楽しい時間は終わって夢の中
その後も、あれこれと過去の話をした。人は年を取ると、過去ばかり振り返るらしいわ。前世の私が読んだ本には、そう書かれていた。でも、未来を諦めた意味じゃないの。生きた時間の分だけ、過去がたくさん積み重なっている。
ともに過ごした人達と話せば、どうしたって共通の話題は過去だわ。昔話なんてと思うのは若いうちだけ。ある程度年齢を重ねたら、今度は過去を懐かしむものよ。
「リュシアンの聖杯って、何か出てきたりしないの?」
「何かって、何?」
「聖水とか、新しい精霊とか……かな」
「ねぇよ!」
そんな馬鹿話をして、どうして聖杯に精霊が寄って来るのか……意見を出し合って、結局答えが見つからない。クリスティーネは赤ワイン事件が気になっていたようで、上手に被ったコツを知りたがった。教えてあげてもいいけれど、代わりにローヴァイン男爵を落としたコツを教えてと返してあげたわ。
弟を置いてきたエレオノールだけ、先に帰る。見送って、夕食会に突入した。前世の話も少し出たけれど、男性陣は知らないから早めに切り上げて。うっかり口に出したお菓子については、テオドールが根掘り葉掘り尋ねてきた。
「ヒルト様のお好きな菓子であれば、作れるようになりたいではありませんか」
笑顔でそんなことを言われ、今度作る約束をした。なんだか照れてしまうわ。揶揄うリュシアンは、エルフリーデの悪戯で撃沈。精霊達も協力してくれたの? それは、ある意味すごいわ。
子供の話が出たり、夫婦の小さな日常の失敗を聞いたり。時間はいくらあっても足りない。それでも夕食後は、あっさりと解散した。
「また来ますわ」
「すぐに呼んでくれ」
もう役職もないのだから、時間も自由だ。それなのに、なかなか全員の予定が合わなかった。事前に日付を決めて、年に何回か会う日を作ったらどうかしら? 提案に賛成多数で、エレオノールにも連絡することが決まった。
来れる人だけ集まってもいいのだけれど。手を振って見送る。精霊とリュシアンの魔法で、皆が転移で消えた。突然音が消えたように静まった部屋で、私はかちゃんとカトラリーを落とす。もう限界だった。
「お疲れでしょう、抱いて移動します」
そう告げるテオドールを拒む余力もなかった。大人しく抱き上げられ、ベッドへ移動する。こんなに体力が落ちていたなんて。今後を考えて、運動しないとダメね。そう笑ったら、テオドールが「お手伝いいたします」と執事の口調で答えた。
部屋に戻るなりドレスを脱いで、抱き上げるテオドールの胸元に顔を埋める。こうしていると安心できるわ。眠気に負けて欠伸をして、下ろされたベッドの冷たさに身を竦めた。
「温めさせてください」
「そうね、責任を取ってもらうわ」
ベッドが冷たかった責任を取って、私の抱き枕になるの。命じたら嬉しそうに頷く。次の集まりは、お茶じゃなくて昼食会にしようかしらね。皆で食材を持ち寄るの。闇鍋みたいで楽しそうでしょ? 話しながら、いつの間にか眠りに負けて目を閉じる。
触れたテオドールの温もりをしっかりと掴んで、私は幸せな眠りに身を委ねた。
終わり
*********************
お付き合頂き、ありがとうございました。年を取って、引退してからのお茶会でした_( _*´ ꒳ `*)_それぞれに変化があって、懐かしい顔ぶれで賑やかに過ごす。
コミックの三巻で過去に戻れます。買ってください(/ω\)




