表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/484

76.予言の内容なら知ってるわ

 ざわついたのは獣人のみ。他国の貴賓は当然と受け止めた。どのような立場の令嬢であれ、礼儀作法を学んでいない者を表に出したのだ。その結果働いた無礼の代償は、その者の地位や価値に応じて支払われるべきだった。


 この大陸で最強最大の国家であるシュトルンツの王太女である私が、指差すなどの無礼を働いた小娘に死罪を要求するのは当然だ。ミモザ国はそれに応じる必要があった。拒むなら、それはシュトルンツ国と敵対する未来を選ぶに等しい。


「も、申し訳ない。ローゼンミュラー王太女殿下を侮る気はないのだ。異世界から来たばかり故、寛大な処置を願えないだろうか」


 国の柱である王が頭を下げ謝罪する。こちらが大国の跡取りとはいえ、破格の対応だった。それでも、私は譲らない。畳んだ扇を開いて顔を半分覆った。


「あら。来たばかり? 半年もあって、言葉遣いひとつ教えられなかったのですか? 部屋で待つように指示しても従えないなら、今後いくら教育しても何も覚えないでしょうね。そもそも、出入り禁止の巫女が宴にいたのは、貴国の王太子殿下のエスコートではありませんか」


 王太子がエスコートするなら、公式扱いと同じ。何も知らずにここで断罪を始めたのは、愚かな傀儡だとしても。私なら事前調査を怠らないわ。国やお母様に頭を下げさせるような愚行もしない。きっぱり言い切って微笑んだ。


「それ以前の問題です。この宴は、私にエスコートの名誉を与えてくださったローゼンミュラー王太女殿下の歓待が目的だったはず。にも関わらず、主賓の王太女殿下より遅れて顔を出した王太子殿下は、さきほど愛しい我が姫の言葉を遮って私的な断罪を始められた。これはシュトルンツ国への宣戦布告と置き換えられます」


 テオドールの表現がおかしいわ。私に関する呼称が、徐々に親しくなっていくのだけど?


 宣戦布告という物騒な単語に、ざわついていた獣人貴族はぴたりと口を噤んだ。代わりに、騒がしくなったのは他国の大使や招待客である。国へ情報を持ち帰るため、互いの知る情報を交換し始めた。


 先ほどの騒動で、窓際や扉近くに避難していた彼らの情報交換はスムーズで、短時間で大量に飛び交う。


「宣戦布告ならば、大使として本国に報告する必要がございますなぁ」


 確認ではなく報告、王太女への無礼は大使から見ても目に余ると言い切った。アーベルライン大使が、一際大きな声で注目を集める。シュトルンツが本気でミモザ国を攻めたら、おそらく半年は保たない。そんな皮算用が聞こえた。


「早く下がらせなさい! 塔へ閉じ込め、外部との接触は禁止します」


 頼りにならない父、倒れて逃げた母。両親の代わりに采配を振るうのは、愛らしい第一王女エレオノールだった。騎士に引き摺られて騒ぎながら出ていく二人を見送り、エレオノールは崩れるように膝を突いた。


「お詫びのしようがございません。図々しいことは承知しております。どうか私の命で収めていただけませんでしょうか」


「それほど巫女は大事なの?」


「……予言にあった巫女ですので」


 曖昧な表現に留めたのは、複雑な心境ゆえだろう。王女として国を守りたい、大切な弟の助命を願いたい。ここに嘘はない。だが同時に、あの巫女なら処刑されても構わないと考える本音があった。隠しきれないところが、未熟で可愛いのよ。


「予言の内容、私が知っていると告げたなら?」


 まずはカードを一枚、さほど重要ではないけれど切っておきましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