございます!
いや、久しぶりの投稿になってしまいすみません。
これからは3日に1度くらいのペースで投稿すると思います。過ぎてたらこいつも色々あるんだな、とか思ってあげてください。
たまに誤字があります。気をつけてください。
最後に、面白いと思ったらまた次も是非読んでみてください!