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こども④

 

 飯を食った後、俺はある問題に直面していた。いや、直面するとことはわかっていた。わかっていたのだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 俺は今子供とソファで向かい合い、見つめている。

 時間は6時。そろそろ依頼内容を聴かないとと思っていたのだが。

(こいつ喋れんのか?)

 当たり前の疑問だ。どうしたものか。

 一応聴いてみる。

「依頼は?」

「・・・・・・・・・・・」

(・・・・どうすんだよこれ。何か依頼を聴き出す方法・・・)

 辺りを見渡し何か方法を探してみる。

(何か、何か・・・・・!)

 机の隅にあったペン立てに入ったペンとメモ帳を取り、質問を書く。

(そうだよ、喋んないなら書かせればいいじゃんか)

 そのまま子供の前にぺんと質問を書いたメモ用紙を置いてやる。

「・・・・・・・」

 だが眉を八の字にして紙を見つめるだけで一向に動こうとしない。

(マジかよ。これじゃあどうすることも出来ないだろ。こんな子供使いに出すなんて依頼主も何考えてんだ?馬鹿でも分かるだろ)

 どうしようもない状況に頭を搔く。

(だいたいこいつ人の言葉聞こえてんのか?ずっと下向いたままじゃないか?)

「おい。なんでもいいから反応ぐらいしろ」

 俺は痺れを切らして子供の肩を叩いた。

「っ!ごめんなさい!!!!」

「!」

 決して強く叩いた訳でわない。むしろ普通より優しく叩いた方だ。

 だが・・・。

 触れた瞬間子供は体を跳ねさせ叫んだ。

 俺はそれに驚き、すぐに手を引っ込めたが子供は恐怖に怯えるように謝り始めてしまった。

「わ、わからない、です、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「分かったから落ち着け!」

 俺はどうすればいいか分からず引っ込めた手をさ迷わせながら言った。

(どうする?!本当に何なんだよ!)

「落ち着けって!触って悪かったから!」

「ごめんなさいごめんなさいわからなくてごめんなさいごめんなさいっ-」

 ドサッ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「き、気絶した?・・・・・」

 辺りに静けさが戻る。

 子供は糸が切れたかのように倒れてしまった。

 俺は子供に近づき一旦ソファから落ちた子供を抱き上げ、ソファにそのまま寝かした。

 子供はさっきので熱が上がったのか息が荒くなっていた。

 子供を眺めながら思う。

(この子供は何なんだ?分からないってなんだ?まさか迷子とか言わないよな?いや、それは絶対ない。それに普通の子供があの()()()を知ってるわけない)

「この子供本当に依頼の使いなのか?」

「違いますよ?」

 背後から声がした。

 今、この部屋にいるのは俺と寝ているこの子供だけだ。

 他には誰もいないはずだ。

 返ってくるはずのない返事だった。なのに。

「っ!!」

 反射的に後ろを振り返る。

 そこには入口の近くに立ち、笑顔を貼り付けながら、静かにつり目を細め、こちらを見つめる男の姿があった。

「山下っ!」

 それは俺の上司だった。

 振り返る前に声で俺はその人物の大体の予想がついていた。だがこの人物がここに来るなど想像していなかった。

 この男は上司だ。だが自分はこの人物についてほとんど知らない。会った回数など手で数えられるほど少ない。会うのは前回会ってから半年ぶりだろうか?

(なんでキツネ野郎がここにいる。大体、いつからいた?全く音がしなかった。)

 自然と体が強ばる。

「・・・・・・・何しに来た」

すると山下が自分でも可笑しそうに顎に手を当て首を傾げながら言う。

「そうですね・・・。あなたが心配だったから?」

「っ・・・・・・ふざけるな」

「冗談ですよ。そんなに睨みつけないでください。」

 そう言うと山下はこちらに向かってゆっくり歩きはじめる。

 だんだん距離が縮まっていくのを感じ、体が更に強ばっていった。

 1秒が数十秒にも感じられた。

 山下の右耳に着いたチェーンピアスが揺れて光が反射する。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 通り過ぎた。

 予想外だった。

 急いで後ろを向く。

「熱があるようですね。私が行く前に追い出されているかと思いましたが、この子供はある意味ラッキーでしたね」

 山下はしゃがみ、子供の額に手を当てながら言った。

(!!っ。まさかこいつが!)

