終わらない散歩
ひなちゃんが、入学というので、赤い物を、せなかに、せおっています。
お母さんも、きものを着て、出かけたり、写真をとったり、いそがしそう。
ぼくは、エルと、さいきん、おぼえた、獲物ごっこをして、遊びます。
かみ合って、ないた方が、負け。
首を、かまれても、負けです。
ぼくは、エルの首を、ねらいますが、なかなか、すきを、みせません。
ぼくも、負けられないから、首を、守りながら、こうげきします。
エルの弱点は、たれた大きな耳です。
耳をかまれると、 「 キャン ! 」
エルの負け。
ぼくは、鼻の頭を、かまれると、ツーンと痛くて、
「 ギャン ! 」 と、声が、出てしまいます。
そうしたら、ぼくの負けに、なります。
ある晩、いつもと同じように、遊んでいると、首が、かるくなりました。
ぼくに、付いていた、くさりが、ないのです。
よく見ると、エルのくさりに、ぼくのくさりが、付いています。
庭から出て、走ってみました。
家に帰れるように、おしっこで、しるしを、付けました。
終わらない散歩です。
自由って、すばらしいと、思います。
山にのぼって、つめたい水を、飲んで、 ( う〜ん ! あまい水 ! )
気取ったネコを、追いかけて、 ( ネコって、足、早い ! )
新しいお友だちも、できました !
ぼくより、ちょっと小さい、しば犬で、名前は、ふじ子といいます。
すぐ近くの、坂を、くだった家に、すんでいます。
ふじ子は、ぼくが、遊びに行くと、とても、喜びます。
だから、くさりを、はずしたら、一番に、ふじ子の所に、ごあいさつに、行きます。
ぼくが、家にいる時、ふじ子が、歌を、歌っているのが、聞こえます。
人間の、赤ちゃんみたいな、声です。
( 楽しい時、歌うのかなぁ? 今日の夜、忘れないで聞こう。 )
ぼくは、夜になると、エルに、くさりを、かけては、出かけて、
山を、かけめぐったり、川で、水あびを、したり、
新しい、お友だちに、あったりして、自由を、楽しみました。
いつものように、山に行くと、湿気で、ムシムシしています。
大きくなった、わらびや、ぜんまいの間を、ぬける時の、いいにおい。
松の葉っぱを、ふむと、しぶいにおい。
今日は、いつもより、においが、はっきりしています。
色んな、においを、楽しんで、いる時、
せなかと、しっぽの、間に、チックーンと、痛みが、走りました。
( 何だろう ? )
ぼくは、痛い所を、なめました。
何か、味が、します。初めての味。
少し、血の味も、します。
( とげが、ささったのかなー ? 何の味だろう ? )
考えているうちに、体が、重くなってきました。
はきたい感じがして、何度も、オエッと、なります。
( 家に、早く、帰らないと、まずいかも ! )
ぼくは、急いで、家に、むかって走りました。
でも、だんだん、足が、しびれてきました。
からだも、しびれてきました。
( 家に帰れるかな ? )
もう少しなのに・・・・・
−−−21話につづく−−−