思い出話
お母さんが、植えた、フェンネルを,ハピちゃんが、いっぱい食べます。
それでも、フェンネルは、負けずに、大きくなります。
( フェンネル、 強い ! )
ぼくは、お母さんより、大きくのびた、フェンネルを、見上げました。
黄色の花が、上の方に、さいています。
( 花火みたい ! )
そこへ、よっちゃんの、おばちゃんが、遊びに来ました。
「 クロちゃん ! お久しぶり ! 」
「 これは、なーに ? 大きくなってるハーブ 。 」
と、まどごしに、家の中の、お母さんに、聞きます。
お母さんは、お庭のテーブルに、おかしと、ハーブティーを、持って来て、
「 それはね、 や・せ・る・ ハーブよ 」 と、にっこり。
ぼくは、テーブルの下に、ねころび、お母さんの、くつに、鼻を、乗せて、話を、聞きます。
「 ハピちゃんは、毎日、モリモリ、食べるから、体が、しまった感じ、しない ? 」
「 そうそう、ハピちゃんが、やせたと、思ったのよ 。
これ、食べるから、だったのね ?
わたし、いただいても、いいかしら ? 」
「 ええ、どうぞ、どうぞ !
帰りに、いっぱーい、つんでくと、いいわよ !
においが、きらいな方も、いらっしゃるから、今、味見してみたら、いいわよ 。 」
よっちゃんの、おばちゃんは、ほんの少し、つまんで、食べました。
「 あまーい ! だいじょうぶ ! 」 と、うれしそうに、言いました。
「 なんだか、こうして、おちゃするの、お久しぶりね 。 」
「 ほんとね、子どもたちが、小さいころは、毎日、話していたのに 。 」
「 クスッ ! 子どもたちも、色々して、てんやわんやだったわねー 。 」
お母さんは、思い出したように、わらいました。
「 そうそう、よしきと、ひなちゃんの、カケオチ事件 ! 」
「 まだ、何も、分からなくて、『お名前は?』って、聞かれると、
指を、一つ立てて、『2ちゃいー』って、答えていたころだったわねー。 」
「 おたがいに、そちらに、おじゃましてると、思い込んでいて、
気付いたら、どこにもいなくて、わたしたち、なきながら、さがしたのよね 。」
( えーーー ! いなくなったのー ? よっちゃんとひなちゃん ! )
ぼくは、あわてて、おき上がって、テーブルの下から、出ました。
お母さんは、ニコニコしながら、ぼくを見て、話を、つづけます。
「 ぜんぜん、見つからなくて、とうとう、おまわりさんに、話しに、行ったら、
おまわりさん、のんきに、
『 おう、カケオチだね ! 』 なんて、 おっしゃって 。 」
「 わたしたち、ないていたから、元気出すように、考えて、いらしたのね 。 」
( おまわりさんが、 カケオチ ??? カケオチって、何 ? )
ぼくは、おかあさんと、よっちゃんのおばちゃんの、顔を、ずっと、見ました。
「 夕方になって、よっちゃんの、おじいちゃんから、
二人で、手をつないで、うちに、来たって、電話が、はいったのよね 。 」
「 あんなに、遠くまで、国道を、わたって、どの道を、歩いて行ったのかしらね 。 」
「 今でも、なぞね 。 思い出すと、ゾッとするわー 。
自動車に、はねられなくて、ほんとうに、良かった ! 」
「 ほんとにねー ・・・・・ 」
しばらく、二人は、だまっていました。
( おじいちゃんちに、行ったのかー 。 )
「 ウフッ それから、『お母さんたちに、話さないで、出かけちゃダメ !』って、言って
よっちゃんと、ひなちゃんを、山の大きな木に、しばって、
わたしたちは、かくれたのよね 。 」 と、お母さんが、また、話し始めました。
「 二人のなき声が、山中、ひびいたけど、かくれている、私たちも、ないたよね 。 」
「 ええ、だき合って、ないたね 。 」
よっちゃんの、おばちゃんの、目からも、お母さんの、目からも、なみだが、あふれました。
「 ひなちゃんが、けがを、したことも、あったね 。 」
「 そうそう、かんたんに、さくを、とびこえて行った、よっちゃんの後を、追って、
さくを、とびこえようとしたけど、ひっかかっちゃってね。」
「 あの時の、おくさん、早かったよー !
ひゅうが君が、まだ小さくて、何を、話しているか、分からないくらいの、時だったけど、
『オカアサン・・・』って言う、ひゅうが君の声が、外から、聞こえただけで、
顔色、かえて、とび出して、行ったでしょう ?
私なんか、何が、おきたのかと、思っているうちに、頭から、血を、流している、
ひなちゃんを、だっこして来て、すぐ、病院に、連絡して、つれて行ったのよ 。 」
「 そうだったわねー、
ひゅうがの声が、何か、ふつうでは、ない何かを、言おうとしている声だったから、
ひなちゃんに、何か、あったと、思って、むちゅうで、走っていったの 。
動物の感 ! ね 。 」
「 さすが ! 動物の感 ! 」
よっちゃんの、おばちゃんは、ぼくを、見て、片目を、つむりました。
「 わたし、いつの間にか、ひゅうが君を、だっこして、後ろの、ざせきに、乗ってた 。
病院で、ひなちゃん、ちりょう中、なかなかったから、先生に、ほめられたね 。」
「 ますいを、しない方が、早く、治るからって、ますいなしで、ぬったのよね。
わたしの方が、ないちゃって、先生に、
『お母さんが、ないちゃいけないよ、ひなちゃん、がんばったんだから !』って
言われた。 」
「 アハッ そうだったの 」
よっちゃんの、おばちゃんは、そう言いながら、おいしそうに、ハーブティーを、飲みました。
( ひなちゃん、小さい時から、がまん強いんだなー 。 )
−−−27話につづく−−−