「・・・・・・・お前がこの子供に合言葉を教えたのか?この子供はなんだ?まさか迷子を拾ったとでも言わないよな?」

 頭に浮かんだ疑問を俺は冷静を装って山下に問いただす。

「動揺する気持ちも分かりますが、落ち着いてください。一気に質問されても困ります」

 山下はそのまま俺の方を振り返ることなく言う。

「合言葉を教えたのは私です。もちろん迷子ではありませんよ?私は慈善活動家ではないので。この子供はある研究所の子供です。」

「・・・・・・・研究所?」

「ええ。上からの依頼で研究所を調査して解体するよう言われていたんです。その研究所というのが色々噂はあったのですが、また能力者の研究もしてまして」

 呆れたように言う。

「っ!。まさかこの子供はっ・・・」

 俺は最後まで言わなかった。

 山下がその言葉に返す。

「能力者です。他にも何人かいましたが、他はダメですね。もう精神が壊れている。この子供も放っておくつもりだったのですが、最近()()の立ち位置が怪しくなってきていまして、この子供が回収されるのは避けたかったんですよ。この子供の能力はかなり特殊なので。・・・・・ちなみに何の能力者だと思います?」

「・・・・・・・・」

 俺は何も答えず黙り込む。

「実はですね、この子供、心を読むんです」

「!!!!!」


 能力者の研究はある種の拷問や解剖に等しいものだ。

 だからこの国だけでなく、ほとんどの国や地域では人道的に禁止されているものだ。表向きは。

 国にしなくても希に、ある一定の権力者や組織は能力という不思議で希少な力を調べようと能力者を研究したりするところもある。

 だが、国と他とでは能力者の扱いが違う。国であればある程度ではあるが権利は保証されていることが多い。

 山下の話から()()()()()()()、となると国とは別の他の研究所である可能性がたい。


 それに()()は小さな組織だ。もし国の研究所であったとして、解体するなんて馬鹿な依頼受けないだろう。


 つまり研究所は国に属していないものだろう。

 そして驚愕すべきは国に頼らず研究している組織にこれほど特殊な能力を持つものがいるということだ。

 かなり異常だろう。


 山下が愉快そうに声を跳ねさせながら言う。

「凄くないですか?心を読むなんて物語でしか存在しないようなものですよ?本当にそんなものがいるなんて見つかれば、国家が保護しにくるでしょうね」

 確かに能力者の存在自体とても希だ。

 ここにいる山下も能力者だ。

 俺が初めて見た能力者でもある。

 だが普通こんなに近くにいるものではない。

 それこそ一般人であれば能力者の存在を知る者すら少ない。

 ただでさえ能力者は希なのに山下が言うように心を読むなど馬鹿げた能力者であれば囲われないわけがない。

 だが、俺が1番気になったのはそこではない。

「・・・・・・・・・・・そんな能力者をお前は独りでここまで来させたのか?」

 そう、山下はこの子供を独りにしたのだ。

 あまりに無謀過ぎる決断だ。

 山下はそれになんでもないかのように言った。

「私も仕事の続きがあったので独りで行かせるしかなかったんですよ。まあここまで来れるかは五分五分でしたけど。」

「っ!!!」

「そう怒らないでください。人の話は最後まで聴いた方がいいですよ?」

 俺の反応に山下は笑いながら言った。

「五分五分ではありましたが何も問題はなかったんです。この子供の能力、先程は心が読めると言いましたが正しくは()()()()なんです。あなたは私の能力を知っていますよね?」

「・・・・・・・・」

(こいつの能力は一言で言えば《拒絶》だ。そしてこの子供の能力は《精神感応》。《拒絶》という能力もかなり大概だが、ある程度の規定があると言っていた。それは確か()()()()()()()()()()。さっきの話からするとこの子供の能力は機関としては耳から聞き入れるものだ。つまり耳の機能を拒絶すれば-)

