表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
481/484

懐かしい話題とお土産に舌鼓

「私だけ何も用意していなかったわ」


 誰か教えてくれてもよかったのに。そんな口ぶりでぼやくと、カールお兄様がからりと明るい笑い声を立てた。


「用意してないのは俺も同じだ」


「カールお兄様が用意してくれたことあって? 過去に一度もないんじゃないかしら」


「え? 一度くらいはあるだろ……ほら……えっと」


 聞いていた皆が、「ああ、なるほど」みたいな顔でくすくすと笑う。嫌な雰囲気ではなくて、暖かく心地よい感じだった。こうして全員が揃うのは、どのくらいぶり? 第一線を退いてから、少しずつ仕事を手放した。それと一緒に、私達の距離も開いてしまったわ。


 顔を合わせれば、まるで空白の時間がなかったように帰れる。懐かしい時間と関係は、少しも失われていなくて安心した。


「そういや、カールって呪われたんだろ。調べてみたかったな」


 精霊に関する術は熟知するリュシアンも、人族が使う魔術や呪いについては門外漢(もんがいかん)だ。素人同然の発言に、カールお兄様はちらりと隣のエルフリーデを見た。しっかり尻に敷かれてきたみたいね。


「いまだに、どうして解呪されたのか不思議です」


 珍しくテオドールが自ら会話に入っていく。今日は執事ではなく、夫の立場をお願いしたから? かつての美貌に老いが窺えるけれど、やっぱり綺麗だわ。この顔、本当に好きなの。前世の画面越しでは絶対に知り得なかった、彼と年老いていく時間は私の財産よ。


「エルフリーデ、説明できる?」


 私が促すと、うーんと唸ったエルフリーデが首を傾げる。昔と同じ、癖になっている仕草で唇の下に人差し指を当てた。柔らかなブラウンの髪が、さらりと揺れる。結っているのに、一部を流す髪型は彼女のお気に入りみたいね。


 待つ間にお茶菓子を一つ摘まんだ。エルフリーデの焼いた菓子は、さくっとした歯ごたえで甘すぎない。二種類あり、もう片方は上にカラメルを塗ってあった。甘党とそれ以外、両方に配慮するところがエルフリーデらしいわ。


 リュシアンが出したハーブを浮かべたお茶に口をつける。もう昔のように毒見は必要ない。立場はもちろん、集まったこのメンバーで心配は不要だった。もし何かあって死んでも、後悔しないと言い切れるもの。


 すっきりした味わいのお茶は、いつものテオドールの温度。冷めていないのに、火傷するほど熱くない。絶妙の加減だった。美味しく頂く間に、エルフリーデは考えが纏まったらしい。


「まず、塩が重要なんです」


 語り出した彼女の言葉に、前世の知識が散りばめられている。神社の娘だったと知ったのは、あの呪いの時だったわ。確か白ワインと大麦で代用したのよね? 異世界でも神様が手伝ってくれたのか、それとも思い込みで祓ってしまったか。


 真剣に説明を聞くリュシアンをよそに、クリスティーネは肩を揺らして笑い続けている。以前も、この話を聞いて大笑いしたわね。気持ちが若返るというより、時間が昔に巻き戻った感覚で口を挟んだ。


「あの後、日本酒ができたの。今なら白ワインで代用しなくて済むわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