デートの結実
「どうか僕の話を聞いて欲しい、スモル」
デートの最中、クトロが真剣な表情でスモルに言った。
「僕は騎士団の団長なんてお固い仕事をしてるもんで日々、ストレスが凄いんだ。元々の僕はちゃらけた性格をしてるもんで尚更さ。戦いが始まれば人を殺すことは日常茶飯事。先祖が伝説の英雄だったもんだからそのプレッシャーも凄まじい。だからなんだ。僕のこの女癖の悪さは。僕はただ癒やされたいだけなんだよ、ストレスとプレッシャーにやられてしまった心と身体を。だからハニーを沢山作って甘えたりマッサージしてもらったりエッチなことをしてもらうんだ。僕もこれが推奨されることじゃないのは分かってる。でもやめられないんだ」
「そうですか… 幸せなことに私はそういうストレスやプレッシャーを経験したことはありません。ですがその大変さを想像することはできます。なんとなくですがクトロ様が女性に癒やされたいという気持ちも分かるのです。ですが… ハニーを沢山作る必要はあるのでしょうか? ただ一人に癒やしてもらえばいいのではないかと私は思うのです」
スモルは少し考えた後に言った。
「それはスモルの言う通りなんだ。僕自身、今まで誰かを好きになったことはない。だからなのか沢山のハニーに癒やしだけを求めてしまう。沢山の刺激を求めてしまう。そこに愛情はないね。僕自身相手にお金しかあげないし」
「なるほど。好きになった人がいないんですね。私も恋愛という側面ではクトロ様と一緒です。ですが、私は癒やされたい側ではなく癒やしたい側の人間です。困ってる人がいたら見捨てておけない助けたい人間です。それで苦労はしてきましたが」
「それじゃあ、僕達お似合いじゃないか。癒やされたい僕と癒やしたいスモルストーンと」
クトロはそう言いながらスモルの手を握ろうとした。
その時、どこからか小石がクトロの手に飛んできた。
クトロは素早い動きでその小石を打ち払った。
「ダボス、よくやった」
「任せてくれよ。投打ともに俺は得意だから。話題独占二刀流さ」
少し離れた場所にオリビアとダボスが立っていた。
「クトロ。その汚い手でスモルに触るんじゃないよ。このナンパ野郎」
「そうだそうだ。俺が許してもオリビア姉ちゃんが許さないぞ」
クトロは二人の姿を確認すると口を開いた。
「なんだいなんだい。デートの邪魔をするなんて随分と無粋じゃないか」
「へん、ナンパ野郎に無粋だなんて言われる筋合いはないね。スモルと私は長い付き合いでね。男女の関係に免疫のないスモルをそんな簡単にお付き合いさせるわけにはいかないよ。金は返す。手を引きなクトロ」
オリビアが大声で言い返した。
「いや、僕も今回は本気なんだ。手を引くことはない。スモルの親友といえども君の言うことを聞く必要はないね」
「ダメだ。私だって本気だよ。スモルをあんたの性奴隷にさせはしない」
「性奴隷になんてするつもりはないよ。僕はスモルと真剣に付き合うつもりだよ。今までの僕をチェンジさせるんだ」
「へーー。そこまで言うならあんた、すべての愛人を切って天空の家族に住み込みな。愛人を切って浮いた金を寄付して空いた時間で介護を手伝うんだ。それができるなら私は文句は言わない。スモルとあんたのお付き合いを認めてあげるよ」
「了解だ。僕の本気を君に見せてやろうじゃないか」
「えっ? 今、あんたなんて言ったんだい。私もピグマ爺さんみたいに幻聴を聞くようになったか」
こうしてクトロは天空の家族に住み込むことになった。