12章 霊媒師
「はっ!ここは、、?あいつのとこに戻らねぇと、、。どうしたら、、」
菊が目を覚ますと、広い空間に立っていた。
菊はあたりを見回しながら状況確認を図るが、どこにも何もない。
『来たか、三途川菊。お前がここにいるということは、霊力の審査が始まったのだな。』
『遂に時は来たのだな。恐怖などでは振り払うことのできない運命が。』
どこからか無数の声が聞こえてくる。
「誰だ!何言ってやがる。とっとと出てこい。」
菊がそう言って警戒しながらあたりを見回していると、影に包まれた人影が出てきた。
『そんなに焦るな。三途川菊、お前をここへ連れてきたのは俺の霊力だ。お前の戦い抜こうとする決意を見越して呼び込んだ。その決意が変わらないことを信じてな。』
影から出てきた男は不思議な霊力をまといながら菊を見つめていた。
「お前は!!銃途!俺の体に封印されていたんじゃねぇのか?その姿は、、」
『剣剥は力を失っているようだが、今は関係ない。お前はなんのために戦っているのか教えろ。お前はなぜ霊媒師になる道を歩んでいくのか。』
「お前に教えなきゃならねぇ理由はなんだ。偉そうにしてんじゃねぇぞ。」
菊は紫月との戦いを中断されてしまったことに怒りをいだき、感情任せに挑発した。
『すぐに調子に乗っちまうのは変わってないみたいだな。相手してやるからかかってこい』
銃途は菊を煽り返して構えた。
「武器も持たねぇとは舐められたもんだな。だが、容赦はしねぇ。」
菊は斬りかかろうと霊子のこもった剣を振りかざした。その瞬間ーー
「き、消えた!?」
菊が一歩踏み出した瞬間に銃途は目にも留まらぬ速さで菊の間合いに入り込んでいた。
『甘いな。その程度、亀にも及ばない。よくぞここまで生きてきたな。霊力が高いばかりで少しも制御しきれてない。だからこそ道具として扱われ続ける。哀れだな。』
菊は何も言い返すことができなかった。菊は霊力を扱うよりも、剣剥が制御した力を利用するばかりで、自分では制御など知る由もなかった。
ーー俺じゃ何も守れねえのか。ーー
菊の頭の中には無力感しかなかった。紫月にも破れ、銃途には手も足も出ない。鬼灯も剣剥も結局は俺がなにかしたわけじゃない。俺は無力だ。惨めだ。強くなりてぇ。勝ちてぇ。守りてぇ。自分の手で大切な仲間を、親友を、守りてぇ。
ーーそのために俺は強くなりたい。ー
『顔立ちが変わったな。もう一度聞く。お前はなぜ霊媒師になる道を歩むのか。』
「俺は強くなりたい。そのためならどれだけ憎んでいてどれだけ嫌いなもんだろうが関係ねぇ。俺は強くなるためにここにいる。そしてこの力を使って敵を倒し、仲間を助ける!」
『強くなって仲間を助ける、か。今のお前なら俺達見たいな幽霊とお前ら人間の、霊媒師の関係ってやつを変えていけるのかもしれない。その覚悟はお前一人で掴み切れるほどのもんじゃない。この世界の運命がかかっている。お前はそれを知ってもなお、強くなりたいと言うのなら、力の抑え方と俺の能力で手助けしてやる。それでも強くなりたいか、菊』