きれいな花火
ぼくは、山で、とつぜん、せなかが、痛くなって、家に、やっと、たどり着きました。
生きられないくらい、苦しかったけど、少しずつ、元気になりました。
そして、すっかり、いつもと、同じように、なったころ、
痛がゆくて、なめていた、せなかと、しっぽの間の所の、毛が、なくなりました。
お母さんは、びっくりして、お医者に、ぼくを、つれていきました。
夜になって、お母さんが、夕食を、作っています。
ひなちゃんは、お皿をならべます。
ひゅうがは、はしを、おちゃわんの前に、おきます。
おふろに、入った、お父さんが、頭を、ふきながら、いすに、すわりました。
テリーは、お父さんの、ビールの、ふたで、遊びます。
チュン太は、あついスープに、飛び込むと、いけないので、かごに、入れられて、不満そう。
ぼくは、あみ戸の、外で、毎日、それを、見ています。
ひゅうがの、いすの、すぐ近くに、行って、ねころぶのが、ぼくの、お気に入りです。
ぼくの、耳のかげが、お庭の方に、できます。
夕食が、始まると、ひなちゃんと,ひゅうがが、学校で、あった、できごとを、話します。
そして、次は、お母さんが、話し始めました。
「 朝ねぇ、クロのしっぽの、毛が、このくらい、ぬけちゃってて、お医者に行ったの。 」
お母さんは、両手で、輪を、作って、みんなに、見せました。
そして、続けて、「 前に、ぐあい、悪くなったのは、どくを、食べたんじゃなくて、
へびに、かまれたんだって。井原先生が、歯形を、みつけて、たしかに、マムシだって。
ぬけた所が、真っ赤くなって、こまかいブツブツが、できててね。
なめて、自然に治るから、このままで、いいって。
クロが、死ななかったのは、生きる力が、強かったんだって。
くろ、がんばったもんね。 」
そう言っている、お母さんの目は、涙でいっぱい。
「 お母さんも、良く、看病したよ。
クロは、ずっと、そばに、いてもらって、心強かったと、思うよ。
それに、お母さん特せいの、どく消しも、飲まされたしね。 」 と、お父さん。
みんな、どっと笑いました。
お母さんは、泣いているのか、笑っているのか、いっぱい、たまった涙が、こぼれ落ちました。
ぼくは、おすわりして、耳を立てました。
お母さんが、「 そうそう、クロね、井原先生が、こんな、おりこうな子は、初めてだって。
頭のいい子だって、ほめられたの。 」 と、うれしそうに。、言いました。
「 アハッ ! クロが、耳、動かしてるー ! 」 と、ひなちゃん。
ひゅうがが、ふりかえって、ぼくに、話しかけました。
「 ほめられたって、わかるもんねぇ。 」
ぼくは、すわったまま、しっぽを、ふりました。
まどの下の、コンクリートを、ぼくのしっぽが、ほうきで、はくような、音が、しました。
ひなちゃんの、夏休みが、きました。
プロパンのお兄さんが、来ると、ひなちゃんは、ぼくが、マムシに、かまれたことを、話しました。
「 ほー、そんなことが、あったのかー。
クロ、大冒険したなー ?
男だ ! クロ ! ハゲくらいで、めげちゃ、ダメだぞ ! 」
と、ぼくの頭を、ぐいぐい、なでました。
( ? ? ? )
昼のあつさが、だんだん消えて、すずしい風が、気持ちいい夜。
ひなちゃんと、ひゅうがは、うれしそうに、ふくろを、持って、外に、出てきました。
お母さんが、バケツを、持って、すぐ後から、出てきました。
「 ろうそくに、火を、つけるから、出してちょうだい。 」 お母さんが、言います。
ひなちゃんが、 「 はーい ! 」
と、白いぼうと、小さな箱を、出して、お母さんに、わたします。
お母さんが、小さな箱の中から、細いぼうを、出して、こつっこつっ!と、すると
シュッボッ!と、音がして、明るくなりました。
それを、白いぼうに、つけると、白いぼうも、明るくなりました。
白いぼうを、コンクリートに、立てると、
今度は、細いけど、さっきよりは、ずっと長いぼうを、白いぼうの、明るくなっている所に、
つけました。
でも、なかなか、明るくなりません。
ぼくは、ひなちゃんと、ひゅうがの、ワクワクした顔を、見ました。
すると、とつぜん! シュー! パチパチパチッ!
と、音がして、あたりが、すごく、明るくなりました。
明るいのが、飛びちって、あちらこちらが、明るくなっています。
エルは、それを、見たとたんに、ひめいを上げて、 「 ワンキャン、ワンキャンキャン 」
と、かん高い声で、ほえ始めました。
ずっと、ほえ続けるので、「 エル ! だいじょうぶだから ! エル ! 」
と、お母さんが、エルを、なでに、行きました
それでも、エルは、お母さんの、言うことを、ぜんぜん、聞いていません。
目を、大きくして、 「 ワンキャンキャン ・・・・・! 」
こわがらなくていいのに。エル。
ひなちゃんも、ひゅうがも、手に、持っているし、あんなに、うれしそうなんだから。
だから、ね。こわくないんだよ ! エル。
お母さんが、 「 きれいな、花火ねぇ ! 」 と、言いました。
( これは、 「きれいなハナビ」 と、言うらしい。
−−−23話につづく−−−