第22話 はなむけと、旅立ち
第一章、この話で終わりです。
燃え尽きました…。
「正解を選んでも、力あるものに踏み躙られる、それがこの世の中なんじゃ。」
「そんな…。」
「そんな、じゃないぞい。
前にわしが言ったじゃろう。
お主は、この世を支配できる力がある、と。」
「は、はい。」
「言い換えれば、お主には、大事なもの全部を守れるだけの力があるんじゃ。
死んだ両親も故郷も、ティナも幼馴染も、これから出会う大事な人たちも、大事な場所も。
全部抱えて守る力がある。
頭の中の枠を外して、どうすればいいか答えを探すんじゃ。」
「枠…。」
「私は、守られるだけになるつもりはないわ。
私だってロックを守りたい。
それにおじいさんやこの村の人も。
でも、私には全部を守れる力はない…。」
「フォホホ。
ありがとの。
まあ、現実的に全員守るのはロックも無理じゃな。
ロックは、お主は大事な人が死なないように「守りたい」のか、それとも「幸せ」にしたいのか、どっちじゃ?」
「…。
「幸せ」にしたい…、です。
僕が守りたくても、ティナがそれを望んでいなければ、それは僕が「自分だけの幸せ」のためにやってること。
ヨムじいさんたちに対しても同じです。」
「じゃあお主の大事な人が、魔王によって不幸になってたらどうじゃ?」
「倒し、たいです。」
「ふむ。
お主はこれからたくさんの人と出会う。
大事な人も増えていくじゃろう。
その大事な人たちがどうやったら「幸せ」になるか。
それを考え続けるんじゃ。
その答えが「魔王を倒すこと」なら倒せばいい。
もしかしたら「魔王と共存すること」が幸せになるのなら、和解するための方法を探ればいい。
自分の目で見て、耳で聞いて、そして考えるんじゃ。
もちろん、自分の幸せもな。」
「大事な人の幸せ、自分の幸せ…。
ティナ、魔王がいることは君にとって幸せかい?不幸かい?」
「魔王がいたからあなたと出会えた。
そういう意味では、幸せと言えるかもしれない。
でも、大事なあなたの大切な人たちを奪ったのであれば、そして、これからもそんな犠牲者が増えるとしたら、一緒に倒したい。 」
「…。ありがとう。」
「ティナ、お主も自分の幸せ、大事な人の幸せが何か、考えるんじゃぞ。」
「ええ。わかったわ…。」
「それともう一つ。」
「はい。」
「本当の強さはスキルやレベルではない。」
「はい。
だから、自分たちの力でモンスターを倒して強くなることが大事なんですよね。」
「戦いの経験や連携、でもないんじゃ。
自分たちが倒せるレベルの敵だけを倒していても、レベルは上がる。
経験も連携も身につくじゃろう。
しかし、魔王と戦う時に、自分より強いからといって諦めるのかの?
これから先、自分より強い敵と戦わねばならん時は、必ず来る。」
「それで、今回の計画を?」
「うむ。
強敵や理不尽なことは、突然やってくる。
装備や準備を整えるから、明日来てね、とはいかん。」
「だから、カイルさんに強引に連れていくように頼んだんですね。」
「そうじゃ。
そして、一番大事なのは、何かわかるか?」
「…。
カイルさんに、「ディランを麻痺させろ」と言われた時、「無理です」、と言ったんです。レベルが10以上離れてるから。
でも、実際にはできた。
ダメと決めつけず、やってみることで、可能性が広がるんですね。
それに、怖がって立ち向かわなかったら、これから自分より強い敵と会った時、逃げることしかできなかったかもしれません。」
「答えは出てるようじゃの。
大事なのは、「挑戦」と「勇気」じゃ。
お主の目標がS級冒険者程度なら良いが、たくさんの大切なひとを幸せにする、そのために必要なら魔王すら倒す、というなら、絶対に必要なことじゃ。」
「はい。」
「そして、それもお主にとっての答えかはわからん。
枠を外して、考え続けるんじゃ。そして、行動することじゃの。」
「ヨムじいさんは行動力ありすぎですよ…。
今回は本当に辛かったんですから!」
「それについては、全責任はワシにある。
すまんかった…。
あと、カイルは大反対しとったんじゃ。
あやつにも悪いことをした…。
お主たちが許せないというのであれば、わしがどんな罰でも受けよう。
人殺しと変わらんからの…。」
「じゃあ僕からは、1つ。」
「なんじゃ…?」
「今回のことに、責任を感じないでください。
ヨムじいさんたちは、僕たちの「幸せ」を考えて、嫌な役を引き受けてくれたんですから。」
「ロック…。」
「私からも。」
「なんじゃ?ティナ…。」
「旅に出ても、たまには帰ってきてもいい?
