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ぼく  作者: 槌谷 紗奈絵
21/52

お医者さん

山の、さんさくを、楽しんで、いる時、


せなかから、しっぽに、チックーンと、痛みが、走りました。


ぼくは、痛い所を、なめました。


( 何の味だろう ? )


少し歩くと、体が、重くなってきました。


オエッと、なります。



ぼくは、急いで、家に、むかって走りました。


だんだん、足も、からだも、しびれてきました。


もう少しなのに、つばが、ダラダラ、出て、地面が、グルングルン、回ります。



家が、見えているのに、足が、前に進みません。


( 負けるもんか ! )


ぼくは、力を、ふりしぼって、足を、動かしました。


とうとう、目も、見えなくなりました。


( 苦しい ! )



気が付くと、お母さんが、ぼくの体を、さすっています。


「 これを、飲みなさい。牛乳と玉子の白身よ ! 解毒げどくに、なるからね。 」


( お母さんが、お皿に、持ってきてくれたから、がんばって、飲まないと )


ぼくは、オエッと、なりながら、少し、なめました。


「 よしよし、苦しいね、よしよし、よしよし・・・・・・ 」


お母さんは、そう言いながら、さすって、くれています。


安心して、ぼくは、お母さんに、よりかかりました。


オエッとなって、なめた物が、口から出ます。



苦しくて、長い、一日が、終わり、夕方になりました。


お母さんは、ぼくを、げんかんの中に、入れて、ずっと、ぼくの、そばに、ついています。


ぼくが、もどしてしまうので、何度か、口の所に、牛乳と玉子の白身を持って来ました。


でも、ぼくは、もう、それを、飲むことが、できません。


息を、するのが、やっとです。


( お母さんが、さすってくれるから、ぼくは、生きよう ! あきらめないぞ ! )



ひなちゃんと、ひゅうがも、心配して、見に来ました。


「 クロー、だいじょうぶ ? 」 ひゅうがが、ぼくに、声をかけます。


「 どくを、食べちゃったの ? 」 ひなちゃんは、お母さんに、聞きます。


「 それが、わからないの。かしこいクロが、どくを、食べるなんて、信じられない。 」


お母さんの、涙が、ポトポト、ぼくの、首に、落ちて、前足に、つたってきます。


( お母さん、 泣かないで ! ぼく、がんばるから ! )


お母さんは、やさしく、やさしく、ぼくを、さすり続けました。



朝になりました。


ぼくは、もどしても、負けずに、牛乳と白身を、少しずつ、なめるようにしました。


お母さんは、ぼくの好きな、玉子焼きや、チーズや、お肉を、持って来ました。


とても無理。においだけで、オエッと、きます。


お母さんは、それを、向こうへ、おして、 「 食べられるようになってね。 」 と、言いました。



ひなちゃんと、ひゅうがが、帰ってきて、良くならない、ぼくに、がっかりしたようです。


「 ねぇ、クロ、しんじゃうの ? お母さん ! クロ、しんじゃうの ? 」


「 まだ、分からないけど、クロ、すごく、がんばってるから、静かにしてあげようね。 」


お母さんは、二人を、つれて、おへやに、入って行きました。



しばらくすると、お母さんは、ぼくの所に、帰って来ました。


ぼくは、まだ体を、おこすことも、できません。



夜に、なりました。


お母さんと、いっしょに、眠ります。


今日の夜は、オエッと、なりません。


何だか、少し、らくに、なりました。


夜中に、ちょっと、おきてみたくなって、体を、まず、のばしました。


お母さんも、おきて、ぼくが、どうしたいのか、見ています。


( お き る ぞ ! )


でも、足に、力が、入らなくて、おき上がれませんでした。


「 よしよし、元気になってきたね。 よしよし、よしよし・・・・・ 」


お母さんは、お皿を、口に、持って来ました。


ぼくは、ぜんぶ、飲みました。


そして、少し、眠りました。



朝になると、ぼくは、おなかが、すきました。


お母さんが、玉子の黄身を、お皿に、入れてきました。


半分くらい、食べました。


「 よかったねぇ、食べられるようになれば、生きられる。よかったねぇ、クロ。 」


また、少し、眠ってから、残りの半分を、食べました。


チーズも、少し食べて、もう一度、おき上がってみると、おすわりが、できました。


お母さんが、「 まだ、ねていなさい。 ふせ ! 」 と、言いました。


ぼくは、ふせを、したまま、眠ってしまいました。



夕方、ぼくは、ゆっくり、歩いて、庭に出ました。


( あー ! しんじゃうと思った ! 


