天剣のクトロ
「ハァーイ、レディ達。僕が天剣のクトロさ。忙しい時間の合間をぬって見学に来てあげたよ。なんだいなんだい、二人とも随分みすぼらしい服装をしているじゃないか。せっかくそれなりの容姿をしてるのにレディ失格だよ」
金髪長髪の整った顔をした優男が言った。
「ガァルル、やっぱりただのナンパ男じゃねえか」
「やめなさい。聞こえたらどうするんだ、オリビア。ここから本題の寄付の話に入るのに」
揉めているオリビアとガーランドを隠すようにスモルが前に出た。
「天剣のクトロ様、ようこそ天空の家族においで下さいました。私はスモルストーンと申します。挨拶も早々のお願いではありますが現在、この天空の家族は困窮に瀕しております。どうか毎月の援助をお願いできないでしょうか」
「援助って寄付のことかい? それならできないよ。僕にはハニーが沢山いてね。毎月毎月、ハニー達に使うお金でカッツカッツだよ。君がハニーの一員になるというなら話は別だけど」
それを聞いたオリビアが怒声を上げた。
「ガォーー、スモルをテメエみたいなナンパ野郎になんか渡せるかってんだ」
「なんだい君は。そんなに怒って。早死にするよ。僕はただベゾスに頼まれて見学しに来ただけさ。寄付するなんて一言も言ってないよ。それにだ、僕の気持ちは今、消沈してるんだ。キルギス村の魔王降臨の厄災によって大切な部下を失ってね。四天王筆頭のシュバイツさ。イカした奴だったよ」
「あの稲妻のシュバイツ様がお亡くなりに… クトロ様、私で良ければハニーというものに入れて頂けませんか。これも天空神様の巡り合わせに違いありません。私がハニーになれば天空の家族が救われるというなら私はハニーになります」
「スモル、バカなこと言ってんじゃねーよ。こんなナンパ野郎の愛人になったって幸せになんかなれねえぞ。私も最近、ストレスが溜まって態度が悪くなってたかもしれない。少し改めるからバカな考えは捨ててくれ」
「ちなみに毎月のハニー手当ては金貨10枚だよ。それで僕の心と身体を癒やしてもらう」
「金貨10枚ですか。それだけあれば食料やポーションをかなり買えます」
「ガアァァー、スモルやめるんだ。たった金貨10枚じゃねえか。そんな奴に心や身体を売る必要はねえ。いい加減に目を覚ませ」
「でもオリビア、このままじゃ天空の家族は本当に経営難で潰れてしまうわ」
スモルは焦っていた。最近のオリビアの心の荒廃ぶりは凄まじいものがある。自分のせいなのだ。天空の家族設立当初から一緒に働いてきたオリビアをこうしてしまったのは。金貨10枚でもいい。自分がこの責任をとらねばと。
「クトロ様、私をどうかハニーにして下さいませ」
「今いるハニー達は軽い感じの子ばかりでね。君みたいなお淑やかな子はいないんだ。僕もそろそろ結婚を考える年だ。恵まれない人々のために自分を捧げるなんて慈善的な子と結ばれるべきかもしれない。僕は心打たれたよ。こちらからもお願いするよ。真剣に付き合おう」
クトロがスモルの手を握りながら言った。