のぼ君の水かえ
空いちめんに青空が広がって気の早いトンボたちが飛んでいます。
きょうはシルバーウイークで学校はお休みだって。
ひなちゃんとひゅうがは朝からお父さんとじゃれてうれしそう。
お母さんは、おせんたくをいっぱーい ほしました。
「 ひゅうが のぼ君のお水 かえてね。」
「 ウィ! 」 ひゅうがは このごろ こんな返事をするようになりました。
そして、からのペットボトルをふくろにつめこんで自転車に乗りました。
あれ?! 行っちゃうの? ぼくも行く~ 「 ウォーン! 」
「 あっ そうか 」
ひゅうがは、自転車からおりて ぼくのリードをかえて さんぽ用にしました。
「 うぉーん!! 」 キャッホー! おさんぽ おさんぽ
山の上の池につくと ひゅうがは、ペットボトルを池の水にしずめました。
ボコ ボコ ボコボコボコ ポコ
ペットボトルに水が入ると 音がだんだん高くなってピチッといっぱいの音になります。
全部のペットボトルが、ピチッと鳴るまで水を入れると ひゅうがは二つのふくろに分けて
自転車の両方のハンドルにぶらさげました。
帰り道は早い早い!
あっという間に家の近くのまがり道まで来てしまいました。
( つまんないなー )
ぼくは家の前ののぼり道で ひゅうがを追いこして いつものようにオイヤオイヤをしました。
「 クロ! そんなことをするなら もうつれて行かないぞ!! 」
ひゅうがは、ちょっとこわい顔。
( だめかー・・・ )
ぼくは、しかたなく トボトボと 家に帰り始めると
「 よし! おりこうだクロ!! のぼ君の水をかえるんだから 早く帰るぞ!! 」
ひゅうがにほめられて ぼくは頭としっぽをあげて まっすぐ家まで歩きました。
6角形の水そうで元気に大きくなったのぼ君。
丸いタニシもいっぱいガラスにくっついて ガラスをそうじしています。
みどり色のマリモが光るようにきれい。
ひゅうがは、水そうの水をバケツに入れて すっかりなれた のぼ君を両手ですくって
そのバケツにうつしました。
ガラスにくっついているタニシは はがしてポーンと高くなげました。
1つ また一つ バケツの中にポチャン ポチャン ポチャン
バケツをのぞきこんでいたぼくの鼻に水が・・・・
「 ハー ハー ハックション!!! 」
「 あははは 鼻に水が入っちゃったね。 」
ひゅうがは 大わらいしています。
家の中からひなちゃんが、出てきました。
「 はい! ガラスみがき 」 と言いながら ひゅうがに白い物をわたしました。
「 サンキュ 」
「 わたし まりも 洗おうか? 」
「 うん 」
「 おじいちゃんのマリモ 最初5コだったのに すっごくふえたね。 」
「 アハッ もう数えきれないし。 」
「 丸くしておくの けっこうたいへんなのよね。 丸めてあげないと へんな形になっちゃう。 」
「 おねえが 丸めているからきれいじゃん。 こんなのどこでも 見たことないよ。 」
「 うん。 きれいね。 おじいちゃんから北海道のおみやげにいただいたのは、
小学校の3年生位だったから もう4年は過ぎたわね。 」
「 そうかー ぼくは、よくおぼえていないけど・・・
1番大きなマリモがバクハツしたのは おぼえているよ。
それで ちいちゃくこまぎれになったのが また マリモになってきたけど
丸くない! あはは 」
「 バクハツっていうか はじけたっていうのかしらね。 」
「 お母さん マリモが死んじゃうって 毎日 あながあくほど見ていたからじゃない? 」
「 うふふっ そうかもね。 」
「 よーし!! ガラス きれいになったーーー!!! 」
「 ほんとねー マリモもあと3こ丸めたら終わり。 」
ひなちゃんは、1つ1つ ていねいに マリモをまるくしてから 水道の水で洗いました。
ひゅうがは、ピッカピカになった6角形の水そうに
山の上の池でいっぱいにしたペットボトルの水を2本入れました。
そして、きれいになったマリモを入れて
それから、バケツの中で頭を出し始めたタニシも 水そうに入れて 家の中に持って行きました。
げんかんのドアの中がわに ゲタばこがあります。
そのゲタばこの上で のぼ君たちはくらしているのです。
ひゅうがはいつもの所に水そうをおくと のこりのペットボトルの水をどんどん入れて
水そうがいっぱいになると 最後にバケツにのこったのぼ君をすくって入れました。
「 こんなに水を入れると のぼ君が、とび出すんじゃない? 」 と
ひなちゃんは、心配顔です。
「 あー そうかー。 ホースで水をぬこう。 」
ひゅうがは、バケツの水をすてて ゲタ箱の下におくと
家の中から短いホースを持って来て外の水道に付けました。
水が少し、ホースの口から出ると、水道からはずして ホースの はしとはしを指でおさえて
水そうまで持って来ました。
「 せーのー それ! 」
す早く ホースの口を水そうとバケツめがけて入れると
バケツの方に水そうの水が いきおいよく出てきました。
「 ヒエ~! 」 ぼくはビックリして 後ろにさがりました。
「 どんなもんだい! 水うつしのじゅつー クロびっくり! 」
「 ウフフッ クロ ホースは大てきね。 」
「 あはは よし! これで のぼ君も安全! 終了終了! 」
「 のぼ君に ミミズほってあげようかな? 」 と ひなちゃん。
「 うん 大きいのは ハピちゃんが食べるしね。 ・・・・・ちょうどいいのみーっけ! 」
ひゅうがは、ミミズでのぼ君をじゃらして遊んでから ミミズを手からはなしました。
すると、のぼ君は ミミズにとびついてパクリと飲みこんでしまいました。
ぼく なんだか ねむくなったよ。 おひるねしようかな。
お母さんが、「 きょうは よくかわいたー 。 おひさまのにおいがするわー。 」 と
うれしそうにせんたく物を入れ始めると
下の道から ガラガラガラガラ 音が近づいてきます。
ぼくは とびおきました!