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ぼく  作者: 槌谷 紗奈絵
23/52

大好きな、雪

( こわがらなくていいのに。エル。


ひなちゃんも、ひゅうがも、花火を、まわしたりして、楽しそうなんだから。


だから、ね。こわくないんだよ ! エル。 )


「 キャン ! ワンワンワン ! キャン ! ワンワンワン ! 」


エルの声は、遠くに、ひびきわたっています。



毎晩、どこかで、花火の音がすると、エルは、花火の音が、しなくなるまで、ずっと、ほえていました。



夏休みが、終わって、花火の音も、しなくなった、すずしい夕方。


ひなちゃんと、ひゅうがの、おじいちゃんが、来ました。


おじいちゃんは、背が高くて、目が大きくて、こわそうに見えます。


ひなちゃんも、ひゅうがも、おじいちゃんのことが、大好きです。


おじいちゃんの、自動車の音を、聞いて、二人は、部屋から、いきおいよく、かけ下りて来ました。



おじいちゃんは、エルを、じーっと、見ています。


エルは、体中が、しっぽに、なったみたいにして、よろこんでいます。


エルの、お母さんは、おじいちゃんちにいるそうです。


エルは、生まれてから、猟犬りょうけんのくんれんを、おじいちゃんにしてもらって、


それから、このおうちに、来たと、前に、聞きました。



「 こんにちわー ! おじいちゃん ! 」 


ひなちゃんと、ひゅうがが、おぎょうぎ良く、ごあいさつをすると、


「 うむ 」 と、うなずいて、家の中に、入っていきました。


ぼくは、まどの下に行って、聞き耳を立てました。



お母さんが、お茶を、そそぐ音が、します。


「 エルを、猟に、つれて行って、いないようなら、


野木おじさんが、猟に、つれて行きたいと、言っているが、どうかな ? 」


「 ええ、電話を、いただいた時、一磨かずまさんに聞いたら、いそがしくて、


つれて行って、あげられないから、おあずけした方が、エルのためにも、いいだろうって。


りょうがは、一磨がいいならいいって。」


「 うむ、暗くならないうちに、野木おじさんの家に、とどけるから。


ひな ! ひゅうが ! エルは、お魚のおじさんの家で、飼ってもらうから、


エルの好きな、お魚を、たくさん食べて、マルマル太るぞ ! 」


「 うん ! エルも、その方が、いいもんね。 」


と、聞き分けのいい、ひなちゃん。



玄関のドアが、あいて、みんな、外へ、出てきました。


エルは、おじいちゃんに、つれられて、いつもとは、ぜんぜんちがう、さっそうとした歩き方。


ぼくは、さよならを、しようと、エルに近づきました。


その時、おじいちゃんの大きな足に、前足を、ふまれて、しまいました。


( あいたたた ! )


( エル ! さようならだね 。 かわいがってもらうんだよ ! )


ぼくは、コンクリートでできた、花だんの上に、登って、


おじいちゃんの自動車が、見えなくなっても、ずっと、見ていました。


鼻を、上にあげて、においを、かぎました。


おじいちゃんの、自動車の、においが、どんどん、遠くへ行って、消えました。


( さようなら・・・・・エル・・・ )



お母さんは、ぼくが、しょんぼり、しているので、たくさん遊んでくれるように、なりました。



やがて、雪が、降るころ、エルが、いないことにも、なれてきました。


たくさん、雪が、つもると、お母さんは、雪かきを、します。


雪かきを、している間は、くさりを、はずして、ぼくを、自由に、してくれます。


ぼくは、雪の中を、ころげまわります。


とても、気持ちが、いいです。


ぼくが、遠くまで、走って行こうと、すると、


お母さんは、すぐに、「 クロ ! おいで ! 」 と、よびます。


だから、ぼくは、お母さんの顔が、見える所に、います。


ときどき、お母さんは、ぼくを見て、にっこりします。


ぼくは、うれしくなって、お母さんに、飛びつきます。


「 これこれー ! 雪かき、できなくなっちゃうでしょう ! 」


お母さんは、白いいきを、ハアハア、させながら、言います。


( ずうーっと、雪かきが、終わらなければ、いいのになぁ ・・・・・ )



−−−24話につづく−−−




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