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さあ、お茶会の始まりよ

 娘であるヴィンフリーゼにシュトルンツ女王の座を譲ってから、少しずつ手を引いた。仕事や外交など、私の息がかかった子飼いが占めていた席が、ヴィンフリーゼの側近へ受け継がれていく。しばらくは並走してサポートしていた彼や彼女らも、今は相談を受ける程度だった。


 年老いたら、自然と中心から外れる。当たり前のことで、寂しいと思う必要もなかった。逆にヴィンフリーゼの治世が安定しないほうが怖い。特別なカリスマ性も才能もないけれど、二代続けて改革した国を安定させるには、あの子のほうが向いているの。


 お母様の改革があり、私の大陸統一があった。本当はお母様の後、私は落ち着いて維持する方向へ向かえばよかったけれど……前世の記憶があるから出来なかった。国境を接する国々が、騒動を起こすと知っていたんだもの。


 巻き込まれて国が亡びるのも、愚か者のせいで優秀な悪役令嬢達が不幸になるのも、許せなかった。物語を知るからこそ、改ざんしたくない。でも、ここは現実だった。物語の中であっても、彼女達を助ける手段があれば使うわ。それが私の矜持ですもの。


 私自身は前世の知識しかない。特別な能力を持つチートな悪役令嬢と悪役エルフを使って、纏めるだけの存在だった。扇で言う要の部分ね。留め金でしかなく、風を送る機能も顔を隠す大きさもない。


「ヒルト様、皆様が到着なさいました」


 相変わらず、人外かと思うほどの感知能力ね。ちらりと天井を見ても、影の姿はない。当たり前だけれど、どうやってやり取りしているのやら。この辺は突き詰めて探ろうと思わないけれど、時々気になるのよ。


「では、お茶会を楽しむとしましょうか」


 立ち上がり、すっと手を差し伸べる。執事の立ち位置から、表情も態度も夫へと変えたテオドールが受けた。引き寄せられて、腕を絡ませる。ぴたりと寄り添う位置、ふくらみを押さえたスカートの内側までテオドールが踏み入った。


 組んだ右腕ではなく、左手に扇を持つ。護身用の鉄扇ではなく、柔らかな絹を張った飾りだけの扇を広げた。顔の前でひらひらと揺らし、小首を傾げる。


「お綺麗です、いつもながら見惚れてしまいました」


「あら、テオのように顔のいい男から褒められると嬉しいわ」


「他の男が褒めても、お許しにならないでください」


 他の男に触れるなと嫉妬を露わにする可愛い夫に微笑む。どうかしら? そんな態度で足を踏み出した。リュシアンが迎えに行ったのは六名、もしかしたら魔王陛下が乱入するかも。いえ、あの人はプライドが高いから我慢するでしょうね。


 ふふっと笑いが漏れた。さあ、お茶会の始まりよ!

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