1章 今日
三途川 菊は学校の帰り道を足早に歩いていた。
(ったく どうやったらこんなにも浮遊霊が湧きまくるんだよ)
霊媒師家系に生まれ、霊力を有り余るほど受け継いだ菊は霊力が強すぎる分、霊に取り憑かれる事が多く、常に体は重く疲れやすい。それ故に幽霊が見えるのである。
家のものからは天才霊能力者だとか宝だとか言われたが、霊力にしか期待しない親に嫌気が差し、今こうして学校へ通い、家にいる時間をできる限り少なくしている。
しばらく歩いていると道の端に保育園を見つめる影があった。
それを見かけた菊はゆっくり堂々と近づいて行き、声を張り上げた。
「おい、そこのガキ!」
声の方には薄っすらと浮かび上がる一年生くらいの少年がいた。
『ぼ、僕が見えるの?』そこにいた少年は、驚いた様子で恐る恐る聞いた
「うるせえな 見えてなかったら声かけてねえよ」と喧嘩腰の口調な菊だが、
「お前どのくらいここにいるんだよ」少し心配げに声をかけ直す
『分からない ここに来たのがいつで 僕は何をしたいのか、全く』少年はパニック状態だ
(やばいな現世にいた頃の記憶がなくなりすぎてる。早く成仏させねえと呪い化しちまうな)
そう思った菊は首にあるペンダントに手をかける。
『お兄ちゃんいきなり怖い顔してどうしたの?』少年の霊が声をかける
菊はできる限りの笑顔(苦笑い)をうかべ一言少年に問いかけた
「ここにいるより全然いいところがあるから来てみるか」
すると少年は『いいところ?きになる!!どうやっていくの?』
「今から魔法の扉が出てくる そこに入れ」そう言うと菊は
「xxxxxxxxx」<-呪文で天界へ行くことができる扉を出す
「ここの扉に入ってみろ、そしたらいろんな友達がいっぱいできるかもしれないぜ」
『やった!わかったよ!お兄ちゃんありがとう』
光を放ちながら一年生ぐらいの霊は扉に入って消えていった。
「はぁ、子供の霊を信じさせて成仏させるのは簡単だけど、会話めんどくせー」
霊が居なくなり愚痴を吐いていた菊だったがいきなり、
『おつかれ~菊ー』とうしろから声が聞こえた。菊は驚く様子もなく、
「うるせぇな、おつかれと思うなら声かけてくんじゃねえよ 剣剥!」
『あはーごめんごめんー』と謝る誠意もなく近づいてきたのは、菊に取り憑いている霊の一人剣剥だった。
「お前はいっつも俺が霊を成仏させたあとに出てくるよなぁ。ホント疲れるぜ」
とキレ気味の菊に対し、煽り気味の剣剥
『そっかぁ〜。俺が抜けて入り直すと、肩の重み凄いんだったねぇー』
「俺はお前が取り憑いてきたせいで霊と話すの苦手になったてのによぉ」
菊は家のこともあり霊とも人とも必死に距離をおいていたのだが、フレンドリーな剣剥のせいで周りにさらに変な人と思われることになってしまったのだ
『しってるぅーw ほんとに笑い話だよねぇ』と剣剥が茶化した
「なんだとぉ 一発殴らせろ!」
キャァァァ!
喧嘩が始まるというところで悲鳴のような声が聞こえた
「くっそ、殴るのはあとだ、行ってみるぞ剣剥」
「あいあいさぁー」
深刻そうな顔をした菊は剣剥と走り出した