8章 黒川鬼灯
鬼灯は街中を走り回った。菊の霊気も、いつもは遠くからでもわかるほど強力な剣剥の霊気も街中に広がっているからだ。
「どうやったらこんなに霊気が街中に広がるんだ!」
鬼灯はまだ何もできていない自分に苛ついていた。若干霊気が強くなっているところは戦闘の形跡があるだけで、菊に全くたどり着くことができない。
(菊なら、、菊ならどうする?なにかわかるような痕跡が、、、)
「そうだ、この街の中心は、確かあの広場だった。あの広場で朱青蒼を出したとすれば、、、菊が姿を消して帰ってこないのも、もしやあそこに菊が残した手掛かりがあるからか⁉急がないと。」そうして鬼灯は広場へ向かった
ーーー回想ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「もう一本だ!早く立て、この程度で霊は倒せないぞ。死にたいのか鬼灯!」
小さい頃から父親に武術を叩き込まれた。
どちらかが気絶するまで続いたこともあった。
私は父親のことが怖かった。
逆らったら、竹刀で叩き込まれた。
母親は私が怪我をしたときは看病してくれたが、きっと父親のことが怖かったのだろう、家事はすべて使用人に任せて部屋にこもっていた。
毎日こんな日が続けば、嫌でも力は身につくと知った。
霊媒師にはなりたくなかった。
幽霊が見えるのも怖くて仕方がなかった。
そんな時、菊と出会った。
その時の菊は少しも笑わなかった。
体中に切り傷や殴られた跡があった。
菊は父親から、かなり離れたところで静かに座っていた。
私は自分以外にも親に鍛え上げられている子がいることに親近感を覚えた。
私は思い切って声をかけた。
しかし、菊は何も話さず、何も答えず、表情を変えないまま、違う席へ行ってしまった。
私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。友達をつくることを許されていなかった私は、友達を作るときはこんなに胸が苦しくなるということを知った。
謝りたくて、また声をかけた。今度は、言葉を返してくれた。
それが嬉しくて、色んな話をした。
親のこと、外のこと、好きなことも色んな事を沢山、数え切れないほど話した。
気づくと、私と菊の顔は笑顔でいっぱいだった。それから私は菊に毎日会いに行った。
そして学校に行くことを許された私は、菊にも学校を勧めた。
しかし、菊はかたくなに嫌がった。
理由を聞くと少し黙り込んだが、剣剥のことを話してくれた。
私の前に、姿を現した剣剥は菊を冷やかしたが、私も菊も何故か笑っていた。
ただ、楽しかった。
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私の家系の因縁に菊が巻き込まれていいはずがない。私が菊と過ごした時間が壊されないように、急がないと、、、助けないと、、、もう逃げない!迷わない!
菊は絶対に私が助ける!!!