表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
483/484

だから言いたくなかったのよ

 なんとか全員の承諾を得て、私は飲み干した紅茶のカップを置いた。全員の視線が集中する中、重い口を開く。


「あれは……寿命を削るのよ。魔力だけでは発動しない。魔王に一矢報いようとしたエルフの一人が、魔力と寿命を懸けて聖杯を使うシーンがあったの。精霊は聖杯に集うけれど、同時に精霊の剣も好きよ。代用として使えるんじゃないかしら? と考えて……」


 あの時は手元に剣しかなかった。もし聖杯があれば、そちらで試したはず。形としては攻撃先がわかりやすいから、剣が扱いやすかったわ。そんな感想も続け、しんと静まった状況に気づいた。


「寿命、でございますか」


 この世が終わるのでは? と心配になるほど暗い顔と声でテオドールが呻く。あの場に間に合わなかった自分を呪う言葉が続き、慌てて止めさせた。


「待って、テオ。だから二度と使わなかったでしょう? それにエルフリーデを傷つけられて怒っていた精霊がかなり譲歩してくれて、私の寿命はさほど減っていないの。そうね、一年くらいよ」


 具体的に告げれば「なーんだ」と安心してもらえると思ったのに、さらに落ち込んだ人が出た。


「私のせいで、ブリュンヒルト様の寿命が一年も……」


「俺が同行するべきだったな。今からでも代われないだろうか」


 エルフリーデが責任を感じないよう、言わなかったのに。それにカールお兄様も、寿命が減ったらエルフリーデが悲しむでしょう。


「私が同じ立場なら、迷ってしまったでしょう。尊敬します。でも……ミモザ国が申し訳ありません」


 ミモザ国元王女として、エレオノールはしょんぼりと肩を落とした。


「うーん、そんな番外編があったなんて。侮れないわ。私は読んでいなかったけれど、知っていても躊躇(ためら)うわ」


「その時点で一年の寿命か、それ以上かわからなかったわけですし。かなり危険な賭けだったと思います」


 クリスティーネの呟きに、ラウレンツが止めを刺しに来た。やめて、それ以上言わないで。私の残りの寿命が縮まりそうなのよ。寒気がするのは気のせいじゃなくて、隣のテオドールのせいだと思う。


「エルフが使った禁忌の術ならば、最悪……その場で()()()の命が消えていた可能性もあったのでしょうか」


 昔の呼び方はやめて! お通夜みたいになってしまったお茶会で、私は一人であたふたと言い訳を始めた。


「でもね、一年で済んだじゃない。それに一歩間違えたら全滅していたわけで、生き残るためには多少の犠牲は仕方ない……いえ、わりと軽い犠牲だったわ。そうでしょう?」


 誰も同意してくれないので、ポットに残ったお茶を注いで薔薇の砂糖を二つ沈める。もう! だから言いたくなかったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