表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/72

第56話 その腹黒、どこまでが演技なんですか?

 

 競技を終えたウェルシェはレーキ達に守られがら選手控え室へと続く通路を進んでいた。


 ふと、行く手にウェルシェは人の気配を感じ、目を凝らして前方を見つめる。そこには優し気な微笑みを湛える金髪の美少年が待ち受けていた。



「ウェルシェ!」

「エーリック様!」


 ウェルシェはタタタッと小走りにエーリックへと近寄った。


「一回戦突破おめでとう」

「ありがとうございます」


 嬉しそうなウェルシェの笑顔にエーリックも自然と目尻が下がる。


「まさかパーフェクトを出すなんて思わなかったよ」

「くすくす、私も思っていませんでしたわ」


 朗らかに笑いあう二人。


「あれは本当に出来すぎでしたわ」

「いや、ウェルシェの実力だよ」


 自分は全ての競技で予選落ちしていながら、婚約者の好成績にもエーリックは卑屈な様子を見せない。


「本当はもっと間近で応援したかったけど……」

「仕方ありませんわ」


 心からウェルシェの勝利を祝ってくれるエーリック。やっぱり優秀な婚約者を疎ましく感じているオーウェンよりずっと器が大きいとウェルシェは思う。


「競技に出場するだけで私達は護衛に負担をかけますもの」

「そうだね。せめて応援だけは貴賓席で大人しくしていないとね」


 エーリックはチラッと背後を見た。


 その視線の先には学園の生徒ではないスレインとセルランがいた。


 さすがに外部の者が出入りする剣魔祭ではエーリックも護衛は必要なようで、日頃は学園に連れてこない二人を供としていた。あまり会場をウロウロするのは二人の手を煩わせるとエーリックも理解している。


 続いてエーリックはウェルシェの両脇に立つレーキとジョウジを一瞥した。


「ウェルシェの方は大丈夫かい?」


 エーリックがストーカーについて尋ねているのだと察せられない程ウェルシェは鈍くない。


「ご心配をおかけして申し訳ございません」


 眉を落として詫びた。


「ですが、レーキ様とジョウジ様がこうして護衛してくださり、つけ回されている気配はなくなりましたの」

「それは……良かった」


 愁眉を開いたウェルシェの様子に、エーリックは何とも複雑な表情となった。


「エーリック様?」

「ごめん、ウェルシェ」


 婚約者の微妙な変化にウェルシェが不思議そうに首を傾げると、エーリックは顔を歪めて謝罪した。


「君の安全が優先されるべきなのに、僕は自分の力で君を守れないのを悔しいって思ってる」


 エーリックは心情を吐露する。


「嫉妬なんてみっともないって分かってはいるんだ……でも……」

「いいえ、いいえ」


 忌避しながらも醜い感情を制御できずに、エーリックは胸が苦しくなった。だが、ウェルシェはそんなエーリックが好ましく思う。


「嫉妬はエーリック様が私を想ってくださっている裏返し、それを憎みながらも告白されたのはエーリック様の誠実さと勇気の現れ……」


 ウェルシェは俯くエーリックの両手を自分の手で包み込んだ。


「みっともないなんて事ありませんわ」

「ウェルシェ……」


 しばし二人の間に沈黙が緩やかに流れる。

 それは寂しくも温かいとても優しい時間。


 微笑ましく見守る四人は、できれば二人の邪魔をしたくはなかった。しかし、ウェルシェは二回戦を控えている。


「こほん、こほん」


 レーキがわざとらしく咳払いした。


「そろそろ時間も迫っておりますので、ここら辺で……」


 控え室へ戻らねばウェルシェの休息する時間がなくなる。


「ごめん、これ以上は次の試合に影響するね」


 取り合っていた手をエーリックは名残り惜しそうに離した。


「本当は傍で応援したかったんだけど……仕方がないね」

「エーリック様が応援してくださっているだけで心強いですわ」


 エーリックは自分には過ぎた婚約者と会うたびに、今のままでは彼女の隣に並び立てないと痛感する。


 そう、ウェルシェはいつだってエーリックに欲しい言葉をくれるのだ。


「私も観戦は貴賓席へ参りますので、その時はずっとお傍にいますわ」


 ウェルシェはにっこり笑ってエーリックの心を掴んで離さないのだった……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下のリンクは前作短編になります

「そのザマァ、本当に必要ですか?」

時系列的には短編は本作の未来のお話です
― 新着の感想 ―
[一言] シナリオに沿っているのか、自分で考えて行動しているのか、それがピンク髪との違いよな(意味深
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