ひゅうがが、心配した時、ぼくは、ほんとに、もう、生きられないかもって、思った。


お母さんが、ずっと、夜も、さすってくれたから、生きるぞ!って、強く、思えたんだ。 )



( 心配、かけて、ごめんなさい。 )



何日か、すぎると、ぼくは、すっかり、元気に、なりました。


ただ、せなかと、しっぽの間の所が、痛い。


ぼくは、気になるので、いつも、なめていました。



お母さんが、せんたく物を、持って、出て来て、ひめいを、あげました。 


「 キャー ! しっぽ、どうしたの ?! あなが、あいちゃったじゃないの ! 」


そう言って、おうちに、走って行ったかと思うと、自動車のかぎを、持って来て、


ぼくを、つれて、自動車に、乗りました。



そして、ブオーーーン ! と、坂を、くだって、町の中に、入りました。


どこかの、おうちに、自動車を、止めると、お母さんは、ぼくをおいて、そのおうちに、かけていきます。


窓から見ると、ぼくを指さして、だれかと、話しています。


今度は、ぼくの方に、走って来ます。


( お母さんって、いそがしい人だなぁ 。 )


「 クロ ! おりて、お医者さんに、みて頂こうね 。 」


ぼくは、お母さんに、つれられて、自動車を、おりました。


( ン! いやな、におい ! ぼくの、きらいな、においだ ! ) 


ぼくは、すわりこんで、おイヤおイヤを、しました。


お母さんは、こわい顔で、 


「 いけません ! みていただかないと、治らないでしょ ! 」 と、言いました。


ぼくは、しかたなく、お母さんの、後に、付いて行きました。



中に入ると、首に、あさがおの花みたいな物を、付けた、ネコちゃんが、おばあちゃんに、だっこされていました。


おくに行くと、すぐ、ぼくは、高い台の上に、乗せられました。


お母さんは、ぼくのせなかに、そっと、手を、おいています。



「 直径13cm。円形に、脱毛だつもうしています。 


ひふは、かぶれたように、びらんしていますね。 


なにか、心あたりは、ありますか? 」 大きい体の、お医者さん。



「 はい、じつは、もう一匹、ポインターを、飼っていますが、


うまく、それのくさりに、自分のとめ金を、ひっかけて、くさりをはずし、


毎晩、遊びに出かけて、朝早く、帰って来ていたんです。



それが、2週間前の朝、よろよろになって、帰ってきて、


黄色い胃液いえきのような水を、何度も、もどして、


犬は、あせを、かかないはずなのに、からだが、じっとりぬれて、つめたくて、


もう、だめかと、思いましたが、何とか、元気になったんです。


これと、関係あるでしょうか ? 」



それを、聞いた、お医者さんは、


「 ちょっと待てよ。 」 と、言いながら、目が、大きく見える物を、頭につけました。


ぼくの、痛い所を、ずーっと、見ます。


「 あった ! あった ! まむしですよ ! 二つ、歯形が、あります。」


「えー ! マムシに、かまれたんですか ? 」 


お母さんは、びっくりしてしまいました。



「 まちがいないですよ ! 


まむしに、かまれて、アナフィラキシーショックを、起こしたんです。


それでも、犬の場合は、まれに、生きることも、あるんです。


生命力が強かったんだね、この子は。 


こんなふうに、脱毛するのは、始めて見ました。 


まぁ、薬を、付けても、なめてしまうし、このまま、ようすを、見ましょう。 」


お医者さんは、そう言いながら、高い台から、ぼくを、だっこして、おろしました。



「 この子は、りこうな子だ。 


この台に、乗せられて、こんなに、静かに、見させてくれる子は、初めてだ。 」


と、頭を、なでました。


( 早く、帰ろうよー )


ぼくは、お母さんの、顔を、見ました。



−−−22話につづく−−−

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