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24.身も蓋もない表現しないで

 シュトルンツ国の南側に、アルストロメリア聖国がある。エルフリーデのアリッサム王国が西側だったから、両方の国が国境を接している。日本で作られた小説やゲームが元になっているせいか、東西南北の関係や太陽と月も日本に準じていた。


 あれこれ変更すると、読者さんが混乱するものね。あと、作者さんも管理が大変だし。故に東から日が昇り、西に沈む。(地球では、真昼でも月は出てることがあるので)南は暖かくて北は寒いのが通例だった。転生者が混乱しないのはいいことよ。


 アルストロメリア聖国は、ファンタジー小説「聖杯物語」の舞台だった。ほぼ国内で物語が完結してしまうけれど、隣国はちらりと出てくる。でもって、またもや隣国はシュトルンツ国を示すのだ。周辺諸国から隣国呼ばわりされるけど、どの物語でも国名が出てこない。


 重要ポジションではないけど、必要なのかしらね。


 エルフに王族は存在せず、代わりにハイエルフと呼ばれる上位種族がいた。それがもう王侯貴族と置き換えられるわ。つまりハイエルフに生まれることが、エルフとして成功する秘訣なの。魔力量も格段に違うし、美しさも段違いだった。


 エルフの国に美しいハイエルフの少年が生まれる。精霊を扱う能力に関しては国一番の実力者で、一族を率いる長になることを切望された。生来の能力に自惚れることなく己を磨いた少年は、ある日、傷ついた青年を助けた。


 エルフ以外が入れない森で出会ったこともあり、二人はすぐに打ち解ける。美しい銀髪の少年と黒髪の青年は友情を育んだ。とても平和なスタートだ。ここから物語は急展開する。


 人族の国と魔族の住む領域の間に位置する聖国は、人族との間に友好を結んだ。国同士で留学生を交換することになり、人族の王子が派遣される。その王子がどうも、うちの脳筋兄のようなの。勇者である王子が少年から感じる魔族の気配に気づき探った。


 結果として、穏やかな友情を育む黒髪の青年が「魔王」であると明かしてしまう。友人を捨てるか、己の立場を放棄して逃げるか。苦悩した主人公は魔王を選び、精霊達の力の源である聖杯を魔王に渡してしまう。WEB版では、魔王に利用されて惨殺されるんだけどね。バッドエンド系は久々に読んだから、数日沈んだわ。


 書籍版では救済措置として、別ルートになっていた。それでも少年が一族から追放されてたわ。どっちも嫌ね。まあ惨殺シーンが酷すぎて、出版できるか心配になった編集さんも胃が痛かったでしょうけど。物語全体が繊細な雰囲気で、まるでレース編みのように美しく表現されているからこそ、そのシーンが目立ったのだと思う。


「つまり、「聖杯物語」は後味の悪いお話なんですね」


「身も蓋もない表現しないで」


 エルフリーデにざっくりと抉られ、ちょっと胸が苦しいんだから。推しはもちろん悲劇の主人公の銀髪美少年よ。12歳前後の外見だからショタっぽいけど、実年齢が300歳以上なのよ。合法ショタよ!


「合法ショタ……ブリュンヒルト様の守備範囲が広くて驚いております」


「にしても、この人族の王子がカールお兄様なのが、何とも……」


 分かります。そんな顔でエルフリーデも苦笑いした。勇者、と言えなくもない。筋肉をひけらかす人のいい王子様だが、国内での人気は高かった。人当たりはいいし、困っている人がいれば助ける。もちろん、王子様らしい金髪と青瞳の組み合わせや、整った顔立ちも人気に拍車をかけた。


 あの余分な筋肉を削ぎ落せば、剣の実力だって悪くないはずよ。あれ、絶対に筋肉が邪魔で動けないんだもの。白馬に乗った王子様が、びりぃと服を筋肉で破るのはNGシーンね。


「アリッサム王国の「精霊の剣の聖女」でお母様は魔女だったし、きっと私もどこかで悪役出演すると思うわ」


「逆に羨ましいですわ。主要登場人物になると、いろいろ余計な面倒ごとが多くて大変ですもの」


 エルフリーデの心底困った響きに、それもそうねと笑った。モブだから自由に動けているし、強制力も働かないのだから感謝しなくちゃ。


「お待たせいたしました、お嬢様」


「テオドール、お疲れ様。全部終わったかしら」


「はい」


 この短いやり取りに秘められた、黒い事件……エルフリーデに伝えるには早すぎるわね。休憩を終えた私達は再び馬車に乗り込み、エルフの国の芝生で覆われた街道へと踏み入った。

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