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45.私の成果をお祖父様に紹介したいの

 さすがに出歩きすぎたわ。跡取り教育はほぼ終了だけど、私は国の最重要人物に分類される。あちこちの国に出向いて、騒動に巻き込まれる危険があった。宰相達が半泣きで説得しに日参するので、苦笑いして頷く。


「分かったわ。しばらく出かける予定はないの。安心して。エルフリーデを私の専属護衛にして、いずれ近衛騎士にするから手配しなくちゃね」


「それはこちらで手配いたします」


 宰相バルシュミューデ侯爵は、快く手続きを引き受けてくれた。その満面の笑みは、私が国外へ出ないと約束したからね。お母様が処理していた書類の一部は、すでに私に権限が移譲された。留守が多いと未処理が溜まって大変だと思うわ。


「じぃ、いつもありがとう。それと外出が多くてごめんなさいね」


「いえいえ。王太女殿下がお忙しいのは承知しております。王位を継承する前に他国へお出掛けになり、見識を広めるのは素晴らしいこと。それを咎めるのは、老婆心ですな」


 ただ心配なのだと素直に告げられ、ジンと来てしまう。バルシュミューデ侯爵は私の祖父に当たる。お父様の実父で、血の繋がる祖父だった。小さな頃から「じぃ」と呼んで親しんだ彼も、私の即位が終われば隠居すると宣言している。


 高齢だから休んで欲しいけれど、出来たらずっと側にいてもらいたい。相反する思いを飲み込み、私は手元の書類に署名押印した。


 国境付近の小競り合いを収めた協定書ね。他国との境界線で揉めたんだけど、こちらの言い分がほぼ通った。実際のところ、我が国が無茶を言ったわけじゃないの。向こうの国が森を開拓して畑を広げるうちに、気づいたら国境を越えていただけ。謝ってくれたら、すぐ終わったんだけどね。


 開拓した畑を諦めきれず、向こう側が意味不明な主張を繰り返した挙句、数百年前の領地境界線の主張を始めたので応戦したまで。口喧嘩に近い戦いだけど、直接武力に訴える結果にならなくて良かったわ。


「視察の要請が出てるわね。じぃ、日程の調整は出来そう?」


「そうですな。来週であれば予定を挟めると思います」


「ふふっ、ありがとう。じゃあ、一緒にお茶を飲まない? 私の新しい側近達を紹介するわ」


 現時点で、まだ側近としてお披露目はしていない。友人という名目で滞在の手配をしたけれど、紹介するなら側近候補としてだわ。有能な人達ばかりだもの。


「これは光栄なことです。ぜひエスコートもお任せいただければ幸いですが」


 久しぶりに、そんな響きが混じったお祖父様の言葉に私は大きく頷いた。満面の笑みで腕を絡め、親しく寄り添って歩く。テオドールが一足先に向かった温室の扉の前、ゆっくりと足を止めた。


「お父様もお呼びしてるのよ」


「それは心遣いに感謝いたします、ローゼンミュラー王太女殿下」


「この温室に入ったら、昔みたいにヒルトと呼んで。お祖父様」


 承知したと微笑む優しい祖父と共に、私は温室の心地よい空間へ足を踏み入れる。広い温室は珍しい花々が植えられ、鮮やかな蝶が舞う空間だった。ふんだんに使われた水晶の天井や壁が、きらきらと光を弾く。


 中央に用意されたテーブルセットで待つ友人達に手を振った。こうしてみると、美形ばかりで目の保養ね。楽しいお茶会の始まりに、胸を高鳴らせた。

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