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21.テオドールは私の推しだったの

 残酷なのは、王族としての教育を受けたから? それとも元からの私の資質かしら。どちらかと言えば、後者のような気がした。


 執事テオドールに、アリッサム王国の国王一行を選別して処理する権限を与える。その結果を知ってるくせに、私自身は兄と街で祭りを楽しむのよ。素知らぬ顔で、清らかな手を装った。それが執政者として有能な証なら、王族や皇族はすべて唾棄すべき存在ね。


 自覚がないよりマシだけど。テオドールの嗜虐性はよく知ってる。あの子がまだ10歳前後で拾ったんだもの。前世の知識がある分だけ、私は精神的に大人だった。彼より年下でも、あれこれと采配できる能力や立場を持っている。彼を連れ帰ったのも、優秀だと知ってたからよ。


 人気小説を元に作られたBLゲーム「亡国の珠玉~愛するために失うもの~」は、あまりヒットしなかった。元の小説に忠実だったのだけれど、攻略対象の性癖が特殊過ぎたのでしょうね。オブラートに包んで柔らかく表現すればいいのに、ヤンデレ監禁ルートや凌辱ルートがごく普通に並ぶ。バッドエンドばかりで、ハッピーエンドはほとんどなかった。


 ムキになって逆ハーを目指した私は、意地で制覇したけど。そんな利用者ばかりじゃないわ。その物語で、元王族でありながら国を失い暗殺者として育てられたのがテオドール・ワイエルシュトラスだった。実は私の推しだったの。


 暗殺者設定なのに金髪、金瞳はないわよね。目立ちすぎて、夜の暗躍で発見されちゃうわ。まあ、小説やゲームの中なら構わないけど。そもそも暗殺者という設定は、元王子が悲惨な環境に置かれたというスパイスだもの。ハレムがある国の第43王子なんて、存在自体忘れられてたと思うわ。


 攻略対象として存在した彼は12歳で初めての仕事をこなす。そこから手を汚した自分を恥じて呪った。異世界転移した主人公が、そんなテオドールの傷ついた心を癒すの。出会いのシーンは、暗殺された男の死体を発見した主人公が、引き上げる途中のテオドールを見てしまう。逆光で顔はわからないけれど、光る金髪と金瞳は映えるでしょうね。


 実際にスチルを夢中になって眺めた挙句、スクリーンショットを撮ってスマホの壁紙にしたのは懐かしい記憶よ。あのスチルは神だったわ。本人がいる今でも、スチルが魔法で再現できるなら、命じて作らせたでしょうね。


 暗殺者として完成される直前、任務を受ける前に回収できて良かったわ。それでも身に付いた考え方や能力は殺伐としてるけど、隙のない身のこなしが執事長に評価された。私の専属執事として活躍する彼は、今では出世頭だもの。


 使えると判断した動きの騎士は、犯罪奴隷として回収できる。それ以外の男達は処分対象だった。もちろん国王本人もね。そこに助ける理由も慈悲もないわ。もし国外追放が成功していたら、ツヴァンツィガー家の末路は悲惨だった。側妃にするなんて案も却下よ。


 国王はぎりぎり生かした状態で維持するよう命じたから、どんな酷い目に遭っても死なせてもらえないでしょう。まだ交渉に使う手札として残しておきたいの。もちろん、最後は王太子以上に情けない死に方をしてもらうわ。


「ヒルト、あの飾りはどうだ? 師匠への土産にしよう」


「もう! 師匠や弟子はダメって言ったじゃない」


 エルフリーデに弟子入りする気の兄を窘めながら、私は美しい飾り物に目を細める。海辺で売っていた貝殻の風鈴に似てるわね。きっとエルフリーデも気にいるわ。


「お揃いで購入しましょうか」


 微笑んだ私に許可を得たと、カールお兄様はどれを買うか選び始めた。一緒に選びながら、私は次の国への手を考える。未来の側近と我が国の未来は、私の手腕にかかっていた。


 さあ、南のアルストロメリア聖国はどう出るかしら。

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