準備してないのは私だけかしら?
久しぶりの主君からの呼び出し、それぞれに着飾って集まる。エルフリーデは柔らかな緑のドレスを纏い、瞳の色に合わせた形ね。カールお兄様も濃いグレーの上下にミントのスカーフを飾っている。よく見たら、エルフリーデの装飾品は艶消しの銀だった。見事に調和している。
リュシアンはハイエルフの民族衣装。深い青をベースに、からし色のベルト……色合わせがまるで着物だわ。懐かしい。弟を置いてきたエレオノールは柔らかなピンク色、でも若い頃の明るい色より少し紫に近いかしら? ラベンダーを明るくしたような色合いだった。
クリスティーネは黒と赤、黒髪が触れる上半身は真紅で、スカート部分も赤なのだけれど……上から黒いレースで覆っている。まるで紗の着物のようで、レースの花模様が鮮やかに浮き上がった。隣に立つ夫のラウレンツも、黒い上下に赤いシャツ……不思議なくらい似合うわね。難しい色合わせなのに。
夫婦はそれぞれに対になる色を纏って現れたけれど、その点は私も同じだった。顔が華やかに見えるよう、肌映りのよい青を選ぶ。リュシアンのように紺に近い色合いではなく、女王になる前……王太女だった頃によく好んだ青よ。
目の覚めるようなマリンブルーのドレスは、オフホワイトの薄絹が重ねてある。だから目に入る色は薄い青になるの。ただ薄絹は何か所もカットが入っているから、動くと下のマリンブルーが覗く。
この形のドレスは、私が女王になって何度か着用している。今では珍しくないけれど、構想はエルフリーデと出会った時のドレスなのよ。ツヴァンツィガー家の女性は戦える。そのためドレスの中に剣を隠し、スリットの入ったドレスを仕立てた。もちろん足捌きが見事なので、普段はバレない。
あのスリットに憧れがあったの。でも女王が生足を見せるのは問題があるから、生地を二重にして上の生地だけスリットを入れた。今もお気に入りで、何着か手元に残しているわ。
「お久しぶりですわ、ブリュンヒルト様」
「ヒルトも元気そうでよかった」
エルフリーデとカールお兄様の挨拶を受け、微笑みを返す。腕を組んだテオドールは、青いシャツにオフホワイトとライトグレーを組み合わせた上下で纏めていた。私と対にしたいと譲らなくて……でも皆も揃えてくるなんてね。
「ご無沙汰しておりました」
エレオノールは優雅に一礼する。獣人もエルフも、あまり年を取らないのは狡いわ。寿命が違うと言えばそうだけれど、若い姿が羨ましくなるの。そんな話をしていたら、クリスティーネも加わった。
ラウレンツは妻を見つめて、よそ見をしない。出会った頃は逃げ回っていたじゃないの。こんなに妻を溺愛するタイプとは予想外ね。そしてテオドールと挨拶して、妻自慢が始まるのも……どうかと思うわ。
「まずは座ってお茶をどうぞ」
いつも事件が起きて集まっていたので、何もないとどうしたらいいか。私も手探りなのよ。着座を勧め、当たり前のようにテオドールがお茶を用意し始める。リュシアンが「これ使える?」とハーブを取り出し、お菓子を焼いてきたとエルフリーデが箱を置く。クリスティーネも薔薇の形の砂糖を並べた。
皆、手際がいいのね。何も準備していないの、私だけじゃないかしら?
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11/7,コミックス三巻が発売となります! どうぞお手に取って、楽しんでください。エレオノールのウサ耳が素敵です(n*´ω`*n)




