であう
夏の半ば、その建物は重々しい雰囲気を放ち静かに影を落としながら鎮座していた。今思えば建物の老朽化によるコンクリートのひび割れと日差しの暑さがより一層その建物を雰囲気だてたのだろう。
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(なんだこいつ・・・・)
俺はコンビニ袋を右手に持ったままその場に立ち尽くしてしまった。夏の昼過ぎ、セミの鳴き声が響き渡る暑い日だ。常日と変わらない日。だが常日と少しこの日は違った。
(なんで扉の前にいるんだ?)
そこには扉に体をもたれて蹲るものがいた。体が小さく揺れ、息をしていることがわかる。だが長い灰色の毛と布で体がおおわれているせいでそれ以外のことがほとんど分からない。
髪と布の間から少し足が出ていた。
(子供か)
そのものの正体がわかると同時に疑問が浮かんだ。
(子供がなんでこんなところに?)
(ここは子供が来るような場所じゃ・・・っ!!)
ほぼ反射的に体を後ろに下げ子供と距離をとる。それと同時にパーカーのポケットに忍ばせてあったナイフを手をポケットに突っ込んだまま握り締める。
(まさか殺し屋?どこのやつだ?)
1つの思考が頭を巡る。
緊張が体を覆い、強ばっていくのがわかった。
俺は元々戦闘は護身術程度にしか出来ない。だから護身用でいつもナイフも持ってはいるが、殺し屋なんて戦闘のプロにはあまり意味が無い。
ここは古びた商店街にある小さな建物だ。叫んでも人が来るまで時間が掛かり過ぎる。おまけに建物の通路が狭いせいで逃げようにも後ろから避けることも出来ず狙われて終わりだ。
息を飲み目の前の子供を凝視する。
(どうするっ?)
(いや、まだ殺し屋と決まった訳じゃない)
半パニックになりかけた心を鎮めようとする。だが当然鎮まるはずがない。
ただでさえ煩わしいセミの声がより煩く、耳を刺すほど大きくなっていく気がした。
(落ち着け。殺し屋だろうとなかろうと逃げることは出来ない。なら・・。相手はまだ子供だ。どちらにしろこの場面をどうにかしないと、)
警戒をしたまま息を軽く吸う。汗が額を伝うのがわかる。
「おい」
重く、静かな声で動く気配のない子供に言い放つ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
だが一向に動く気配がない。
(なんだこいつ?)
「おい。用がないならさっさとど―」
「・・・・・・・・青い鳥はありますか」
俺はその言葉に眉をひそめた。
その言葉は特殊な依頼をする際の合言葉だった。
(こいつは使いだ・・。)
それがわかると同時に、力が緩んでいくのとは反対に自分の顔がさらに歪んでいくのがわかった。
(依頼に子供を使いにするなんてどんな物好きだよ。しかもこんな、)
さっきはよく見えなかったが子供の服は少し破け、体には傷が多くついているのがわかった。現代の社会じゃ普通、見ない光景だ。
その子供を見ればどんな環境にいるのかわかった。
子供を奴隷のように扱う奴らは現代にも確かにいる。
(くそっ、!)
この子供を見ていると苛立ちが募っていくのがわかる。こんなやつの依頼でも雇われの自分に選ぶ権利などない。
「ちっ」
「さっさと立て!店にはいるぞ!」
苛立ちを隠そうともせず子供に向かって言う。
子供は。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
反応しない。
さらに苛立ちが募っていく。
「おい!!聞いてんの―」
ドサッ
見ると子供の体が床に倒れていた。
倒れたことで子供の髪がずれ、顔ががみえた。
小さな女の子だ。
その小さな女の子が口を大きく開けて息をしている。
(なんなんだよ一体・・・・)
俺は呆気に取られ、どうしていいか分からず途方に暮れて立ち尽くした。
この度は作品を読んで頂きありがとうございます。
この作品は「小説家になろう」に投稿した自分にとって初めての作品です。これからも連載していきたいと考えていますので是非次も読んでみてください。