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87.決断する権利と時間を上げる

「ローゼンミュラー王太女殿下は、犯人をご存知なのですね」


 確認するような響きで、エレオノールが呟く。その声は微かに震えていた。気持ちは分かるわ。愚かな家族を持つと苦労するわよね。


「ええ。私の連れのうち二人も精霊魔法の使い手なの。ハイエルフのリュシアン、精霊の剣の乙女エルフリーデ」


 紹介するように二人を示す。精霊魔法が使えるという表現なら、私も含まれるでしょう。でも使い手と言葉を選ぶことで、私を除外することが可能よ。別に知られても実害はないけれど、不要な情報を他国でばら撒く必要もないわ。


「精霊って、好きな相手のために諜報活動もするし、戦う力も貸してくれる存在なの」


 先ほど侍女が毒を入れたと示したように、精霊は好意的な相手を守ろうとする。危害を加えられぬために悪戯をしたり、場合によっては相手を排除することもあった。


「この国は精霊信仰でしたわね。ならば精霊の加護を受けるハイエルフは、生き神も同然。予言だけの巫女より、大切になさった方がいいわ」


 迂闊に動けば、精霊を敵に回す。しっかり釘を刺した。これで護衛の騎士も簡単に動けない。国王は床に崩れ落ち、だらしなく尻尾も首も項垂れた。がっかりしたのでしょうけれど、もっと落ち込む状況が待っている。


「当事者がいないのに断罪するのは失礼よね。エレオノール王女殿下、弟君のジェラルド王太子殿下をお呼びして」


「……っ、はい」


 この国にいる間は、王女として扱うわ。でもね、他国の王族であっても、シュトルンツの王族に手を出せば……タダでは済まなくてよ? 当然でしょう。命を狙うなら、己の命を懸けるべきだもの。その覚悟無くして、王族は務まらないわ。


 戦争を起こせば、己の国の民が傷つく。たとえ勝ち戦でも、無傷で他国を落とすことは無理だわ。無血開城であったとしても、その前に小競り合いくらいはあるものよ。


 王族にとって「戦争」しか手段がない状態に持ち込まれれば、その時点で負けなの。そのための外交であり、政なのだから。崇められ、贅沢な生活を許される対価が、民を死なせず守り切ること。税を使って民の生活を豊かにすること。彼らが平和に暮らせるよう尽すこと。


 騎士の一人にエレオノールが命じた。王太子ジェラルドをこの場に呼ぶように、と。謹慎状態の彼は自室にいるでしょう。すぐにもこの場に現れるわ。だから交渉は迅速に確実に行う必要がある。


「エレオノール王女殿下、私と取引をしない?」


「取引、でございますか」


「ええ。あなたは弟を守りたいのでしょう? ならば私に忠誠を誓って。そうしたら……きっと満足できる結果をあげられるわ。私、臣下には厚遇を約束しているの」


 事実上、選択肢はなかった。それでも人は選択を委ねられれば、自分で選んだのだからと結果に納得するわ。


 これから弟ジェラルドの罪は暴かれ、場合によっては戦端を開くキッカケになる。勝っても負けても王座は遠ざかるでしょう。まあ、カールお兄様が率いるシュトルンツ軍は、獣人相手でも一歩も引かない強さがあるけど。


 決断する権利と時間を上げる。これは、私が手に入れるもふもふに対する敬意と親愛の情よ。あなたなら、無駄にしないと信じているわ。エレオノール・ラングロワ――。

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