世代の勇者「ガード」
本編「世代の勇者」に登場するキャラクターの短編小説です。
サード村襲撃事件。事が起こる酒場の中で、一人の男が声を荒げる。
/////サード村/////
「だから勇者学校には戻らねぇ!!」
サード村の酒場で一人の男が声を荒げた。名は[ガード]。赤いバンダナを付け、大きな堅いと鎧を纏い、1瓶の酒を飲みながら、二人のパーティメンバーに話し掛けた。
「勇者ってのは!イカれた連中の集まりだ!!俺達に務まる様な役職じゃ無い!」
酒を飲み干し、新しい酒を1瓶。彼は元勇者学校特待生の一人である。年齢は46歳。27の時に勇者学校に入り、根性と気合で特待生になった。
「仲間が死んで、魔王軍の数はみるみる増える。そんな戦況の中、まともな人間はまず逃げる。」
「でもガードさんは逃げなかったんですよね!!」
丸型のテーブルに肘を掛け、ガードの向かい側に居た青年[アルケート]は目を光らせ、話し始めた。
「三年前の第三魔王軍前線地帯。八時間の間!ガードさんは最前線で勇敢に闘ったと!!耳にしますよ?」
「勇敢に…か?そうだな。震える身体を押し殺し、攻めてくる魔王軍を、俺は蹴散らした。」
「そこでガードは生き残り、名誉と栄光を掴みながらも勇者学校を辞めた。…やっぱり。最前線はそんなに辛いところなの?」
ガードの右側。薄水色の髪をした女性[ミスト]は落ち着いた声で語った。
「…嫌。最前線は辛くなかった。不安や恐怖なんて物は戦場には付き物。理解していたが…同僚や知り合いが死ぬ瞬間に立ち会うのは、それなりに精神に来る。だがそれよりも…」
「勇者が来てから戦場は狂った。」
「ガード」
〜〜三年前〜〜
荒れた大地は草木を枯らし、マナは消え、空は赤黒く照らされる。第三魔王軍前線地帯最前線。
「はぁ!はぁ!!オラァ!!!」
魔王軍から繰り出される魔法を断ち切り、瞬時に首を切断する。一人殺すごとに剣の切れ味は落ち、鎧は赤黒く染まる。
「大丈夫か!ガード!」
「俺の心配とは余裕だな!キリス!」
金髪の長髪をした男[キリス]は刀を使い、二撃で一人を斬り殺した。背中を合わせ、辺りを見渡しながら戦況を確認する。
「勇者様はまだかよ!!」
「恐らく情報が届いて居ないんだ…医療班の七割が混乱を起こして逃げたらしい…最前線の医療班もあと一人だ!」
「まともな判断だな!死なないよりかなんぼもマシだ!!」
鉄剣を握り、魔王軍に突進する。首を切り、鎧で受け、拳で殴り、刺し殺す。背後の奇襲はキリスが対応し、流れる様に三人を切断。右手を向け、バリアで五人を閉じ込める。
「すぐ行く!」
「頼んだ!!」
ガードが走り、キリスがバリアを消した瞬間。五人の魔王軍を薙ぎ払う。再び背中合わせに辺りを見渡し、呼吸を整える。
「スコアは?」
「735!お前は?」
「746だ!勇者になる為の平均スコアは50万…どんな戦力してんだよ!!」
「幹部や幹部見習いと戦うからだろ!!せいぜいこいつはらBランク以下だ!数の暴力ったって!質が無ければ意味がない!」
「その割には息が上がってるぞ?」
「は!お前もだろ?…くそ…移動だ!ここは彼がどうにかする!!」
「来てくれたな…不甲斐ねぇ。勇者様!!ここは頼みます!!俺達は北東の援護を!!」
一筋の光が空を駆け、金髪の男が姿を現す。
「俺は勇者じゃない!!ここは任せろ!!」
彼が声を荒げ、叫んだ瞬間。4000人を超える魔王軍の首が飛んだ。血が吹き出し、死体が倒れる真ん中で金髪の男は姿を消した。
「流石は勇者様…強すぎだろ…」
「彼は勇者候補だ!勇者じゃない!!ここは任せるぞ!急いで向かおう!」
「おう!」
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「その後何があった?」
「…幹部見習いが。…」
「ミストさん!!大丈夫です!話はもう!!ガードさんの昔話はここまでです!気分が良い様には見えません…」
「悪いな…ふぅ。…いや語る。」
「ガードさん!」
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〜〜北東部〜〜
北部から離れ、息が詰まるほど走った。死体の山が増え続け、俺とキリスの肌は底し得ぬ殺意を味わった。
男がいた
仲間の死体の上でただひたすらに笑う男がいた
「ん?んん??ん〜〜違うね。違うよね〜?」
「よくもこれだけの同期を?!」
「キリス!」
「分かってる!!」
乱れる息を瞬時に治し、キリスは男をバリアの中に閉じ込める。俺は剣を両手で握り、半円を描く様に剣を振るった。
「「共闘攻撃!!」」
俺達の判断は間違いなく、最速だった。バリアに閉じ込め、逃亡と攻撃を防ぎ、俺の振るう剣は最高速度と回転、怒りで威力を増した。…それでも
「…なんだ?!」
「避けんなよw」
一瞬の出来事。その一瞬を俺は数秒にも感じた。赤黒く光ナイフの様な短剣は三日月の斬撃を飛ばす。スローモーションに見える斬撃を避け、時間の感覚が元通りになり、俺の背後にいたキリスの胴体は真っ二つに裂けた。
「?!」
「よそ見。余裕だねぇ」
「あ…」
バリアが消え、親友が死ぬ。一瞬でも隙を見せたらそれは、
「[遠斬]」
命取りになる。
「ん?」
「…あれ?」
何だ?
