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ぼく  作者: 槌谷 紗奈絵
19/52

ハゲアタマ???

「 ウォーーーン ! 」・・・・・ぼくは、夜中も、時々、テリーを、呼びました。


( ぼくの声、 テリーに届け ! 明るくなったら、こちらに、飛んで来るんだよ ! )


朝に、なると、お母さんたちは、テリーの絵を、書いた紙を、ス−パーに、はらせて、いただくと、言いながら、出かけました。



今にも、雨が、降りそう。


( テリー ! 雨が、降ったら、飛べないよ ! こちらに、向かって飛んでよ ! )


「 ワンワン ! ヴォーーーン ! 」 ( テリー ! )


ぼくは、おなかに、息をすって、できるだけ、大きな声で、呼びました。



少しあたたかくなった時、テリーが、飛ばされたのと、反対の方から、わずかに、テリーの、においが、します。


( テリーだ ! テリーが、たしかに、こちらに、向かっている ! )


「 ワンワン ! ワンワンワンワン ! ヴォーーーン ! 」



ご近所の奥さんが、 「 くろちゃん、どうしたの ? いつも静かなのに。 」 と、


くるったように、ほえている、ぼくを、心配して、見に来ました。


「 これなら、どろぼうさんも、入れないわね。 」


かまわず、空に向かって、ほえ続ける、ぼくを、見て、そう言いながら、帰っていきました。



( テリー ! どうか、 からすや、とんびや、鷹[たか]に、見つからないで ! )


でも、テリーの、においは、なかなか、近くなりません。


( どこかの家に、かくれているのかな ? 


早く、飛ばないと、雨が、ふってくるよ ! 

 

おなか、すいたでしょう ? 


夜に、なっちゃったら、どうするの ?


少しずつ、こちらに来て ! )



ぼくは、いっこうに、近づいてこない、テリーに、疲れて、眠ってしまいました。


お母さんたちは、いつもより、おそく、帰って来ました。


「 クロも、きのうの夜、心配で、眠れなかったのねー。


時々、ウオーンって、ないてたから。 」  お母さんが、言いました。


「 テリーを、呼んでたんだね 」 と、ひなちゃん。


「 クロ、 おりこう ! 」 ひゅうがが、小さな手で、ぼくの頭を、なでました。



あー、また、夜が、来てしまいました。


( 雨が、ふりだして、寒くなるのに、何も食べてない、テリー・・・・・)


きのうと、同じように、時々、テリーを、呼びました。


( 生きているのが、わかって、良かった。 明日は、飛んで帰ってきてね 。 )


ぼくは、うとうと、しながら、テリーの、においを、たしかめます。



少し、明るくなってきたころ、雨が、やみました。


テリーの、においが、少しずつ、強くなっています。


( 飛んでいる ! )


「 ヒュォーーーン ? ? ? 」


( できるだけ、長くないて、テリーが、まちがえないように、しよう ! )


でも、ぼくの声は、かれてしまって、もう、出なくなっていました。



「 ヒュォーーーン 」 


それでも、テリーは、こちらに、飛んでいます。


( がんばれ ! テリー ! )


「 キューンキューン、キューンキューン、キューンキューン 」


( テリーは、すぐ、そこまで、来ているよ ! お母さん ! )



お母さんは、すっかり、明るくなっても、家から出てきません。


ひなちゃんと、ひゅうがは、よっちゃんのおばちゃんが、幼稚園に、送って行きました。


ぼくと、エルの、ご飯の時、お母さんは、外に出ないで、窓を、開けました。


顔が、まっ白 !


お母さんは、ぐあいが、悪くなってしまったようです。


( だいじょうぶ ? お母さん ! )  


ぼくは、窓に、手をかけて、背伸びしながら、お母さんの、ほっぺを、なめました。


お母さんは、だまって、頭を、3回なでてから、奥に入って行きました。



ぼくが、ゆっくり、ご飯を食べ終わった時、家の中で、電話が、なりました。


お母さんは、細い小さな声で、電話に出ました。


そして、きゅうに、元気な声で、 「 はい ! すぐ、まいります ! 」


お母さんは、走って、道をくだって、行きました。



ぼくは、鼻を高くして、テリーのにおいを、かぎました。


においが、しません。


( さっきまで、すぐ近くまで、来ていたのに、どこに、行っちゃったんだろう ? )


しばらくして、また、テリーのにおい、前と同じ、お母さんと、まじった、あったかい、におい。



ぼくは、おすわりをして、お母さんと、テリーを、待ちました。


坂道を、元気よく、のぼって来る、お母さんの肩に、クリーム色の、かんむりを、立てた、テリーが、見えます。


( おかえりー ! テリー ! がんばったねー ! がんばったねー ! )


なんだか、テリーは、たくましくなったみたい。



お母さんは、テリーを、ぼくに見せると、エルの方を、チラッと見て、家に入りました。


ぼくが、おひるねを、始めるころ、お母さんは、電話を、かけました。


家の中から、お母さんの、うれしそうな声が、聞こえます。


「 テリーが、いたの ! 


朝、早く、クロと似たワンちゃん、飼っている、みそのさんちに、入ったみたいなの。


おじいちゃんが、窓をあけた時、頭にとまろうとして、すべり落ちたところを、


おばあちゃんが、つかまえてくださったの。


おばあちゃんが、大笑い[おおわらい]で、話してくださったの。


おじいちゃんの、ハゲアタマに、とまろうとしたけど、つるつるで、すべってねーって。


わたし、笑っていいのかしら?と思ったけど、つられて笑っちゃったの。 」



( おじいちゃん、ハゲアタマ?って何? みそのさんち、ぼくのライバルんちだ ! 


このたびは、ありがとう、感謝しておくよ。 )



−−−20話につづく−−−

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