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12.我が国の法で裁くことにしましたのよ

 整えられた道は、馬車旅の大切な要素だ。だがアリッサム国は消耗と修繕の手間を惜しむために、石畳を採用していた。がたがたと左右に揺れて乗り心地が悪い上、馬の蹄鉄も傷む。中には足を痛める馬も出るので、こまめに馬を交換しながらの移動となった。


 エルフリーデと気兼ねなく話すため、普段は同乗する執事テオドールを別の馬車に乗せた。きっと拗ねてるわね。


「馬車なんて野蛮よね」


「分かりますわ。夢の国で見た時は、素敵だと憧れましたけど……これだと……っ!」


「気を付けてね。アリッサムを出るまではこの調子よ」


 私は同じ馬車に乗ったエルフリーデを気遣う。舌を噛んだみたいね。すでに往路で同じ目に遭った私は、その痛みが想像出来て顔を顰める。あれ、すごく痛いのよ。


「夢の国ってことは、同じ日本?」


「え!? 同じでしたか」


 痛みに涙を滲ませたエルフリーデと手を取り合ってはしゃぐ。時代が同じか確認するには、当時流行していた曲で判断すると早いのよ。あれこれと知っている曲名を出し合った結果、私の方がエルフリーデより3歳ほど年上だったことが判明。ほぼ同じ時期ね……大雑把に締め括り、年齢の話を打ち切った。


「私の知らない新曲があったから、羨ましいわ」


 死んだのは私が先で、次がエルフリーデ。なのに現状同じ年齢なのは、異世界転生の七不思議だと思うわ。七不思議なら、あと6つは謎が出てくる予定ね。


「ところで、馬車の後方が騒がしいようですけれど、何かトラブルでしょうか?」


 長旅の始まりでトラブルなんて、そんな表情で眉を寄せるエルフリーデに私は扇で口元を隠した。残酷なお話をするのに、笑みが浮かんでしまうのよ。隠すための淑女必須アイテムを活用し、穏やかな口調で続けた。


「昨夜の無作法者を、我が国の法で裁くことにしましたのよ」


 この世界にはまだ国際法の考え方がない。各国が決めた法が適用されるのが通例だが、一部例外があった。治外法権を謳う大使館や他国の貴族の館がそれに当たる。事前に土地を購入する際、治外法権になる旨の申告を行う。受理された土地で起きた事件は、その土地の所有者の国の法が適用された。


「大使館は治外法権、そこへ攻撃を仕掛けたらどうなるか……お判りでしょう? 我が国の罪人への処罰は他国より厳しいことで有名ですもの」


 聞き苦しい苦痛と悲鳴がずっと響いているが、徐々に声の数が減っている。それが答えだった。私は現実を彼女に隠す気はないわ。側近となった今、エルフリーデは私の大切な部下ですもの。隠し事なんて無粋よね。


「休憩を取りましょう」


 こんこんと扇の持ち手部分でノックすると、御者は心得た様子で馬車の速度を緩めた。すぐに停車し、馬の交換が行われる。御者によって用意された踏み台を使って下り、後方へ足を進めた。騎士服のエルフリーデが続く。


 最後尾を守る騎士達のさらに後ろ、砂埃に塗れた数十人の男達が繋がれていた。

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