親子大バトル
「これで見やぶられたら、もういい方法はないから、3コ目の小さく切ったチーズに薬をはさんで、ちょっとでも、においが出ないように、しっかりまわりをくっ付けてあげたの。すごくドキドキしたけど、ちょっと溶かしただけで、コクンと飲みこんでね。 うれしかったよー。これで、くろは、元気になれるね。」
ひなちゃんが、「 クロちゃん、おりこうね。 」と 頭をなでました。
まるで、お母さんみたいです。
ぼくは、うれしくて 「 ウウォーン 」 と あまえて頭を、ひなちゃんに、もたれました。
そこへ 「 ゴホンゴホン、ゴホンゴホン 」 と せきをしながら、お父さんが、帰ってきました。
「 おかえりなさーい! 」 ひなちゃんが、あまえたように玄関に走っていきました。
ひゅうがも 「 おかえりなさーい! 」 と、ふざけてひなちゃんのまねをしながら玄関に走りました。
お母さんは 「 おつかれさまー おふろに入ってね。せきが出ているけど、だいじょうぶかしら? ねつがあったら大変ね 」
と言いながら白いぼうみたいなものをお父さんにわたしました。
しばらくしてお父さんが、「 ねつは、ないみたい。ありがとう。 」 と白いぼうをお母さんに返しました。
「 ヒャッホー!! 」 ひゅうがは、さっさとはだかになっておふろにとびこんでいきます。
おふろの方からぼあーんとひびく楽しそうな声。
( ぼくも入りたいな! お・ふ・ろ )
それから毎日、お母さんの手からチーズをもらって食べるようになって少し太ったかな?
ハピちゃんみたいにフェンネル食べないと・・・
ツバメたちが、南の国へ帰るじゅんびで、みんな電線にとまってにぎやかにおしゃべりしています。
今日はめずらしく、みんなお休み。
ひゅうがは、お父さんとサッカーボ-ルで遊んでいます。
すぐお父さんにボールを取られてしまって、なかなか取りかえせません。
( あはっ! まだまだだね、ひゅうが。 )
とつぜん お父さんが、せきこんで すわってしまいました。
「 お父さん! お父さん! だいじょうぶ? お父さん! 」
あわてるひゅうがに 「 だいじょうぶ。大したことはないさ。家に入って おちゃタイムにしよう。 」 せきをおさえて、お父さんが、言いました。
ひゅうがは、それでも心配そうに お父さんのあとについて家に入りました。
ぼくも心配になって、いつもの一番見えるところにねそべりました。
ひなちゃんが、お母さんといっしょに焼いたおいしそうなケーキを、じょうずに切り分けています。
( ぼくも たべたいなー、おすわりして待ってよっと。 )
でもなんか、顔がおこっている、こわい顔している。
おすわりしているのに、気付かないようす。
おかあさんが、「 ひなちゃん、クロが、おすわりして足ぶみしているよ。 」
ひなちゃんは、切り分けた一つを持ってまどの所に来ました。
ぼくは、まどの下に行って また、おすわりをしました。
ひなちゃんは、ぼくのおさらにケーキをおくと 「 おあずけ 」
ぼくが、ひなちゃんの顔をしっかり見て おあずけをすると 「 よし! 」
いつもの 儀式をすませました。
( いっただっきまーーーーーす!!!)
( うーーん、おいしい! )
お母さんが,ハ-ブティーをコップにそそぐ音がします。
お父さんが、「 ケーキおいしく焼けているよ。ひなちゃん、またうでをあげたね。 」
ひなちゃんは、とつぜん なき出しました。
( わっっ!! びっくり! )
ぼくは、いそいで 見える所に また もどりました。
ひなちゃんが、なきじゃっくりしながら。言いました。
「 クロちゃんは、病院へ行ったのに、お父さんは病院に行かないの?
おせきが出て止まらない。 クロちゃんが、お薬を飲み始めて1ヶ月過ぎたのに。
お父さん、まだ、おせきしている。 」
「 なーに だいじょうぶさ。 ちょっとかぜが長引いているだけだよ。
ひなちゃんに心配してもらっちゃうなんて嬉しいよ。 」
「 だめ! お医者に行かないと! お父さんは、お医者なんてこわくないって言ったでしょう? 」
「 こわくないさ。 行かなくちゃならない時はちゃんと行くよ。 」
「 じゃー、あした行って! お願い! あした行って! あしたが行かなくちゃならない時だから。 」
「 えーっ? あしたかい? お仕事はどうするの? ひな先生。 」
「 お仕事の前に行くの。 」
「 うーん、せきもあまりひどくないし、たまにかるく出るだけなんだよ。
ねつもないし、頭も痛くないんだ。なのにお医者に行くなんて、はずかしいよ。」
「 何でもないなら、お医者さんが、何でもないっておっしゃるでしょう?
ひなは、それが聞きたいの。 」
「 まいったよ。ひな、あした お医者に行く手配をする。 」
お父さんは、ひなちゃんをだきしめました。
−−32話につづく−−−