第20話 死の舞台の幕引き
「章」を追加しました!
「ロック、ありがとう…。」
死ぬ前に出てきたのは、感謝の言葉。
ついこの前まで、生きることが苦痛だった。
世界を恨んでいた。
なのに、感謝しながら死んでいけるなんて。
(ロックに出会えて、よかった…。
さよなら…。)
「…<スキルスナッチ>!!!」
大好きな声が聞こえた。
その瞬間、目の前の怪物の動きが止まった。
生きていてくれたのだ、彼が。
「ロ゛ッグ…!!」
死ぬのがわかっても一粒も溢れなかった涙が、視界をぐちゃぐちゃにした。
「ロック!!逃げてーーー!!!」
「いやだ!…絶対に!!」
互いに動くことのできない、ディランとロック。
死を目の前にして、動かない身体、止まったような時間。
5秒が永遠のように感じる。
「ティナを助けたい」
その一心で動かしたロックの心と身体は、限界を超えていた。
そんなロックを救ったのは、ティナの矢だった。
永遠にも感じた時間は、ほんの一瞬。
ディランの動きが止まった瞬間に、ティナは矢を放っていたのだ。
氷が溶けるように、温もりが戻ってきたロック。
しかし、スキルの影響で身体が動かない。
矢は次々とディランの目を正確に射抜く。
しかし、その行動はティナの生命を晒している。
(動け…、動けっ!!)
そう強く強く念じ、動いた。
ただ、動いたのは、ディランだった。
20秒だと思っていた麻痺の時間は、5秒よりも短かったのだ。
(ティナ!!!!)
5秒に満たない時間に、3本もの矢を放ったティナ。
ディランが動き出してからも、矢を放った。
(やめてくれ!ティナ!!)
その矢は、ディランを呼び寄せるために飛んでいるように見える。
役目を果たした矢は、ディランにあっさりと弾かれる。
そして、ディランは導かれるようにティナの元へ走り出す。
不意に、体の硬直が解けた。
やっと5秒経ったのだ。
ロックはディランに向けて走り出す。
不思議と恐怖はない。
身体の震えも、今はもうない。
ティナが助けてくれたんだ。
ディランを導く放物線は、途切れることなく放たれている。
導かれた先に辿り着く、ディラン。
全力であとを追うロック。
ディランが歯を噛み鳴らしている。
間に合え。
絶対に助けるんだ。
どうやって?
わからない。
でも、僕の大事な人は奪わせない。
ロックはほぼ無意識に手を前に突き出した。
「…<スキルスナッチ>!!!」
ディランの動きが一瞬止まった。
『【噛み砕き】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』
一瞬、ティナの絞り出すような声が聞こえた気がした。
それは、気のせいじゃなかった。
「ロック!!逃げてーーー!!!」
絶体絶命の美少女は、僕に逃げてと言った。
答えは決まってる。
「いやだ!…絶対に!!」
「絶対に助ける!!」
『【噛み砕き】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』
スキルを奪われたディランは困惑してるのか、まだ動かない。
そのわずかな時間で、ティナの前に立つことができた。
例え死んでも、ティナは助ける。
その資格を得られたことが、こんな状況なのに幸せですらある。
ディランが再び口を開く。
ロックは剣を構えて一歩前へ。
ディランのスキルではない、ただの「噛み付き」がロックを襲う。
「グァウウゥァァアアーーー!!」
「うぉおおおおーーーーー!!!」
「ロックーーーーー!!」
ガキン!!
思わず目を閉じていたティナが、再び前を向いた時、ロックはまだ立っていた。
私たちを死の舞台へと連れて来た、カイルの後ろに。
ディランの噛み付きを受け止めたカイルは、叫んだ。
「ロック!
もう一度ディランの動きを止めろ!」
「カイルさん!?
なにを…」
「いいから早くするんだ!
お前たちへの、はなむけだ。」
「なにがなんだかわからない!
なにしたいんだよ!
ちくしょお!
<麻痺針>!!!」
発動するまでの5秒間、カイルはディランの噛み付きと組み合い続けた。
そして、5秒後。
再びディランは動けなくなった。
カイルの拳が、ディランの弱点である「目」を貫く。
身動きが取れず、声も上げられないディラン。
その表情からは死への恐怖が感じられる。
そして、この舞台の幕引きとなる一撃が、カイルから放たれた。
『レベルが上がりました。』
『【噛み砕き】スキルを奪いました。どのスキルと入れ替えますか?』
カイルの目的に辿り着かない!
次話、第一章最終話(予定)




