雀のヒナ 2
お散歩中に、見つけた、すずめのヒナを、連れて、急いで、家に帰ったぼくたち。
開け放たれた窓の、あみ戸ごしに、お母さんが、見えます。
( 近くに行って、よく見よう )
ぼくは、一番、良く見える所に、じん取って、[ ふせ ]を、しました。
すずめのヒナは、体を、ふいてもらっています。
こんどは、グァーっと、音がして、うぶ毛が、ヒロヒロ、ゆれて、スッカリ、かわきました。
( すずめのヒナは、おふろに、入ったんだ− )
お母さんは、ゆげが、出ている、食べ物を、持ってきました。
すずめのヒナは、お母さんが、口に、食べ物を、入れようとしても、首をふっていやがります。
( お母さんが、作ったの、おいしいのに− ! ぼくが、食べたい。 )
お母さんは、すずめのヒナの、口をあけて、食べ物を、入れました。
首を、ふりましたが、もう、おなかに、入っていたので、大じょうぶ !
2回目、失敗です ! 首を振って、食べ物が出ちゃいました。
3回目、成功 !
4回目、成功 ! うーん、失敗 ! こんどは、成功 !・・・・・
遊びに行っていた、ひなちゃんと、ひゅうがが、よっちゃんちから、帰って来ました。
「 ただいまー ! あー ! なになに ?! 」
二人は、すずめのヒナを、見つめます。
「 すずめのヒナ 」
お母さんは、にっこりして、言いました。
「 だっこしていい? 」 と、ひなちゃん。
「手は ? あったかい ? 」 お母さんは、ひなちゃんの手を、さわりました。
「 あったかい ? 」 不安そうな、ひなちゃん。
「 この位、あったかければ、いいよ。 まだ、こわがっているから、1回だけね。 」
ひなちゃんは、小さな手を、すずめのヒナの、おなかの下に、そっと入れて、すくうように、じょうずに、だっこしました。
「ぼくも− ! ぼくも、だっこする− ! 」 と、ひゅうが。
お母さんは、ひゅうがの、ぽっちゃりした、手に、さわってから、うなずきました。
そして、ひなちゃんの手から、すずめのヒナをとって、
両手をくっつけて、おちょうだいを、している、ひゅうがの手に、乗せました。
やんちゃの、ひゅうが。
この時ばかりは、たから物を、持つみたいに、じっとして、すずめのヒナを、見つめます。
お母さんは、立ち上がりました。
「 ひゅうが、そのままね。ひなちゃん、ひゅうがを、見ててね。」
そう言って、へやを、出て行きました。
( エー ! 大じょうぶなの ? )
すぐに、お母さんは、かわいいピンクの箱を、持って、帰ってきました。
「 ひなちゃん、ティッシュペーパーを、この中に入れよう。 」
「 ほっかほっかカイロも、入れないとね。一人ぼっちだから、寒くなっちゃう。」
お母さんと、ひなちゃんは、じっとして、固くなっている、ひゅうがを、チラッと見ながら、
手早く、すずめのヒナの、おうちを、ととのえました。
「 ひゅうが、ここに入れてごらん。足を、気をつけて。 」
ひゅうがは、上手に、そうーーっと、箱に、すずめのヒナを入れました。
「 あわ玉を買いに行こうか ! また、おとうふじゃ、かわいそうだから。 」
「 あわ玉を、買いに行こうー ! えさー!えさー! 」
二人は、外に飛び出して、自動車に乗りました。
お母さんも、いそいそと、出て来て、出かけました。
( ピンクの箱の中で、すずめのヒナは、どうしてるのかな? )
自動車の音がして、お母さんたちが、帰ってきました。
( ぼくも、さっきの所にもどって、観察しよう。 )
3人は、バタバタと走って、家に、入って、行きました。
へやに、もどると、ひなちゃんは、なべに、買ってきた、あわ玉を入れます。
そして、お湯も、そのなべに、入れました。
お母さんは、 「 この大きさの、おちょこで、いいわ。 」
と、言いながら、台所から、小さな入れ物を、持って来ました。
「 ひゅうが ! スプーン、持って来てもらえるかな ? 」
「 はーい ! 」 ひゅうがは、走ってスプーンを、持って来ました。
「 ありがとう 」 お母さんは、なべの、あわ玉を、おちょこに、入れてから、
ピンクの箱の中にいる、すずめのヒナを出しました。
あわ玉を、口に、くっつけても、すずめのヒナは、口をあけません。
さっきと同じです。
( 食べないと、だめだよ。食べないと、死んじゃうよ ! )
ぼくは、口を、くいしばっている、すずめのヒナが心配になってきました。
−−−第10話につづく−−−