第120話 アルカトル防衛戦⑥
A級モンスター マンティコア3体に進路を阻まれたA級冒険者3人。
グリゴリーを軸とした構成のパーティであり、剣を使うA級冒険者のオーバンとMPがほぼ尽きている後衛2人ではこの状況を打開することは、不可能。
回復役のティアミーは【光輝の壁】を使い続けている上、必要に応じて回復魔法を使っているため、もうMPが限界に近い。
「グゥォォオオ!!」
人の胴体ほどもありそうな太い足で大地を蹴り、一足飛びに襲いかかってくる1体のマンティコア。
「おらぁ!!」
オーバンが迎撃する。
マンティコアは合成獣の中では珍しく、純粋な戦闘の強さが特徴のモンスター。
通常時でも簡単な相手ではないが、それが同時に3体と周りに無数のB級モンスターがいる。
ただ、向かってきたマンティコアはグリフォンによるバフ効果がなかったようで、【光輝の壁】とバフがかかっているオーバンの方が優勢でまともに[武技]が炸裂した。
その様子を見ても残り2体は怯む様子がなく、突撃してくる。
周りのモンスターも含めて範囲攻撃の[武技]で牽制するオーバン。
「ぐあっ!!」
マンティコアへ繰り出した攻撃は空を切った。
それと同時にマンティコアは陽炎のように消えてしまった。
【影分身】スキルによる分身体だったのだ。
そこに実体であるマンティコアが隙をついて噛み付いてきた。
攻撃力と素早さが1.5倍となる【噛み砕き】のスキルだ。
さらに【吸血】により、オーバンのHPを吸い取る。
そして、ここぞとばかりに他のモンスターも攻撃を仕掛けてくる。
後衛2人は自分の周りのB級モンスターを相手するので精一杯。
マンティコアがオーバンの首を食いちぎろうと、口を大きく開けた。
「誰かーーー!!」
マーチの悲痛な叫びが響き渡る…。
…グラッ……、ドス…ン…
その時、マンティコアが力なく倒れた。
「悪い!
大丈夫だったか!?」
駆けつけたのは…、グリゴリー。
再びエキドナに【魔獣化】している。
「はっ!!」
槍の範囲攻撃で周囲の敵を薙ぎ払う。
【全能力50%UP】を発動しているため、A級モンスターも含めた敵をほぼ一撃で倒していく。
(【全能力50%UP】をもらっててよかったぜ…。
なかったらマンティコア1体でも少し手こずるからな。)
「アッサールが暴れて、俺の乗り移ってたモンスターがやられたみてえだ!
あいつはまだ乗り移られてて、魅了もそのうち解けるだろうから、今のうちになるべく離れるぞ!
距離が遠くなれば【乗り移り】は使えねえ!」
【乗り移り】を使用したものは動けなくなる。
そして、距離が離れると【乗り移り】は使えない。
オーバンが瀕死となってしまったため、庇いながら戦闘をするグリゴリー。
ティアミーはもう回復魔法を使うことができなくなり、【光輝の壁】も消えてしまっている。
なかなかアッサールから距離をとることができない。
追い討ちをかけるようにA級モンスターが4人を囲む。
S級冒険者であるグリゴリーに【全能力50%UP】とバフがかかっている状態なら、A級モンスターも敵ではない。
しかし、それを覆すことができるのが、スキル。
A級モンスターの数体にもバフや【光輝の壁】がかけられており、そうなると1体を仕留めるのにかなり手こずる上、ダメージをもらう。
その中でも【深淵の闇】を持つアモンが厄介な相手であった。
【深淵の闇】はダメージを吸収し、それを闇の魔力球、闇球として放出し攻撃することができる。
使用者の最大HPの2倍まで吸収することができ、倒すにはそれ以上のダメージを与える必要がある。
闇球を放出すると蓄積したダメージはリセットされるため、2倍以上の強烈な一撃を叩き込むか、連撃で畳み込むしかない。
1対1ならまだしも、複数の敵に囲まれた状態、しかも【光輝の壁】やバフがかかっている個体もおり、そもそもアモンは【HP50%UP】のスキルを持っている。
そうなると与えられるダメージが激減するため、倒すのが非常に難しい状況となってしまった。
他のモンスターを優先して戦いたいところだが、アモンが庇うように前に出てくる。
(他のモンスターに【魔獣化】して3人を回復したいところだが、攻撃の手を緩めたら一気にやられちまいそうだ…。)
グリゴリーは他のモンスターからの被弾覚悟で、アモン1体に照準を絞る。
単体攻撃の[武技]を発動し、アモンへ強烈な槍の刺突を繰り出す。
それだけでは倒せないため、連撃を繰り出す。
「グリゴリー!!
上!!」
ガギィィ…ン…
「アッサール…!」
そこに恐れていた相手、乗り移られたアッサールが追いついてきて、飛び上がりながら激しく斧を振り下ろしてきた。
アッサールの一撃を後退りながらもなんとか受け止めたグリゴリーだが、ダメージをたっぷり吸収したアモンの闇球が放たれた。
「や、べっ…!」
今直撃すれば命はない。
しかし、アッサールと競り合っているこの状況では躱すことができない。
その時。
目の前に迫る闇球とグリゴリーの間に、なにかが割り込んだ。




