ハゲアタマ???
「 ウォーーーン ! 」・・・・・ぼくは、夜中も、時々、テリーを、呼びました。
( ぼくの声、 テリーに届け ! 明るくなったら、こちらに、飛んで来るんだよ ! )
朝に、なると、お母さんたちは、テリーの絵を、書いた紙を、ス−パーに、はらせて、いただくと、言いながら、出かけました。
今にも、雨が、降りそう。
( テリー ! 雨が、降ったら、飛べないよ ! こちらに、向かって飛んでよ ! )
「 ワンワン ! ヴォーーーン ! 」 ( テリー ! )
ぼくは、おなかに、息をすって、できるだけ、大きな声で、呼びました。
少しあたたかくなった時、テリーが、飛ばされたのと、反対の方から、わずかに、テリーの、においが、します。
( テリーだ ! テリーが、たしかに、こちらに、向かっている ! )
「 ワンワン ! ワンワンワンワン ! ヴォーーーン ! 」
ご近所の奥さんが、 「 くろちゃん、どうしたの ? いつも静かなのに。 」 と、
くるったように、ほえている、ぼくを、心配して、見に来ました。
「 これなら、どろぼうさんも、入れないわね。 」
かまわず、空に向かって、ほえ続ける、ぼくを、見て、そう言いながら、帰っていきました。
( テリー ! どうか、 からすや、とんびや、鷹[たか]に、見つからないで ! )
でも、テリーの、においは、なかなか、近くなりません。
( どこかの家に、かくれているのかな ?
早く、飛ばないと、雨が、ふってくるよ !
おなか、すいたでしょう ?
夜に、なっちゃったら、どうするの ?
少しずつ、こちらに来て ! )
ぼくは、いっこうに、近づいてこない、テリーに、疲れて、眠ってしまいました。
お母さんたちは、いつもより、おそく、帰って来ました。
「 クロも、きのうの夜、心配で、眠れなかったのねー。
時々、ウオーンって、ないてたから。 」 お母さんが、言いました。
「 テリーを、呼んでたんだね 」 と、ひなちゃん。
「 クロ、 おりこう ! 」 ひゅうがが、小さな手で、ぼくの頭を、なでました。
あー、また、夜が、来てしまいました。
( 雨が、ふりだして、寒くなるのに、何も食べてない、テリー・・・・・)
きのうと、同じように、時々、テリーを、呼びました。
( 生きているのが、わかって、良かった。 明日は、飛んで帰ってきてね 。 )
ぼくは、うとうと、しながら、テリーの、においを、たしかめます。
少し、明るくなってきたころ、雨が、やみました。
テリーの、においが、少しずつ、強くなっています。
( 飛んでいる ! )
「 ヒュォーーーン ? ? ? 」
( できるだけ、長くないて、テリーが、まちがえないように、しよう ! )
でも、ぼくの声は、かれてしまって、もう、出なくなっていました。
「 ヒュォーーーン 」
それでも、テリーは、こちらに、飛んでいます。
( がんばれ ! テリー ! )
「 キューンキューン、キューンキューン、キューンキューン 」
( テリーは、すぐ、そこまで、来ているよ ! お母さん ! )
お母さんは、すっかり、明るくなっても、家から出てきません。
ひなちゃんと、ひゅうがは、よっちゃんのおばちゃんが、幼稚園に、送って行きました。
ぼくと、エルの、ご飯の時、お母さんは、外に出ないで、窓を、開けました。
顔が、まっ白 !
お母さんは、ぐあいが、悪くなってしまったようです。
( だいじょうぶ ? お母さん ! )
ぼくは、窓に、手をかけて、背伸びしながら、お母さんの、ほっぺを、なめました。
お母さんは、だまって、頭を、3回なでてから、奥に入って行きました。
ぼくが、ゆっくり、ご飯を食べ終わった時、家の中で、電話が、なりました。
お母さんは、細い小さな声で、電話に出ました。
そして、きゅうに、元気な声で、 「 はい ! すぐ、まいります ! 」
お母さんは、走って、道をくだって、行きました。
ぼくは、鼻を高くして、テリーのにおいを、かぎました。
においが、しません。
( さっきまで、すぐ近くまで、来ていたのに、どこに、行っちゃったんだろう ? )
しばらくして、また、テリーのにおい、前と同じ、お母さんと、まじった、あったかい、におい。
ぼくは、おすわりをして、お母さんと、テリーを、待ちました。
坂道を、元気よく、のぼって来る、お母さんの肩に、クリーム色の、かんむりを、立てた、テリーが、見えます。
( おかえりー ! テリー ! がんばったねー ! がんばったねー ! )
なんだか、テリーは、たくましくなったみたい。
お母さんは、テリーを、ぼくに見せると、エルの方を、チラッと見て、家に入りました。
ぼくが、おひるねを、始めるころ、お母さんは、電話を、かけました。
家の中から、お母さんの、うれしそうな声が、聞こえます。
「 テリーが、いたの !
朝、早く、クロと似たワンちゃん、飼っている、みそのさんちに、入ったみたいなの。
おじいちゃんが、窓をあけた時、頭にとまろうとして、すべり落ちたところを、
おばあちゃんが、つかまえてくださったの。
おばあちゃんが、大笑い[おおわらい]で、話してくださったの。
おじいちゃんの、ハゲアタマに、とまろうとしたけど、つるつるで、すべってねーって。
わたし、笑っていいのかしら?と思ったけど、つられて笑っちゃったの。 」
( おじいちゃん、ハゲアタマ?って何? みそのさんち、ぼくのライバルんちだ !
このたびは、ありがとう、感謝しておくよ。 )
−−−20話につづく−−−