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第110話 バルキアの新星S級冒険者

魔王が出現し、魔族が人を襲うようになった。


それまでモンスター生息域を中心に領土争いを繰り返していた国々は共通の敵ができたことで手を取り合った。


ギルドという国間をつなぐ仕組みが生まれ、魔族へ対抗するために協力しあったのだ。


その礎を作ったのは間違いなくバルキア帝国皇帝と、ギルドマスターだ。


特に皇帝は歴史上最高の賢帝といわれている。


その皇帝に次ぐ力を持っていると言っても過言ではない、ガウス将軍から直々の要請を受けたとして、ロックたちは特別な待遇を受けた。


本当は皇帝からの指示だが、そこはオープンにされていないらしい。



その待遇とは、S級冒険者と同じ待遇になるというもの。


アルカトルには1名のS級冒険者がいる。


それに加え、バルキア帝国から2名、ダート国かボルドー国から1名の合計4名のS級冒険者が魔族からの攻撃に備えている。


バルキア帝国はフォーレンにも1人派遣している。



現在存在しているS級冒険者は世界中で16人。


そしてその半数、なんと8人がバルキア帝国に所属している。


これが魔王出現前、各国が戦争をしている時代であれば他の国を制圧できていたであろう戦力だ。


それほどの圧倒的戦力を保持しながら、自ら協力体制を作り、戦力提供をする平和主義の現皇帝だからこそ戦争が起きていないと言える。



S級冒険者の待遇は、報奨の割合が高いという他に、作戦会議に参加するというものがある。


ダートではA級冒険者が作戦会議の主なメンバーであったが、アルカトルには常に100人ほどのA級冒険者がいるため、S級冒険者が各チームのリーダーとなり、作戦会議で決まったことを伝えるようになっている。


ロックたちも作戦会議に参加し、リーダーになることとなった。


新たにリーダーとなる冒険者が入国してきた場合、定例の会議とは別で作戦会議が開かれる。


ダートの時と同じように、モンスターを弱体化させることのできるスキルを持っていることを伝えた。


ロックたちの役割は遊撃隊となった。


今までは4人のS級冒険者に対して1チームずつの4チーム編成だったので、編成を大きく変えるのは難しい。


そこで、パーティ単独で動くこととなったのだ。



しかし、それは表向きの理由。


A級になりたての冒険者を特例でリーダーとすることに納得いかない他のメンバーの意向でもあった。


バルキア帝国将軍の要請なので表立って批判することはできないが、皆腹の中では不愉快な感情を抱いていた。


とはいえ、ロックのステータスはここにいるS級冒険者の誰よりも高い。


その雰囲気は感じ取っていることもあり、強い反対も起きなかったのだ。



作戦会議で聞いたアルカトルにいるBランク以上の冒険者の戦力は、

 ・Sランク 4人

 ・Aランク 約100人

 ・Bランク 約1000人


A級魔族3人が攻めてきた場合のモンスターの軍勢以上の戦力だ。


しかし、犠牲者は出る。


ダートで犠牲者を出さずに勝利したのは本当に奇跡的なことだったのだ。


S級冒険者のアメリアが最初からいる時でも犠牲者は出ている。


B級魔族だけの時は人数が多いという理由もあるのだが。



作戦会議後、連携を取りやすくするためS級冒険者たちに接触を試みたロックたち。



まず最初に接触したのは、バルキアからきているリッチェル。


…というか、向こうから話しかけてきた。


「お〜!

 なんて美しいお嬢さんたち!!

 君たちのことは僕が守るから安心して!」


「え?

 あ、あの?」


戸惑うパーティ一同。


「僕はリッチェル。

 バルキア帝国期待の新星、リッチェルだよ。

 来たばかりでこの国のこともあんまりわからないだろう?

 僕がエスコートするよ。」


近い位置にいたミラに近づいてくるリッチェル。


「ちょ、ちょっと…」


後ずさるミラ。


その拍子に足をひっかけてしまい、盛大に尻餅をついた。


「ミラ!

 大丈…ぶっ?!」


ローブを着ているミラがこれまた盛大にパンチラしている。


「わ、わわ!」


急いで隠し、立ち上がるミラ。


「…見た?」


ロックを睨むミラ。


「見てないよ!

 ってなんで僕を睨むのさ!」


(思いっきり見ちゃったけど!)


「すまない。

 大丈夫だった?」


リッチェルがミラを気遣う。


「大丈夫です!

 エスコートも大丈夫ですので!」


ティナをちらりと見るリッチェル。


「私もけっこうです。」


冷たく言い放つティナ。


「照れなくてもいいのに…。

 困ったことがあったらなんでもいいなよ?

 じゃあ、またね。」


リッチェルは全然めげずに去っていった。


「僕たち、完全に空気扱いでしたね。

 あの人のこと知ってますか?ゴルドさん。」


「そうだべな。

 あいづは最近S級になっだやづだな。

 一緒の戦場で戦ったこどはねえから、能力はわがんねえ。」


「そうなんですね…。」


(なんだか不穏な雰囲気を感じたな…。)


言い知れぬ悪寒を感じたロックであったが、唯一友好的(女性にだけ)だったS級冒険者であった。


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