毒が!
「 心ぞうには、きていないから、しっかり、ちりょうすれば、なおるぞ !
良かったなぁ、今日、来ていなかったら、あぶない所だったよ。 」 と、井原先生が言いました。
そして、絵みたいな物を、見ながら、お母さんに説明しました。
「 ちゅうしゃを、するからね。 」 そのあと、おしりが、チクンと、しました。
それから、井原先生と、お母さんの長い話が、終わるまで、がまんして待って、台の上から、おろしてもらいました。
つぎの日の朝、お母さんは、まどをあけて、ぼくを、よびました。
まどの下に行って、おすわりをしました。
お母さんも、すわって、「 くろ、よかったねー、また元気になれるって。」
とやさしく言いました。
ぼくが、しっぽをふると、お母さんは、お皿にあったお肉を、ぼくの口に入れました。
ぼくの大好物 ( うれしい!! )
でも、かんでいるうちに、いやなにおいがしてきました。
ぼくは、いそいで、ぜんぶ口から出して、お母さんの顔を見上げました。
( お母さん! どくが入ってるよ! )
お母さんは、こまった顔をしました。
「 ちゃんと食べなくちゃ くろ 」
と言うと、もう一度、お皿にあったお肉を、ぼくにさし出しました。
( また、どくが入っていたらいやだな・・・・・ )
お母さんの心配そうな顔を見ながら、少し口をあけると、お母さんは、お肉を小さくちぎって、ぼくの口に入れました。
ぼくは、用心深く前歯と舌を使い、お肉を回して、どくが入ってないか、たしかめました。
今度はだいじょうぶ! お肉のおいしい味といいかおり。
「困ったねー、お肉にかくしてもだまされないし。クロちゃん、おくすりを飲まなくちゃ、しんじゃうのに、何かいい方法はないかしら。」
お母さんは、ぼくの顔をジーっとみながら小さな声で言いました。
ぼくは、お母さんが何を言っているのか分からなくて、お母さんの顔を見あげました。
きのう、ぼくが、苦しかったから、心配しているのかな?
ぼく、もうだいじょうぶなのに。
何回もぼくの口に、小さくちぎったお肉を入れながら、お母さんは、何か考えています。
あとのお肉に、どくは入っていませんでした。
−−−30話につづく−−−