「[遠斬]」
再び時間がスローモーションになり、俺は急いで攻撃を避ける。放たれた斬撃は空を裂き、空に消えた。
「クソ…リセットだ」
「はぁ…はぁ…」
(間違いなく…さっき俺は死んだ。何だ?何が起き…)
「勇者が来たんだろ」
「?!」
「緑髪の女だ。アイツは命を魂より大切だと思ってる」
「何の話だ…」
「良かったなお前。生きて帰れるぞ。」
「だから…何の」
突如透明の斬撃が顔に触れ、口から上が吹き飛んだ。
「?!」
「何回死にたい?」
俺は震える右手で顔を撫でる。傷は無い。回復?再生?そんな次元のことじゃ無い。勇者の行動範囲の中で、死はただの停止に過ぎなかった。
「156回」
慣れるたび、痛みが鮮明に感じ始める。
「658」
「ぐぁあ?!?!」
筋肉の繋ぎ目が千切れ、戻り、ナイフを頭に刺され、戻り、
「1000」
黄色に光る三日月の斬撃が俺の心と精神と命を弄ぶ。
「後…何回死にたい?」
「おrは。いつ終わる?」
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「…なんども。なんども。俺は死んだ。2000を超えた頃、飽きたのか、勇者が来る事を恐れたのか。奴は消えた。」
「……」
「今でも死にたいと思う?」
「ミストさん!!」
「んな訳ねぇだろ?馬鹿野郎!!死にたいなんて、あの日以来考えた事はない。それでも他の奴らは…"死なないから戦ってた"。」
「…」
「正確には死ぬんだ。でも勇者がいれば死は死じゃ無くなる。彼らは命を軽く見てる。はぁ…そこがどーにも…合わなかった。…不死身を認識出来たとしても、自ら痛みに飛び込む様な真似はしない。死なないから死ににいくのはおかしい。」
「だから…イカれた連中。なるほどね」
「だがその連中が、俺達を、世界を守ってる。そこは尊敬してる。ただ…またあそこに戻るのは…」
「襲撃だぁ!!!!!!!!!!!」
「あ?」
突如、酒場全体に響き渡る声。その後起こる"サード村襲撃事件"ヴァート、アイス、ホープラスの3人の他に[紫ローブ]を足止めした一人の男が王国の病室で目を覚ます。
仲間を失い。
トラウマと再戦し、
傷を負ったバンダナの男は…再び。勇者と出会う。
「…」
「また会ったね。ガードさん。」
「…勇者候補か」
「はい。ライトと申します。…この度。我々の判断が遅かった事、市民を守ってくれた事。感謝と謝罪をしに参りました。」
「…そんなもん要らねえよ」
「…」
「何が感謝だ。何が謝罪だ。守れなかったのは俺で、守ってくれたのはお前だ。」
「ですが…」
「俺は!!……いや…違うな。違うんだ。悪い。悪かった。命を救われて、こんな態度を取ることは可笑しい…」
「…私は今、次期勇者候補を集めています。彼らはとても面白く、可愛らしく、勇敢です。ガードさん。もし良ければ…貴方も」
「駄目だ。」
「…そうですか」
「悪い。俺は戻れない…過去を…乗り越えられない」
「…それでも貴方は。勇敢だと、私は思いますよ?…失礼させて頂きます。貴方が立ち上がり続けるまで、お会い出来る事でしょう。…ですが私はガードさんの事を忘れません。」
「…」
「我々の対応が遅かった事。申し訳ありません。その間。勇敢に戦ってくれていた事。心より感謝を。」
ライトは深く頭を下げ、その場から立ち去った。ガードはため息を吐き、布団に顔を隠し、涙を流す。
「アルケート…ミスト…」
「キリス…」
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