ここは、もう私の故郷だから…。
「2人とも…。
すまん、本当にありがとう。
こんなところで良ければ、いつでも帰ってこい。
ティナの家も、あんな遠くじゃなく近くに移しとくわい。
お主らはこの村みんなの家族じゃから。」
「僕も、いいんですか?」
「当たり前じゃ!
これから先、どんなことがあってもワシらは2人の味方じゃ。
危ない時は命をかけて助ける。
辛いことがあっても、決して孤独じゃないぞ。
それだけは忘れないでくれ。」
「ありがとうございます…。」
「ありがとう…。」
「そういえば、ディランを倒すときカイルさんが、「はなむけだ」って言ってたんですけど、なんのことでしょう?」
「あやつは甘いからの…。
自分で倒さないと身にならないといいながら、せめてこれくらいは、と聞かなくてのう…。
ステータスを見てごらん。」
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名前:ロック
パーティ:ラフリンクス
Lv:5→15
HP:704→2747
MP:69→269
体力:66→262
力:61→260
素早さ:69→274
器用さ:60→259
魔力:67→262
スキル:
【噛み付き ★★】
【成長促進 ★★★★★】
【隠密 ★★★】
【麻痺針 ★★】
【スキルスナッチ ★★★★★ 】
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名前:ティナ
パーティ:ラフリンクス
Lv:9→13
HP:731→1026
MP:104→154
体力:77→106
力:63→92
素早さ:69→99
器用さ:78→117
魔力:106→156
スキル:
【 】
【慈愛の祈り ★★★】
【全能力50%UP ★★★★】
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「すっごく上がってるわ…。」
「…だから最後も、「麻痺させろ」って言ったのか…。
僕に経験値を与えるために…。」
「どれどれ。
お~!だいぶ強くなったのう!」
「カイルさんとも少し話せますか?」
「あやつは「そんなことしたら、どんな面を下げて会えばいいかわからん」と言っておったから、多分無理じゃと思うぞ。
まあ、少し時間を置いてから話すんじゃな。
2人とも、今日は疲れたじゃろ。
ゆっくり休みなされ。」
「実は…、もう限界です…。」
「わたしも…。」
「ティナもうちに泊まっていきなさい。
ロック、いやらしいことせんようにな!」
「な!?
し、しませんよ!」
「ふふ。」
「フォホホ…。」
それから数日後…。
「お世話になりました!」
「もう行ってしまうのか…。
寂しいのう。」
「もう。
おじいさん、それは言わない約束でしょ?」
「そうじゃがな…。」
出発することになったロックとティナを村人全員で見送っている。
「結局、カイルさんとは話せずじまいでした…。」
「カイルなら、見送りに来るはずじゃが…。」
「あ、きたわ!」
「おう。」
「どうも…。」
お互いなんと言っていいか分からない。
「まあ、なんだ。
すまなかったな、あんな目に合わせて。」
「それはヨムじいさんから話を聞きましたので。
ありがとうございました。」
「お詫びと言ってはなんだが、いや、お詫びじゃねえな。
お前らの旅立ちのはなむけだ。」
「これは!?」
「俺らで倒したディランの素材で作った武器と防具だ。」
「すごい…。いいんですか…?」
「ああ、もちろんだ。
じいさんにステータスも聞いたから、ちょうどいい強さになってるはずだぜ。」
この間、レベルアップ後のステータスを見た時、チェックしていたのだ。
「あの恐怖を乗り越えた証として持っていきな。
負けるんじゃねえぞ。
敵にも、自分にも。」
「「はい…!」」
「お前らはこの村の家族だ。
いつでも帰ってこい!」
「「はい!ありがとうございます!!」」
こうしてたくさんの家族に見送られ、2人は旅立っていった。
~第一章 完~
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
最後の数話は、ちょっと読むの辛かったですかね…。
第二章はやる気をチャージして、また書いていきます!
今後ともよろしくお願いいたします!