「!・・・・・・お前耳の機能をなくさせたままここまで来させたのか!」

「ええ。時間があれば能力だけ使えなくしたのですがやはり調整が難しくて、時間が無かったので耳の機能ごと拒絶しました。ですがここで大事なのは能力がバレないこと。さっきも言いましたが問題は無いんですよ。死んでもこの見た目では孤児として処理されるでしょうし、ここに辿り着けなくても警察あたりに保護され、この子供は聴力障害者としてこれから生きていくだけですから。能力がバレるよりマシでしょう?」

「・・・五分五分じゃない。辿り着いても死ぬ可能性の方が高かった。元々この子供は弱っていた。熱が出たからこの子供は助かっただけだ」

 山下はそれにしゃがんでいた体を起こしながら悪びれることなく答えた。

「あははは。それは本当に予想外だったんですよ。私にも色々しなければいけないことがあったので。今までずっと仕事で忙しかったんですよ?終わってすぐここに来たんですから。それに、無事に保護できたんだから結果的には良かったんじゃないでしょうか」

 こいつにこれ以上言っても無駄だと思った。それに結果的にではあるがこの子供は生きているのだ。

「・・・・チッ。それでこの子供、どうするんだ?」

 聴くと山下はこちらに向き直り、相変わらずの貼り付けた笑顔で言った。

「はい。その事ですがあなたがこの子供を養子に取り面倒を見てください」

「・・・・・・・・・・・・・は?」

(何言ってるんだこいつ?こんな子供の面倒を見る?無理に決まってるだろう。大体俺はもう人と深く関わりたくなんかっ・・・・・)

「お前、ふざけんなよ?無理だ。他を当た-」

「立場を忘れてしまったんですか?」

 温度が低くなった気がした。

 山下は笑顔のままだ。だが、明らかに纏う雰囲気が変わった。

 背筋に冷たいものが走る。

「あなたに断る権利はありませんよ?」

「っ!」

 わかっていた。そんなことわかっている。

 山下はそのまま歩いてくる。

 そして通り過ぎる直前止まり言った。

「それにしてもあなたのお人好し、あれほど人に裏切られて多少は直ったと思っていたのに、全然直っていませんね」

「っ!!!!!」

 顔が歪むのをもう抑えることは出来なかった。

 男は言うとそのまま通り過ぎて行った。

 後ろから軽く明るい声が聞こえてくる。

「聴力は直しておきました。今日は話せる状態ではないでしょうから詳しい話をしに、また明日にでも来ますね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 音もなく扉が閉まりその空間に静けさが戻った。

「くそっっ!!!!!!!!!!」

(違う!!!俺は、俺はもう、いらない!!!!俺は捨てたんだ!!!!!!愛なんて友情なんてもう関わりたくなんかっ!!!!!!!!!!!!!)

 そこに俺は立ち尽くすことしか出来なかった。

読んでくださりありがとうございます!

昨日投稿できなかったので投稿出来て良かったです!

突然ですが、少し人物紹介をしたいと思います。

今回出てきた山下さん!

彼の特徴を本文ではあまり出せなかったので書いておきます。

顔は本文にも書いてありますが、基本的にはキツネですね。髪は男性にしては少し長めで癖のない(少しマッシュぽいかも)明るめのベージュをイメージしています。右耳にはチェーンピアス。体は細身。と言った所でしょうか。あ、あと山下は本名ではないです。偽名ですね。

ちなみに今の主人公の特徴をあげると

少し説明がムズいのですが髪は癖毛で軽いテンパ、前髪はセンター訳では無いがセンターっぽい感じですかね。前髪もはねるから浮いちゃうんですよ。いやムズい。

目つきは本人自覚ないですが悪いです。

服装は大体いつもジャップパーカ着てますかね。

そのくらいです。

余談ですが山下さんは女の子の子供が癇癪を起こしている間に鍵を開けて中に入ったっぽいです。本人は「なんか騒いでるなー。どうしよう。これ来るタイミング間違えたかも・・・・・・」って思っていたっぽい。

少し長くなってしまいましたがどうだったでしょうか?印象通りだったでしょうか?

この作品を面白いと思ってもらえれば幸いです。

また次も是非呼んでください。

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