お泊り
少しシーンとした後
「 笑顔でいようね。お母さんがこれから話すことは、ひなちゃんにもひゅうがにもさびしいことだけど・・・ 」
お母さんは、話し始めました。
「 お父さんは、今日 検査に行ったの。
そして、肺におできがあることがわかったの。
かんたんに切って取れる所だったらよかったんだけど、
心臓の近くで 切るのは難しいんだって。
それで、血管から細い管を入れて
おできができている所に、お薬をかける手術をするの。
おできがなくなるまで、お父さんは病院におとまりするの。
お父さんがいないとさびしいけど、お父さんもがんばっているから、
笑顔でお父さんのお見舞いに行きましょうね。 」
「 お父さんが、なおるまで ひなも がんばる。 」
ひなちゃんは静かに言いました。
「 ぼくも 」 ひゅうがは今にも泣き出しそうな声。
「 お父さんは、ひなちゃんとひゅうがに会うのを楽しみにしているから、
毎日、ちょっとお見舞いしよう。
おできと 闘っているから、お父さん 疲れているかもしれない。 」
「 わかった! ぼく、走ったりしない。 お父さんが、早くなおるように。 」
「 ひな、お父さんが元気になるように お料理作って持って行く。 」
「 そうね。 きっとお父さん、喜ぶよ 。 」
お父さんは、毎日おとまりで長い間、帰って来ません。
山の木が、色々な模様になって、寒い風が吹き始めても。
かたく乾いた葉っぱが、カサカサ言いながら転がっても。
---35話につづく---